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【黄河源流シリーズ#064】西湖という小さな街でメロンをたらふく食す
2011年08月31日 甘粛省 /
とにかく真っすぐ。ひたすら真っ直ぐ。
道は陽炎の中に消えている。
敦煌の市街には葡萄畑が広がる。
もともとは「綿」の栽培が行われていたというが、
観光地化が進むにつれて地下水の消費量が増え、
より少ない水で栽培できる「ブドウ」に変化したそうだ。
気候も味方したと言えるが、皮肉と言えば皮肉だ。
この葡萄畑は当たり前だがブドウの香りで包まれている。
乾いた空気の中で爽やかに漂う。何とも気持ちがいい。
なぁんて、爽やかな気持ちに浸っていたのは1時間ほど。
再び砂漠地帯に突入だ。
遮るものは何もなく、凶暴な横風で自転車が揺すられる。
風の音で頭の中がガンガンしてくるし、
風と共に砂漠の砂が運ばれてくるので口の中がジャリジャリになる。
照りつける太陽はジリジリと皮膚を焦がす。
その横を大型トレーラーが砂埃を上げて猛スピードで駆け抜けるのだ。
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半日以上走り小さな村に着いた。「西湖」だ。
村と言うか「出荷場所」のような場所だ。
道路沿いには三輪バイクが止まり、
畑から採ってきたであろう山積みのメロンを、
大型トレーラーに積み込んでいる。
道路脇には商品にならないメロンが捨てられ、
その香りが風に乗って広がっている。
葡萄の次はメロンだ。
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食堂を探すが見つからない。
キョロキョロしているとおじさんが一人メロン片手に近付いてきた。
「兄ぃちゃん!このメロンあげるよ!」と。
そのメロンは普通のメロンを縦に引き伸ばしたようなカタチで、
長い部分でゆうに40cmはある。短い部分で25cmくらいだろうか。
僕の頭よりも遙かに大きい。
「このメロン、裂けてしまって売り物にならない。捨てるんだれど
見た目を気にしなければ食べられるし、おいしいぜ!」と、
半ば強引に手渡されてしまった。
・・・・重っ!
3kg?いや5kgはあるだろうか。
ズシッとしたメロンを手にしたものの、とても自転車に載せられない。
よし、今日のランチはこのメロンとしよう!
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売店のベンチに座り、裂け目に沿ってナイフを入れると、
「パキッ」と言う音とともに勝手に2つに割れた。完熟している。
中は薄いオレンジ色で、強烈な香りを発している。
食べながらメロンを出荷する農家の人たちを観察していた。
畑からここに届いたメロンは、ここで分類されている。
大きさ・色・形で3種類に分類される。
それを大きな秤で重さを量り、メロンにネットを掛け箱詰めする。
これをひたすら繰り返す。
見る見るうちにメロンの山が築かれていく。
そんな作業を見ながら30分ほどかけて半分を食べたが、お腹いっぱい!
とても残り半分は食べられない。
隣のベンチに座っていたおじいさんに
「よければどうぞ?」と差し出してみたが、
「毎日3個食べてるから要らないよ」とニッコリ断られた。
そりゃぁそうだ。文字通り”捨てるほど”あるのだから。
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再び漕ぎ出すが、ここから60kmの一直線の上り坂。
上り坂と言っても平坦路と同じくらい緩々と上る。
坂は問題ないのだが、とにかく風がスゴイ。
風速を計って見ようと思って、ちょっと実験してみた。
結果、凡そだが風速15m/s以上だ。
風速15m/sというと、「強風」あるいは「疾強風」と呼ばれ、
風に向かって歩く事が出来ない程の強風だ。
うぅぅぅ・・・。
3分走って5分休憩を繰り返すが、最後は黙々と押して歩いた。
19:00にようやく目的地に到着。「柳園」だ。
ここは、今まで走ってきた215号と懐かしの312号が交差するところ。
トレーラーが何百台と止まっている一大ターミナルだ。ここで夕食。
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敦煌辺りから麺の作り方・味が変わってきた。
日本のラーメンにかなり近くてシコシコ!
ここから312号を西に向かうのだが、
今日一日吹いていた風が、今度は追い風になるのだ!
ご飯を食べてからテントを張る場所を求めて少し走ってみたら・・・・
進む進む!もう漕がなくても進む!
あたりはすっかり暗くなっていたが、
あまりにも快適だったので1時間ほど走ってからテントを張った。
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見渡す限り何もない砂漠の中。
砂漠の上のテントは、太陽の熱を十分に吸収していて心地よい。
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飯高直人 著
『自由の教科書 夢を叶えた人だけが知っている8つの「捨てる技術」』
編集代行:DK.S