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相続放棄_その3(手続き)

今回は相続放棄に関する手続きの概要を記載します。相続放棄人と被相続人との関係によってもかわりますが、参考になれば幸いです。


| 相続放棄の手続きの流れ・手順

相続放棄の手続きのは概ね次のとおりです。
なお、①及び②は事前準備的なものです。
あらかじめ被相続人の債務状況などがわかっている場合には、相続が開始される前からリスト化などの事前準備をしておくこともできます。

① 相続相関図などの作成
相続人が誰であるか確認する相続関係図などを作成し、相続人となるべき人(法定相続人)を明らかにします。
関係者を明らかにするためであり、自分が見るためのメモ書き程度でOKです。

② 相続財産の調査
被相続人の保有する預金等財産を明らかにするために、被相続人の所持する預金通帳や口座カードなどをもとに、金融機関等に問い合わせるなどして、被相続人が残した財産を可能な限り調査しリスト化しましょう。

あわせて、借財等債務状況についても可能な限り明らかにします。
その上で、相続放棄をすべきか否か検討します。

なお、残された財産状況にかかわらず、相続開始前から相続放棄をする意思が確定しているのであれば、相続財産等を調べる必要ないです。

③ 家庭裁判所に提出する必要書類を集める
家庭裁判所に提出する必要書類(戸籍謄本等)を収集します。
必要な書類はあらかじめ家庭裁判所にて確認しておきましょう。
なぜなら、被相続人と申述人(相続放棄をしたい人)との続柄によって、必要となる添付書類が異なるのです。

④ 相続放棄申述書の作成
相続放棄申述書は、手書きでもPC等を使用して作成してもOKです。
申述書の詳しい書き方は、WEBで確認すると良いでしょう。

⑤ 相続放棄申述書等の提出
相続放棄申述書と、戸籍謄本等の添付資料を家庭裁判所に提出します。
管轄の家庭裁判所に直接提出することはもちろん、郵送で送付することもOKです。

なお、相続放棄をする場合には、家庭裁判所に申述することが民法に定められているため、相続人間で話合い、念書や合意書などを作成したとしても法律的要件を備えないので相続放棄とは認めらないので注意しましょう。

なお、民法の定める期限である3ヶ月以内に相続放棄申述書と添付書類を裁判所に提出する必要があります。

(相続の放棄の方式)
第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

⑥ 相続放棄照会書(回答書)に回答
家庭裁判所に必要書類を提出すると、10日前後で、相続放棄照会書(回答書)が送られてきます。この回答書に必要事項を記入し、家庭裁判所に返送することになります。

⑦ 相続放棄申述受理通知書
相続放棄の手続きが完了すると、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が送られてきます。
これで相続放棄の手続きは終了です。

⑧ 相続放棄申述受理証明書
被相続人の債権者から債務の返済を求められている場合や不動産登記の名義変更を行う場合などには、「相続放棄申述受理証明書」を必要とする場合があります。その際には家庭裁判所に申請します。

|相続放棄は自分でもできる

相続放棄の手続きは自分ですることも可能です。
収入証紙や戸籍謄本(場合によっては原戸籍)を取得する費用などが必要ですが、一般的には1万円以下でOKでしょう。
あとは相続放棄申述書などを作成するだけです。
したがって個人でも手続きは可能です。

|相続放棄申請に必要な書類

家庭裁判所に提出する書類は以下のとおりです。詳しくは家庭裁判所のホームページなどで確認して下さい。

○ 相続放棄の申述書
申述書は相続放棄する意思を示す書類です。裁判所がそのひな形を公開しています。

例:東京地方裁判所のひな形

○ 被相続人の住民票除票または戸籍附票
死亡時の居住地の役所から住民票除票を取り寄せます。もしくは、本籍地より戸籍附票を取り寄せます。

○ 相続放棄する相続人本人の戸籍謄本
被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
相続放棄する本人と同じ場合は、不要です。

○ 収入印紙(800円分)

○ 切手(裁判所によって異なるので管轄裁判所に確認しましょう。)

上記の他、被相続人と相続放棄人との関係により、
・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・申述人が代襲相続人(孫,ひ孫等)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

などが必要となる場合があります。

|このページのおわりに

相続放棄の書類はそれほど多くないので自分で作成することも十分可能ですね。

相続を放棄しなくとも、金融機関や不動産登記する場合には、相続人であることがわかるようにする必要があり、その際には相続相関図や戸籍謄本(必要により原戸籍)などが必要になります。

相続相関図などは、家系図としてあらかじめ作成することも可能です。
いざ相続開始という時にいろいろ多忙であり、また金融機関では故人(被相続人)の預金が凍結されることになることから、早期に相続人を指定して預金等の継承(相続)を行うことも必要になるので、あらかじめ作成しておくことをお勧めします。
次回も相続放棄に関して書きます。

相続相関図イメージ:(筆者作成)

(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。


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