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いま、Chatworkがメチャクチャ面白い理由

みなさんは、「Chatwork」と聞いてどういうイメージがあるでしょうか?

国産ビジネスチャットの老舗で、ユーザーは結構いて事業は安定してそうだけど、最近はSlackやTeamsにやられてて大変なんじゃないの・・・?そう思われてるかもしれません。

いえいえ、Chatwork。

いま、これまでの歴史上で一番、メチャクチャ面白いフェーズなんです。

こちら、決算説明資料から抜粋した売上高と営業利益のグラフですが、2021年にかけて売上がグッと伸び営業利益がマイナスとなり、投資を大きく加速させていることがわかると思います。

2019年に東証マザーズへ上場して、2期連続で通期の黒字となっていましたが、2021年の昨年は大幅な通期赤字となりました。

もちろん赤字は計画的なもので、未上場の時にベンチャーキャピタルから大型調達した時以来、2回目のJカーブを掘っています。 (※Jカーブ=先行投資で短期的に赤字となるが、売上成長に伴いJの字を描いて黒字化)

人員数も急拡大しています。

2020年あたりから人員数の増加ペースがアップ。2021年度では、純増で+100人を越えて人員数が増加しています。上場してから、人員数は約3倍の規模感となっていまでも増え続けています。

サービス開始から11年たち、黒字化して上場も果たしたChatworkがいま、なぜこれだけ投資を急拡大して再び大きく攻めているんでしょうか。

シード・アーリー・ミドル・レイターなどスタートアップが進んでいくべきフェーズや課題が整理されるなか、Post IPO(=上場後)の情報はあまりないように思います。

IPOはゴールではなく、スタートだと思っています。今回の記事では、私たちが上場後も急成長を志向するスタートアップとして走り続け、いま見ている景色をお伝えできればと思います。

なぜ、2021年から投資を再加速したのか?

それまで黒字化して安定した成長を続けてきたChatworkが、なぜこのタイミングで投資を再加速させたのか。

直接的なきっかけは、2020年4月、新型コロナウイルスが拡大するなか当時の安倍首相により、初めての緊急事態宣言が出されたことです。

引用:https://www.jimin.jp/news/press/200036.html

そこでChatworkに起こったことは、問い合わせの殺到

出社が難しい状況になり、急激なテレワークへの移行に対しビジネスチャットへのニーズが大きく高まりました。資料請求や利用の問い合わせがまさに殺到し、完全にセールスチームはパンクしてしまいました。

10年に渡り、ビジネスチャットというなかなか理解が難しい新しいコミュニケーション手段を広めようと必死に努力してきた私たちにとって、これだけ多くの方の期待に応えられなかったことは、痛恨の極みでした。

2020年のタイミングでは、コロナがどうなっていくか予測はできなかったものの、お客様からのお問い合わせに感じる切迫感から、確実に時代が変わっていく気配を感じました。

そして、調べて見たところビジネスチャットは2020年のタイミングでの国内普及率が 12.5% でした。

私たちの依頼で作成したものですが、第三者機関の調査会社に依頼しランダムな3万人という大規模な調査によるものなので、信頼性は高いと思います。

12.5%という数字はもちろん高いものではありません。ごく一部のITに詳しい方々が使っている、というのがビジネスチャットの実態だということを表しています。

イノベーター理論のモデル図

新しいイノベーションの普及をモデル化した有名なイノベーター理論によると、新しいイノベーションが世の中に普及するためには、人口の 16% にある「キャズム=深く大きな溝」を超える必要があると言われています。

12.5%の普及率だった当時のビジネスチャットは、まさにキャズムにはまりかけていたぐらいのタイミングだったと言えます。

そこに、ただでさえ「働き方改革」の流れから「DX」のトレンドが生まれ加速していたなか、コロナをきっかけとした「ニューノーマル」という爆風が発生し、3重のトレンドが重なりました。

この強烈なトレンドを受け、これからの3年でビジネスチャットは確実にキャズムを超えると確信しました。

乗り換えコストが高く解約率が低いビジネスチャットは、顧客の「一番最初のビジネスチャット」に選ばれることがとても大切です。キャズムを超え、世の中へ一気に普及が加速するタイミングを逃すわけにはいきません。

