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防災・災害対策には欠かせないハザードマップ作成研修を実施|パキスタン出張報告
こんにちは🙂イガラシゴーです🐧
2024年8月にパキスタン出張に行ってきました。今回の出張の目的は、現地の防災研修を実施すること。どんな内容の研修を行ったのか、実際の様子とともにお届けいたします。
防災・災害対策には欠かせないハザードマップ作成研修
CWS Japanは2024年3月より、パキスタンにおける大洪水からの復興と将来の災害に備えるための防災力強化支援を開始しました。
▼事業開始当初のパキスタン出張の様子はこちらにまとまっています。
今回実施したのは、防災・災害対策には欠かせないハザードマップを作成できるようになるための研修でした。現地行政の災害対応や防災、農業開発担当局、大学などの研究機関、現地の市民社会団体の職員といった方々が対象で、総勢15人の参加者が4日間にわたり、座学と実地研修で多くのことを学びました。
対象地域を分析、"地域防災"の視点も共有
まず研修の最初に、事前にパキスタンの支援対象地域を衛星写真などから分析した、地形の特徴やそれに伴う災害リスクなどについて解説しました。
続けて日本における「防災」の考え方や「ハザードマップ」の役割を説明し、住民が主体となり作り上げていく地域防災の考え方が大切であることを伝えました。
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パキスタンのシンド州南東部は、インダス川下流の氾濫原の一部にあたり、高低差の少ない平坦な地形が続きます。平坦な地形を利用し、昔から灌漑用水路が発達し、綿花をはじめとした農業が盛んに営まれています。
一方で、山岳地帯や丘陵地帯に比べて、平坦な地形は洪水時の水の流れを予測することが難しくなります。さらに灌漑用水路や道路などの人工構造物が予測をさらに難しくさせます。
ハザードマップ作成の鍵は地域住民の"経験"と"記憶"
地形的特徴からのみでは洪水時の水の流れの予測が難しい場合、最も信頼性の高い参考情報となるのは、過去の経験です。
過去の洪水時の"記録"だけでなく、住民一人ひとりの"記憶"を辿り、どこが浸水して、その深さはどれぐらいで、水がどのぐらいの期間引くことがなかったかという具体的な一つ一つの情報が、ハザードマップを作る上では重要になってきます。
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こうして具体的に洪水時の浸水状況を住民から聞き取っていくと、どの家が浸水したかということがわかり、洪水時に避難が必要な家とその人数の予測ができるようになります。さらに、どこの道路が浸水したかという情報と合わせて、ハザードマップに落とし込んでいくと、避難経路の設定もできるようになります。
また、避難が必要な人数に加えて、どのくらいの期間、洪水の水が残っていたかという情報は、避難施設を設置する際の場所や大きさ、備蓄品の量などを決める際の重要な参考情報となります。
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写真左奥でサポートしているのは、CWS Japan事務局長の小美野@CWS Japan
今回の実地研修では、一つの村を訪問し、住民調査の際に具体的にどのような質問をして、村および周辺の水路や道路等どのような場所を確認しなければならないかをシミュレーションで体験しました。
今回の研修の参加者には、これから約4ヶ月間の間にそれぞれが実際に担当する村を訪問し、ハザードマップを作るために必要な情報を集めて、これをデータ化して、地図をドラフトするという宿題が与えられました。
人間を中心にした災害リスクの捉え方
今回の研修の中で、私が一番印象に残ったのは、「洪水時の浸水の深さが何センチであるかという情報よりも、浸水した家の住民がどのような生活状態になったかという情報の方が重要である」という考え方でした。
水の深さよりも、そこに住む人々がどのような影響を受けるかを考える人間中心のリスクの捉え方を聞き、日本では当たり前のようになっているハザードマップですが、その本来の目的を再認識させられる機会になりました。
"地域に根ざした防災計画"とは、誰かが机の上で計算してつくるものではなく、地域住民は当然ですが、普段から地域の防災に真剣に取り組んでいる今回の研修参加者のような地域のリーダーと共に作るからこそ、意味のあるものになるのだと感じました。
CWS Japanとして、引き続き地域が主体となって取り組む防災を後押ししていきたいと思います。
本事業は外務省のNGO無償資金援助によって支えられています。
引き続きみなさまからの温かいご支援をお願いいたします。
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(文:プログラム・マネージャー 五十嵐豪)