スタートアップにおけるCFO採用
スタートアップ経営者の方によく聞かれる質問のひとつに、「CFOってどんな人を採用すればいいんですか?」というものがあります。
CFO採用って難しいですよね。何が難しいって、起業しようというベンチャーマインドあふれる創業者にとって、一番距離が遠いポジションだから(笑)
どんな人を採ればいいのか、どうやって採ればいいのか、いつから採用すればいいのか、そもそもCFOって何をする仕事なのかなど、ネットで見てもあまりピンと来ず、わからないことが多いポジションではないかと思います。
かくいうChatworkにおいてもCFO採用はとても苦労しました。CFOが採用できるまでに約2年半かかり、私だけでも60人ぐらいは面接したと思います。
手探りでの採用活動でしたが、いろいろなCFO候補の方とお話することで、バックグラウンドやキャリアの志向性にいくつかのタイプがあるんだなということが見えてきました。
今回は、スタートアップにおけるCFO採用について、当時の自分が知りたかったことをアドバイスするという観点で記事にしてみたいと思います。
あくまで自分の体験ベースなので視野が狭い部分が大いにあると思いますが、CFOを実際に採用した側の記事はネットにあまりなかったので、CFO採用を考えているスタートアップの方の参考になればと思い書いてみます。
CFOはいつから必要か?
事業モデルにもよるとは思いますが、アーリーステージぐらいまでは、CFOの必要性はほとんどありません。
たまにスタートアップの創業メンバーとしてCFOがいるケースがありますが、”CFO”としての仕事はあまりないと思います。。。
もっというと専門性が高すぎるがゆえに、不必要に精緻な事業計画や予算管理をしようとして、足を引っ張りかねない危険性さえあります。
アーリーステージでは経理もそこまで複雑ではないし、調達においてもエンジェル投資家やシードVCからの調達であれば、専門性は必要ありません。バリュエーションもJ-KISSを利用すれば後ろ倒しすることもできます。
CFOが必要となってくるのは、ミドル・レイターステージになってから。PMFが一定見えてきて、シリーズA/Bとして数億〜数十億調達して組織規模をグッと拡大しようとするようなタイミングです。
シリーズA以降になると、複数の大きめのVCから社外取締役が入るなど、取締役会での事業モニタリングが厳しくなってきます。バーンレートも高くなりますので、キャッシュフローを見ながら次の調達を常に考えて事業運営していく必要があります。
また、上場準備もこれぐらいのタイミングから本格的にはじまるので、監査法人や証券会社の選定、および対話などで高い専門性を求められるようになってきます。CFOがいない場合、ここにCEOやCOOが対応することで事業成長に集中できなくなってしまいます。
CFOはどうやって採用する?
知り合いに良い人がいればその方でもよいとは思いますが、様々なタイプの方がいるので、人の相性含めてなるべく広くたくさんの人を見て決めていくのがよいと思います。
CFOの採用は難易度が高そうに見えますが、金融系の優秀層がスタートアップに流れてくるという大きなトレンドがありますので、一定規模の資金調達をすでにしているのであれば、候補者と全然会えないというようなことはあまりないかと思います。
最も良いチャネルは、人材エージェントおよびダイレクトリクルーティングかと思います。年収がかなり高いハイクラスな方が多く、エグゼクティブ系に強い人材エージェント、ダイレクトリクルーティングのサービスを利用することで多くの候補者の方と出会えると思います。
CFOの3タイプ
採用面接においてたくさんのCFOの方とお話させていただき、CFOには次の3タイプがありそうだなと思っています。(私の勝手な分類)
ファイナンス系CFO
アカウンティング系CFO
コーポレート系CFO
ファイナンス系CFO
ファイナンス系CFOは、外資の投資銀行や日本の証券会社、またはPEファンドや戦略コンサル出身で、資金調達やM&A実務をやってきた人たちです。
キレッキレで優秀な方が多く、CFOといえばこのタイプのイメージが強いかもしれません。年収もとんでもなく高い人ばかりですが、エクイティへの理解が深いので、SOや生株を出すことで年収を大きく下げて入社してもらえることも。
資金調達の専門家で、このタイプのCFOがいると資金調達ラウンドは非常に安心できるようになります。調達後の投資家コミュニケーション、いわゆるIR(Investor Relations)にも強みを持ち、取締役会の運営にもフロントに立って場を回してもらえます。
一方、コーポレート実務の方はあまり経験がないことが多く、総務・経理・人事・法務などのベーシックな知識はあるものの、実務オペレーションのところはマネージャー任せになってしまうことも。
資金調達のタイミング(IPO含む)や、上場後のIRというところで非常にパフォーマンスを発揮するタイプのCFOですが、コーポレート実務が強いタイプではないので、資金調達があまりない時期ではパフォーマンスを発揮しにくい面もあります。
アカウンティング系CFO
アカウンティング系CFOは、公認会計士であったり、大手上場企業やそのグループ子会社の経理財務部長といった、いわゆる経理畑出身の人たちです。
経理実務、リーガルやガバナンスといった領域に強い専門性を持ち、ファイナンス系CFOが「攻めのCFO」だとすると、アカウンティング系CFOは「守りのCFO」と言えるでしょう。
上場審査プロセスにおいて、経理は根幹中の根幹となりますので、ここにミスが少なく正しく速く数字が固まることは、事業運営においても重要な要素となります。
内部統制やリスクマネジメントといった部分にも安定したオペレーションを期待でき、CEOおよびCOOが安心して攻めに集中できる環境をつくってもらえます。
一方、資金調達やIRにおいての専門性はそこまで高くなく、粘り強いバリュエーション交渉であったり、魅力的なエクイティストーリーを設計するなどは得意ではないかもしれません。
また、固めの大企業出身の方も多く、変化が激しいスタートアップへのカルチャーフィットに懸念がある人も多い印象です。
コーポレート系CFO
コーポレート系CFOは、事業会社の総務・人事・経理・法務などを全般経験し、コーポレート実務全般に強くなんでもこなせる管理部長といったキャリアの方です。
人事や法務など、特定の領域にグッと強い方もいますが、事業会社において少ない人数でバックオフィスを支えながら、組織成長とともに職務領域を広げていったような方が多く、圧倒的な守備範囲の広さとベンチャー適性があります。
創業期からのバックオフィス系マネージャーがそのまま昇格してCFOとなるケースも多く、その場合は長い社歴があることでCEOと阿吽の呼吸でやれるというメリットも。
アーリー・ミドルにおいては少人数でコーポレート実務全般を支えてもらえ高いパフォーマンスを発揮してもらえますが、広く浅くといったキャリアになりがちで、レイター以降で専門性が高くなっていくとCFOとしては厳しくなっていくかもしれません。
スタートアップに最適なCFOとは?
スタートアップのCFOとしては、上場後も見据えるとファイナンス系CFOが本命になると思います。
とはいえ、順調に大型の資金調達を繰り返すことができるスタートアップはごく一部で、実務面を考えるとコーポレート系CFOも大いに選択肢に入ってくると思います。
また、純IT系ではない場合など、経理の難易度が上がりますのでアカウンティング系CFOというのも、経営の安定性に大きく有効だと思います。
そして、これは当然の話ですが、CFO候補の方それぞれで大きな個人差と個性があるものです。
こういったタイプ分けはベースとしてありつつも、その弱みを十分に克服していける方もいるでしょうし、現経営陣との相性が良いかなども見るべきですので、あくまで参考として面接でしっかりとフィットを確認してもらえればと思います。
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