サービス開始から10年。

ここにきて、最大の勝負所が来たぞ、と思いました。

※2022年5月現在、ビジネスチャットの利用率は同じ調査方法で17.9%になりました。まさに、キャズムを超えて普及が加速してきています

初めての中期経営計画を発表

勝負をかけるにあたって必要なのは、優秀な人材大きな資本です。その調達にあたり、Chatworkとしては初めてとなる中期経営計画を発表しました。

当時、Chatworkの社員数は大体100人ぐらいでしたが、「SaaSを大きく成長させるには、めっちゃ人がいる」という話をあちこちから聞いていました。

前田ヒロさんのブログでも、

Boxは、ARR700億円突破のタイミングで従業員1600人、SendGridは、ARR100億円突破の時に従業員300人が在籍していた。なかには、ARR10億円のタイミングで従業員100人を突破しているSaaSスタートアップも存在する。

伝えたいのは、SaaS企業を経営者は、たくさんの人を雇う組織を経営する覚悟が必要だということ。

SaaS企業に「少数精鋭」は、ない。

大規模で、人がたくさんいる状態をイメージして経営した方が良い。会社の文化、採用基準、コミュニケーションの取り方、目標設定の仕方など、これら全てを上手くまわしていくことが出来ないと100人、300人が在籍する組織の経営は不可能だ。

引用:ARR100億円のSaaS企業を作る10項目

このように書かれています。

最大の勝負所が来て、このフェーズで勝ち切るには多くの人を採用することが必要で、そのためには当然採用コストや固定の人件費がかかり、大人数がそれぞれの施策を実行するための大きな資金が必要だ、ということは見えていました。

未上場のスタートアップであれば、ピッチ資料をアップデートしてファンドサイズの大きなベンチャーキャピタルをまわり、大型の資金調達ラウンドを進めようか、と考えるでしょう。

でも、私たちは上場企業。未上場企業に投資するベンチャーキャピタルは対象外となってしまいます。

そう、そこで進めたのが「中期経営計画」の発表です。

上場企業では四半期に一度の決算開示があり、そのタイミングで決算説明資料を作成し、投資家向けに決算説明会を実施しています。

1年に1度、決算月を超えての決算説明は「本決算」として年度の総括や次年度の業績予想を発表する大きな開示タイミングとなり、2020年度の本決算で初めての中期経営計画を発表しようと準備を進めました。

ワクワクする魅力的な中期経営計画を発表し、それを見て投資家がChatworkの株を買うことで株価が上がり、株価が上がると良い条件(Valuation)で市場から様々な方法で資金調達をすることが可能となります。

少し話はそれますが、未上場でベンチャーキャピタルをまわる資金調達と大きく違うのは、その発表が一発勝負でオープンに進めることでしょうか。

未上場の資金調達ラウンドは、VCに話しながら反応を見てピッチ資料を随時アップデートしたり、各VCにあわせてカスタマイズすることも可能だと思いますが、上場企業ではフェアディスクロージャー(全投資家への平等な開示)が求められますので、事前に見せることはできず、一度開示した資料を後から修正することも基本はできません。

バリュエーションもリード投資家と交渉するのではなく、市場での取引でリアルタイムに変わっていく、というのも未上場の時とは感覚が大きく違いますね。特定の投資家に個別アプローチするというよりは、市場全体の投資家に広く理解を求めていく、という資金調達になるイメージでしょうか。

上場すると大変そうだな、やっぱり長く未上場で潜った方がいいかなと、思われるのも良くないので補足しますが、そういった開示の重さや難しさなどはありますが、圧倒的に多くの投資家にリーチでき、かつ多様な資金調達手段(公募増資、ABB、ワラントなど)がとれることは上場企業の大きなメリットです。

中期経営計画は通常、3〜5カ年を見据えたものとなります。シンプルなものではざっくりとした定量目標と簡単な方針のみという会社もありますが、今回私たちは最重要フェーズにおける過去最大投資を考えていましたので、戦略の中身から具体的なロードマップも含めた、詳細な計画を開示することにしました。

実際に開示した中期経営計画の一部

2020年度 本決算の決算説明資料として、中期経営計画を開示しました。スライドにして21ページに渡る大作となっています。

2020年12月期決算説明資料
(P18〜P38までが中期経営計画となります)

