将来世代のニーズを考えられる土壌を整えるには
昨今、SDGsというワードが普及し、まだ地球に生まれていない将来世代のニーズを考える機会が増えたように思います。将来世代のニーズを満たすためには将来世代の声を聞きたいところではありますが、将来世代の声は直接聞くことができません。推測する手段として、過去の時点で将来世代に当たった現代の若者の声から将来世代のニーズについてある程度推測することができそうです。
将来世代のニーズについて考える上で1つ参考になりそうな自然の権利に関わる訴訟があったため、まずはその訴訟の話を紹介した後、本記事では将来世代のニーズを満たすためにはどうすればいいかを考える前段階となりそうな動物の権利について話し合ったことを書いていけたらと思います。
1.自然の権利の範囲について
アマミノクロウサギ事件の話を聞いたことがあるでしょうか?
この事件は原告にアマミノクロウサギをはじめとする4種の動物の名前が挙がり、ゴルフ場の建設反対を表明して鹿児島県知事を訴えた事件として知られています。
裁判には野生生物の代弁者として人間の原告が出廷しましたが、「野生生物のニーズを満たすために人間が代弁する」という構図は、「将来世代のニーズを満たすために現在世代の人々が話合う」という構図と似ていると私は思いました。
裁判の結果は動物の原告も人間の原告も原告適格がないとして却下されたそうで、日本において「野生生物のニーズを満たすために人間が代弁する」ことは適切でないと判断された形となりました。
持続可能な開発という考えが広く認められていることから人間は、将来世代のニーズを考えることはできそうです。現在存在しない存在について考えることができるのであれば、直接声を聞くことができない野生生物のニーズも考えることができるのではないかと私は思い、同団体のグループワークにおいて「ヒト以外の動物の権利はどこまで認められるべきか」という議題を提示し、話し合いました。
ここからは上記の論点に沿って話し合った内容を書いていこうと思います。
2.ヒト以外の動物の権利はどこまで認められるべきか
まず初めに、ここでの権利ってそもそも何を指しているのかという疑問からはじまりました。
生存権?・苦痛を受けない権利?・自由権?などが挙がり、動物によって差が大きそうな苦痛を受けない権利について考えることになりました。
話し合いでは、人間が恣意的に設けた優先順位によって動物を選択し、動物実験や工業型畜産が行われているのではないかという意見が挙がりました。犬や猫、霊長類やクジラなど人間がかわいい、あるいは知的だと感じる動物は苦痛を受けないように配慮され、ネズミやハエ、牛や豚など前者と比べて人間がかわいいと思いにくく、知的だと感じにくい動物は苦痛にさらされる機会が多いのではないかと話し合いました。
そもそも動物実験の実態について知識がなかったため、後日調べてみると、欧米ではコンピューターや試験管を使った代替法が確立されているにもかかわらず、日本は問題意識の低さからか動物実験の代替手段が普及していませんでした。
このことから、ヒト以外の動物の「苦痛を受けない権利」は日本においてまだまだ確立されていないことがわかりました。動物実験の代替手段があるにもかかわらず、移行しない理由について詳しくはわかりませんが、解決可能性が高そうで、真っ先に解決すべきと思う問題を棚上げしている状態では、日本において「ヒト以外の動物の権利」についてはほとんど認められていないように思いました。
3.解決手段
話し合いの中で出てきた動物実験に対する解決策としては、人間の細胞を培養して実験をすること、私たちが普段使っている製品の背景に動物実験が行われているということを広く知ってもらうこと、動物実験をしていないメーカーの商品を買うことなどが挙げられました。後日筆者が考えた解決策として、記事にもあったように、代替手段に置き換えるという案があります。実習はコンピューターを使ったシミュレーションで行う・不必要な実験を減らすために倫理審査を諸外国と同等レベルまで引き上げるなどできることはあると思います。
私たちの安全安心の医療のため、便利で快適な商品開発のためという理由で、動物に対する不必要な苦痛を与え続けることはよくありません。本質的な解決ではないかもしれませんが、昨今の潮流に合わせて行うCSR活動の一環として、企業も動物に不必要な苦痛を与える動物実験などは早急に止めたほうが利益にもつながるかもしれません。
4.最後に
将来世代のニーズを満たすためにはどうすればいいかを考える前段階として動物の権利について考えてきましたが、日本において、動物の権利はまだまだ認められていないということが動物実験の例からわかりました。
直接声を聞くことができない動物のニーズ(本当に求めているかはわかりませんが)を満たすことができていない現状、日本において、将来世代のニーズを満たすための行動をとることも難しいように感じました。
気候変動問題は現在世代にも影響を与えていますが、特に将来世代に大きな影響を与えることが言われています。動物実験の例においても気候変動対策においても欧州の取り組みが進んでいる理由は何なのか?この答えを考えることが日本で声を聞くことができない存在のニーズを満たすための答えになるのではないかと思います。
参考文献
吉永明弘・寺本剛, 環境倫理学【3STEPシリーズ2】, 昭和堂, 2020, p88-104.
日本生理学会
http://physiology.jp/guidance/4804/
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