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オチが付いた話が好きだけど、夢オチは厳禁

 斜め上のオチ、意外などんでん返しがある話が好きだ。
 現実世界を基礎としたファンタジー(霊能力、超能力、並行世界、時間移動、SF)な話も好きだ。異世界モノはちょっと多すぎて、何とも言いがたいが…。
 昔から、「トワイライト・ゾーン」や「世にも不思議なアメージングストーリー」「世にも奇妙な物語」、星新一のショートショート、手塚治虫の「クレーター」、藤子F不二雄のSF短編集などなどを好んでいた。
 ミステリー小説も結末の意外性という点で、オチがおもしろい話として分類できる。

 ただし、夢オチはいけない。
 その昔、手塚治虫が書いた「漫画家入門」という本に、下ネタと夢オチは書いてはいけない漫画に分類されていた。(残念なことに私は下ネタが嫌いではない…)
 ただ自分でも、よくやってしまうのが、タイムスリップやパラレルワールドの話で、夢オチまがいにしてしまうことだ。登場人物の一人だけが、タイムスリップしたりパラレルワールドを行き来したりしている場合、夢オチと変わらないような気がする。物語の中で、非現実的な出来事を一人しか知らないのであれば、物語の作者として夢オチではないつもりでも、結果として夢オチと変わらない。
 主人公が非現実的な状況におかれたとき、夢オチにしてしまえば、何でもオチをつけることができる。夢オチにしてしまえば、どんな奇想天外な話、不条理な話、原因も結果もない話でも成り立つ。
 肝に銘じて、夢オチとならないように創作を続けたいと想う。

拙作の夢オチの愚作の例

初稿公開日:2009年6月18日(木)「追われる!」

 俺は逃げていた。建ち並ぶ高いビルのすぐ脇を暗い中走って逃げていた。得体の知れない怪物に追われていた。俺は、自分がなぜその場にいるのか記憶がない。気づいたときには追われていたのだ。
 高いビルの並び立つ四角い空に、その怪物の目だけが光っていた。その目は、どこかで見たことがある気がしたが、憎しみにみなぎっていた。
 怪物は俺を狙って攻撃を加えてくる。ビルの陰にいる俺を的確に狙って、その手を振り下ろしてくる。俺はよけるのに精一杯だ。飛び跳ねて避け、そしてまた走り、ビルの角を曲がり、陰に逃げ込むことの繰り返しだ。俺の額から汗が流れ落ちる。一生懸命逃げているのだが、怪物を振り切ることができない。
 そしてついに、追い込まれてしまった。怪物の手が俺に振り下ろされる。俺の体中に激しい痛みが走る。内臓から何から、体中から飛び出していくような痛みだ。
 遠くで、俺を呼ぶ声がする。
「よしお、よしお・・・。」

 そこで、俺は目が覚めた。夢か。しかし、体中に痛みがあることは変わらない。
「よしお、よしお。」
 母の呼ぶ声で目が覚めたようだ。
「ちょっときておくれよ」
 母が部屋に入りながら、懇願する。
「今、ゴキブリがいて、つぶしちゃったんだよ。気持ち悪いのよ。あんた片付けてくれない。」
と頼んでくる母のその目は、あの怪物の目であった。
(了)

初稿公開日:2009年11月2日(月)「剣を持つ男たち」

 ふと気づくと、俺は酒樽の中に入れられていた。顔だけが酒樽の外にはみ出している状態だ。
 周りは暗い。何人かの男たちが剣を持って周りにたむろしている。暗くて顔までは判別できない。口だけが見えており、ニヤニヤした表情をしているようだ。
 俺が気づいたのを合図に、その男たちは、俺が入れられている酒樽の周りに集まってきた。一人の男が、剣を酒樽に向けた。そして、勢いよく、酒樽に突き刺してきた。
 俺は刺されて死ぬのかと、思わず目を閉じた。しかし、痛くない。剣は酒樽に刺さっているが、俺には痛みがない。最初の男はうれしそうな表情をしているようだ。
 二人目の男が同じように剣を酒樽に向け、勢いよく刺してきた。俺はまた目を閉じた。しかし、やはり痛みを感じない。二人目の男もうれしそうな表情をしている。
 三人目の男が刺してきた。俺は鋭い痛みを感じて、声を上げながら、酒樽の中から飛び出した。その拍子に、地面に思い切り頭をぶつけ、気を失った。

 目が覚めると、近くで子どもたちが騒いでいた。一人の子どもが話している。
「ヨッちゃんの負けぇ! 黒ひげがとんでったもんね。」
(了)

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