詳しくは実物を見ていただければと思いますが、ポイントは

  • 2024年に中小企業No.1ビジネスチャットとなり、長期ではあらゆるビジネスの起点となるビジネス版スーパーアプリを目指す

  • 2021〜2024年までのシェア拡大期を最重要フェーズと位置づけ、投資を最大限に加速

  • 2021〜2024年で主力のChatworkセグメントの売上高をCAGR+40%で成長させ、2024年度の全社売上100億を達成する

  • その達成のため、中心となる3つの戦略を推進
    「Product-Led-Growth戦略」
    「Horizontal
    Vertical戦略」
    「DXソリューション戦略」

となります。

戦略の詳細はこのnoteでは割愛しますが、

「巨大な市場があるものの会社規模が小さくセールス的に非効率な中小企業マーケットを、紹介により複利で広がるネットワーク効果を使った高効率なPLG戦略でシェアを獲得し、日本発の強みを活かした圧倒的な顧客理解でVerticalに業界へと深く入り込み、コミュニケーション手段でもあるチャットという強力なタッチポイントを軸にDXソリューションビジネスを展開する」

というものが、戦略の中心となるコンセプトです。

SaaSがもてはやされ、たくさんの上場企業も生まれていますが、全業種の全職種の人が業務時間中ずっと使うSaaSって、ビジネスチャットだけなんですよね。

普通のSaaSは、営業CRMにしても、バックオフィス系にしても、一部の職種の人が、一部の業務のタイミングでのみ使うもののはずです。

圧倒的なユーザー接点があるビジネスチャットは言わば「SaaSのOS」とも言えるサービスで、PCでいうWindows/Mac、スマートフォンでいうiOS/Android、インターネットでいう検索エンジン/SNS、のようなポジションをとれるポテンシャルがあると思っています。

こんなプラットフォーム性が高い領域で日本企業がスタンダードを取れる可能性があることって、ほとんどないんじゃないでしょうか。

なお、普通、競合からの模倣などを意識して戦略をボカしたりしますが、この中期経営計画、ほぼ全だしです(笑)。実際に、社内向けの戦略説明会でもまったく同じ資料を使って落とし込みを行っています。

ここまで詳しく開示すべきか、というところは社内でも議論になりましたが、Chatworkが取ろうとしているこの戦略は他社が真似できるものではなく、オープンにすることのメリットの方が大きいだろうという判断をしています。

中期経営計画を出した結果起こったこと

経営陣で魂を込めてつくりましたし、規模の拡大とともに成長率が少しずつ落ちてきたところに、大きく成長率を上げていく野心的な計画となっているため、発表後の反応は非常に気になりました。

発表で株価が大きく上がったらいいな、、なんて淡い期待を描いていたのですが、

「株式市場の反応は、ほぼ無風」でした(汗)

まあ、上場企業といえど、過去の実績が少ない現時点だと、なかなか信じてもらうのは難しいですね。「なんか鼻息荒い発表してるけどホンマかいな、まあ、お手並み拝見」といったところでしょうか(勝手な想像)

株価はそんな状態だったものの、一番最初に大きく変わったと実感したのは、採用でした。

人を大きく増やすことは決めていたので、強いマネジメント職や戦略的に動けるゼネラリストなどのハイレイヤー人材が必要となり、ここの採用がうまくいくかが最初の最も大きな課題でした。

ビズリーチなどのダイレクトソーシング、人材エージェントによる紹介などをフルで活用しますが、優秀な人材は引く手あまた。高い年収を提示したからといって、採用できるわけではありません。

そんな優秀人材の採用に、中期経営計画が劇的に効果がありました。

ハイレイヤーの方は、その企業を受けるにあたってIR資料を読み込んで来てくれてるんですよね。その上で面接での質疑を行うので、話が早い早い。

中期経営計画の、この戦略における、この組織機能をお任せしたいんです、という形で担当する役割を面接で深く広く理解してもらえますし、かつ開示しているものなので会社としての本気度も伝わります。

