写真でみる、溝口昭彦「Spindle-shaped 紡錘形から始める」
ただいまCyg art galleryでは溝口昭彦の個展「Spindle-shaped 紡錘形から始める」を開催しております。会期は26日(火)までと残りわずかです。
本記事では、展覧会風景の写真を中心にご紹介いたします。撮影は、知念侑希が担当しました。
一度ご覧になった方もこれからご覧になる方も、また会期終了後も、振り返りや記録としてぜひお楽しみください。
本展では、1990年代から現在に至るまでモチーフとして据えた紡錘形を起点とした作品群が展示されています。紡錘形とは、円柱状でまん中が太く両端がしだいに細くなる形です。英語では「Spindle shaped」といいます。ぐるぐると回転しているような形でもあり、糸巻きのようにもみえます。
溝口はこの形を、根源的で、表現のはじまりのようなものとして捉えています。「年齢や住む場所を超えて感じられる共通に持っている原型のようなもの」とも語ります。確かに、幼い頃に地面に書いた落書きや、花の蕾、葉っぱ、木の実、ミドリムシのような自然物の造形としても連想されます。
今回の個展では、作品リストに掲載しているだけで77点の作品が展示されています。一部リストに載っていない作品もあるので、作品数は80点ほどにのぼります。圧巻の物量です。
溝口は、作品を構成する要素として音や光、鑑賞者の動きなど周囲の環境を取り入れることがあります。この作品も鑑賞者の動きによって光ったり音が出たりします。デジタルな仕組みが用いられていますが、溝口にとってそれらすべてが絵画における絵具のような作品をつくるための材料であり、アナログの延長線上にあるもののように思えます。
湾曲する壁面の内側には、その特徴的な壁に呼応するように作品が散りばめられました。ここには〈analog_passage〉シリーズも多数展示されています。
作品には様々なものが内包されているのがわかります。流木や木の枝、削り出した木材、ミニカーなど。絵画でありながら、物質感や奥行きに富んでいます。また、観音開きの扉がつけられており開け閉めできる構造になっています。
《spindle-shaped_2022_ito_wakamatsu》の支持体には、脆弱な障子紙が用いられ、古びたノートや写真、手作りの絵本や手紙などが含まれているのがわかります。それらは溝口の思い出の品であることが想像されますが、絵画のなかでは描画材としての役割を果たしています。
今回の個展では、縦1.8m×横4mの大作を展示しています。Cyg art galleryにおいても最大級の作品です。
この作品は、描いたあとに屋外に晒しておいたことで錆や汚れなどがついています。溝口にとっては、風化させることも描く行為の一部のようです。
《spindle-shaped_2008_kozukata》は、刃物の痕跡を残した木材が整然と並んでいることに、目をひかれます。これは、多数の人がジグ(工作物を固定する道具のこと)として利用したものを回収して作品に落とし込んだものだと言います。似たような場所に傷がついていますが、少しずつ異なり使った人の手の動きが垣間見られます。この作品からは、形のゆらぎや人の痕跡への関心が窺えます。
今回は、膨大な作品のなかから少しでも多くご覧いただくため、企画展示スペース以外にも展示をおこないました。Cyg rental wallのスペースに6点の作品を展示しています。
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展示風景の写真を中心にご覧いただきました。会場でご覧いただくのが一番ではございますが、少しでも様子が伝われば幸いです。
溝口昭彦「Spindle-shaped 紡錘形から始める」の会期は9月26日(火)まで。ぜひご高覧くださいませ。みなさまのご来場を心よりお待ちしております。
Cyg art gallery 千葉真利
*一部作品はオンラインショップからもご購入いただけます。