ベトナム北部のコミュニティの力で防災力をあげていく
こんにちは🌞事務局長の小美野です。
CWS Japanでは、以前から外務省NGO連携無償資金協力の枠組みを活用し、ベトナム北部(Tuyen Quang省Chiem Hoa県)の防災力向上を支援しています。これは3年間の事業なのですが、今年はその3年目にあたる年で、これまでの取り組みが集大成化してきました📢
もともと、度重なる洪水や土砂災害に悩まされている少数民族が居住する地域であるベトナム北部において、防災力を高めることを目的に事業を立案し、実施してきました。今回は今まで達成できたことや、われわれが実際、現地で見た変化をお伝えしたいと思います✍✨
どこが危ないか
まず、「危ない場所」を特定するために、ハザードマップやコミュニティ防災マップが作成されました。日本では総称で「ハザードマップ」と呼んでいますが、われわれの事業では、用途を分かりやすくする為に、「リスクを表したものがハザードマップ」、そこから安全な避難経路や避難場所など、「リスクを削減する方法を示したのが防災マップ」と呼んでいます。
ベトナムの関係者はその両方を作成することができるようになり、それらの知識を地区防災計画に落とし込んでいます。CWS Japanの連携パートナーである国土防災技術株式会社の専門家による地形判読の技術指導も頂きました。これらによって、積極的にリスクを把握して、削減するという方法が確立されました。
いつ危ないか
また、「いつ危ないか」を知るためには雨量や河川の水位、そして斜面の動きなどを把握することが重要です。現地では以下の写真のように丁張を崩れる危険性のある場所に張り、その動きを見ることで、斜面がどのように動いているか、滑落する危険性があるか、などを把握してきました。以下の写真は、丁張の右半分は土砂とともに滑落した後の写真です。この真下に住んでいたコミュニティは、結果、斜面が崩壊する前に避難し、子ども達を含め、けが人も出ず、全員無事でした。
ちなみに丁張ですが、以下のように、木の板を組み合わせて作成します。亀裂などをまたぐように2つを一組として設置され、左と右が重なる部分(中央)がどのように動くかを観察することで、地面がどのように動いているかが分かります。
何を守りたいか
わたしたちは地球の変化と共に生き、自然と共生することが重要だと思っていますが、そのなかでも絶対に守りたいものには防御線を張る必要があります。
例えば、今回の対象コミュニティで非常に重要視されている農地があり、地元の農業や食、そして仕事を支えています。その農地が度重なる洪水による河岸浸食で失われてしまうかもしれないという、大きな危機感をコミュニティは持っていました。そこで、河岸浸食からこの農地を守るために蛇篭を使いとした防護壁を作りました。以下の写真であるように、現地のコミュニティ自身が工事のモニタリングを行い(技術的なモニタリング事項はトレーニングしました)、進捗を常に把握し、「自分たちの重要な資産だ」と言いながら主体的に作りこまれていきました。
土砂の流出を防止するシートを蛇篭の後ろに敷き詰めること、工事のために土を掘った所に埋め戻しをしたところのコンパクション(土を締め固める過程)の徹底、針金が飛び出ているところの適切な処理など、日本の専門家にご指導頂いたポイントは全て実施されていました。それを見た時に、このコミュニティの本気度が伝わってきました。
今後に向けて
この3年間の取り組みで、ベトナム北部において、どのようにリスクを捉え、モニタリングし、削減していけるか、という一つのモデルが確立できました。同様のリスクに悩まされている他の県や地域にさらに横展開できると考えています。
日本もベトナムも、「大切なヒト・モノ・トキを守りたい」という気持ちは同じです。そして、地球の変化と共存しなければならないという人間のサガも同様です。であるならば、協力して、お互い学びたい、よりうまく自然と共存できるようになりたいと思います。
「たった一人のためにでも、世界をつなげたい」。CWS Japanではそのスローガンとともに、さらなる防災協力を推進してまいります。
(文:事務局長 小美野 剛)
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