ラジオを聴くこと、好きなものを書くこと

僕はラジオを聴くことが好きだ。

自分の好きなものを肯定することは、
それまでの自分の足跡を肯定することになると思う。

中学時代からラジオを聴くことが好きだった。就寝前暗くした部屋の中で暗闇にぼんやりと見えるラジオを手に取り、懐中電灯の光を当てながら周波数の数字を746に合わせる時間が楽しみで仕方がなかった。ラジオの中の会話に相槌を打ったり、ひとりでツッコミを入れていることが当時の僕の遊びだった。学校では友達とも仲良くしていたし充実していた気がするけど、電波の向こうにある世界へのワクワク感や顔も知らない同世代の共感できる悩みに興味津々だったのだ。ノイズ混じりのラジオのスピーカーからは、色々な世界がそこに存在する事をはっきりと僕に教えてくれた。世間的にいえば闇の時代だろうか。今思えばどこかに本当の自分の居場所があるんじゃないかと電波を通じて探そうとしていたんじゃないかと思う。

社会人になり特殊な環境でなんかんやあった僕は、自分の意見を失いかけていた。
そんな時、自分を助けてくれるものは何なのか探していた。とあるエッセイに出会い、書かれていた方法を実践することにした。
それは好きなものをノートに書くことだ。
半信半疑だったが不思議なもので、ノートに好きなものを書いているとぼやけていた自分の輪郭がはっきり見えてくる。やるべきことがはっきりと見えてくるのだ。今の世界が存在する唯一の世界ではなく、ノートの向こうに自分の居場所があるように感じさせてくれるのだ。

自分を形作っているのは好きなものなんだ!
好きなことを仕事にしたはずの自分がこんなこともわからなくなるなんて思いもよらなかった。普通の人はこんなことをしなくても冷静に自分をジャッジできるのかもしれないが、不器用な僕にはどうやらこの方法がピッタリみたいだ。

これからも、僕は迷った時には好きなものをノートにひたすら書き殴るだろう。それが、あの時の懐中電灯のように僕の輪郭をはっきりと示してくれるだろうから。

今日も僕はスマホのスイッチをオンにしてラジオの向こうの声に耳を欹てている。

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