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医療ソーシャルワーカーについて知ってほしい

皆さんこんにちは。すごい山と申します。
病院で医療ソーシャルワーカーをしています。

医療ソーシャルワーカーって何?聞いたことない!という人も多いと思います。
何しろ病院の中では地味な存在、医師や看護師のように病院に来る患者さんのすべてにかかわる職種ではないからです。

でも、大事な役割の職種だと思っています。
それを皆さんに知ってほしくて、この記事を綴りました。
ぜひ、名前だけでも覚えて帰ってください。


1.医療ソーシャルワーカーってどこにいる?何者?

文字にすると医療ソーシャルワーカーって長いので、以下本文中はMSW(=Medical Social Worker)と表記します。

MSWは病院の職員ですので、基本的にはいつも病院内にいます。MSWがいる部署は様々ですが「医療相談室」「医療連携室」「患者サポートセンター」などの名前がついていることが多いです。
最近では相談窓口として病院のホームページに載っていることもあります。

MSWの多くは社会福祉士という国家資格を持っています。社会福祉士は福祉に関する制度や相談援助技術について勉強しています。
名称独占資格であるため、資格がなくてもMSWとして働くことは可能です。
しかし診療報酬上社会福祉士を置くことが算定要件となる場合がある(つまり、社会福祉士がいると病院の収入になる)ため、多くの病院ではMSWの採用において社会福祉士であることは必須条件になっています。

精神科病院では精神保健福祉士という資格を持って精神保健福祉分野の支援にあたるPSW(=Psychiatric Social Worker)がいることも多いです。

大事なことですが、MSWへの相談は無料です。
MSWに相談することによって入院や通院にかかる費用に請求が上乗せされることはありません。
気軽に相談してくださいね!


2.どんな相談に乗ってくれるの?

私が普段受けている相談の具体例をいくつか挙げてみます。

「介護が必要になった。介護保険の申請ってどうやるの?」
「認知症でひとり暮らしが心配。施設に入りたい」
「治療は終わったけど障害が残ってしまった。仕事に復帰できるかな…」
「治療にかかる費用が不安…」
「高齢で通院が大変。往診医を紹介してほしい」
「身寄りがいない。亡くなったときどうしよう」
「公的保険に入っていない」

などなど、様々な相談に乗っています。
私の現在の職場は一般病棟ですが、いちばん多い相談は退院支援です。
介護が必要な方に介護保険のサービスができるように調整したり、継続的な医療行為が必要となった方に療養型病院を紹介、転院の調整をしたり。
状況によって退院先には様々な選択肢があり、制約もあり、その先の人生を左右します。病状や金銭面などを考慮して、選択肢の中から最もよい選択ができるようにお手伝いしています。

健康保険、介護保険、障害者手帳、難病、生活保護などの各種制度利用の案内もよくあります。

最近とみに増えていると感じるのが身寄りのない独居高齢者の相談です。今後noteで取り上げていきたいテーマです。

内容によってはご相談いただいてもMSWにはお答えできないこともありますが、その場合も相談できる院内外の窓口をご案内しています。


3.患者さんの「できること」を大切にします

いろんな相談を受けていると時々言われるのが「この手続き、代わりにやってくれないんですか?」という言葉です。

残念ながらそれはできません。
MSWの役割は何かを「やってあげる」ことではなく、患者さんやその家族が「できるようにする」ことです。
代わりにやってしまっては、患者さんや家族がその手続きについて知る機会を奪ってしまい、自身でできることを減らしてしまうのです。

例えば、経済的な問題で生活に困っている患者さんの場合。
MSWは生活状況を詳しく聞き取った上で、生活保護の申請を提案するとします。役所のどこに行ってどんな手続きをすればいいか、具体的にわかるようにご案内します。

でもその先の手続きは患者さん本人や家族がしなければなりません。何故ならその手続きによって生活保護を受けるのは患者さん本人だからです。

ついでに言えば、多くの公的な手続きは本人や家族でなければできない事が多いのです。

しかしながら必要な手続きを自ら取れるかどうかはその患者さんによって大きく異なります。
同じ手続きをするにしても、インターネットを駆使して自分で調べて動くことができる人と認知症があって理解力が低下している人、自分で窓口に出向ける人と寝たきりで移動が困難な人では必要な支援には差があります。

MSWは患者さんとの面接の中でその患者さんにはどの程度の支援が必要なのかも確認しています。他の患者さんはやってもらってたのに…ってことがあっても、どうかご容赦ください。


4.「その方らしさ」を大切にします

いくら困っているとはいえ、ごく個人的な生活について相談するなんて恥ずかしい、知られたくない…と感じる方もいるかもしれません。
確かに、ご相談いただくときには生活の細かい状況をお伺いします。
問題の内容や難易度によって異なりますが、次のようなことをお聞きすることがあります。

・病気やケガについて医師からどんな説明を受けたか
・家族構成やその関係性
・収入、貯蓄、資産などの経済状況
・自宅の間取りや家賃などの居住環境
・交友関係
・どこで生まれどんな家庭で育ち、どんな生活を送ってきたのか等の生活歴

こんなにいろいろお聞きするのには理由があります。

MSWは目に見えている問題を解決することだけでなく、その方がその方らしく生きていけるように支援したいからです。
だから、その方がどんな方なのか、何を大事にしているのか、どんな風に生きていきたいのか、どんな風に最期を迎えたいのか…知りたいと思っています。ぜひMSWに教えてください。

もしそれが現実味のない希望だったとしてもまずは話してみてください。もちろん全部が思い通りにならないことは多々あります。しかし、一緒に考え、悩み、受け入れたりあきらめたりしながら、100%理想的でなくても納得できる答えを見つけられるよう支援するのも、またMSWの仕事なのです。

余談ですが、患者さんの人生経験をお聞きすることで、私たちはMSWとしても人間としてもいろいろ勉強させていただいてます。
この仕事をしていて良かったと思う一幕です。


5.医療ソーシャルワーカーは患者さんの味方

これ!一番知ってほしいことはこれなんです。

MSWはいつでも、患者さんのよりよい生活を望んでいます。

MSWはその方がどんな方であっても手を抜くことはありません。お金がなくても、障害があって自分の考えを言えない人でも、身寄りがなくても、例えテキトーにその患者さんの今後を決めてしまっても誰も文句を言わないような状況であっても、です。目の前の患者さんにとって一番幸せな方法をいつも考えているのです。


6.おわりに

MSWってなんなのか、どんな思いで働いているのかを知っていただけたでしょうか。
これを読んでくださった方がMSWと実際に話をするのはもしかしたらすごーく先のことかもしれません。
最初にも書いたように、MSWは病院に来るすべての患者さんと会うわけではなく、病気やケガをきっかけに何か問題が起きて初めてかかわることが多いからです。

とはいえ、病気やケガはいつ起こるかわかりません。
思いがけず病院の世話になる、もしかしたらそれは明日のことかもしれません。

そんなときに「誰に相談したらいいかわからない…」と悩むことがあったら、ぜひMSWのことを思い出してくださいね!

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