また、お付き合いのある人材エージェントの方にもこの中期経営計画の説明会を開くなどでお伝えしており、エージェントさん経由でも候補者の方にインプットが入ってる状態となり、紹介していただく方のフィット率や内定受諾率が大きく向上しました。

上記グラフはこのnote冒頭の再掲ですが、上場時点で100人ぐらいだった会社が、年間+100人を越える純増ペースでの採用を行うって、本当に大変なことです。

上記は、中期経営計画1年がたってからの決算説明資料から抜粋。組織規模が倍増するとともに、上場企業の執行役員クラスの方に多数参画してもらえています。

本当に、出来すぎるぐらい採用がうまくいったのですが、中期経営計画を発表してなかったら、まずこの結果は出ていなかったと思います。

とある機関投資家の方に、IR面談の場で言われたことがあります。

「これだけ御社がいい人材を採用できてるのって、労働市場において評価がすでにされてるってことですよね。資本市場での評価はまだ追いついていないけど、いずれ、追いついてきますよ」

これは、嬉しかったですね。

懸念だった資金調達に関しても、2021年12月にABB(Accelerated Book Building)という手法で、約20億円の調達ができました。未上場の時から数えると4回目の資金調達で、シリーズDといったところでしょうか。

中期経営計画から1年たち、米国の金利上昇などの影響で資本市場のマーケット感は厳しい市況が続きますが、高く評価いただける投資家の方が少しずつ増えてきている実感があります。

こんなメリットだらけだった中期経営計画ですが、「どうやったらつくれるんですか?」と聞かれることも増えてきました。

このあたり、当時CSO(Chief Strategy Officer)として戦略策定を主導した現COOの福田がnoteにまとめているので、つくり方に興味ある方は見てみてください。

いま、Chatworkがメチャクチャ面白い

さて、中期経営計画の発表から、1年がたちました。

その結果は、CAGR40%という成長目標を大幅に越える、+47.9%の売上成長を実現しました!

計画を立てた当時は、40%成長なんてできるんだろうか、CAGRだから次年度以降でも取り戻せるチャンスはあるよな、なんてことを裏でこっそり思っている部分もゼロではなかったのですが(笑)、蓋を開けてみたら出来すぎぐらいの大達成となりました。

中期経営計画は、正直、計画当時の組織能力を考えると、その目標もそうですし戦略の実行難易度も高い、野心的すぎる計画となっていました。

しかし、その中期経営計画を勇気をもって掲げることで、優秀な方たちに参画していただき、この1年で急激に現実的にやれそうな計画、に大きく近づいてきました。まだまだ、高すぎる計画ではありますけど・・・。

この中期経営計画で採用ペースを大きく引き上げるにあたって、一番最初にやったことは「採用サイトのリニューアル」でした。

その採用サイトに掲げたタグラインが、

「野心と確信」

です。

ちょっと韻踏んでますね(笑)

野心的すぎる計画を掲げつつも、確信を持って実行する、そんな私たちの覚悟を込めたタグラインです。

いままでのChatworkのイメージとは、大きく変わるような内容になっていますので、ぜひご覧いただければと。

https://recruit.chatwork.com/

というわけで、上場してから3年目のChatwork。今が一番、スタートアップしてます(笑)

少子高齢化、労働生産性の低さが大きな課題の日本社会を、根本から変えていくには、もっとも負が大きい中小企業の現場を変えていくしか道はないと思っています。

カッコよくキレイにやれるマーケットではありません。

日本発のDXベンダとして圧倒的に顧客理解を深め、プロダクトとビジネスの力を両輪に、巨大すぎる海外テックジャイアントと真正面から向き合いながら、戦略的に勝ちきってみせたいと思います。

このフェーズのChatwork、メチャクチャ面白いと思いませんか?

Chatworkへの採用エントリー、業務提携、資本提携(CVCはじめました!)など、ぜひお声がけください!

※2022年8月19日追記
Chatworkの採用スライドができました!このnoteの内容もギュギュっとキレイにまとまっている最新版です。ぜひご覧ください!

※2023年8月14日追記
続編を書きました!続きで読んでいただけるとChatworkのイマがわかるかと思います。



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中期経営計画の根本となる、ミッション・ビジョン・バリューについて。Chatworkが実現したい世界観や、組織の価値観などについてまとめています。中期経営計画とも当然、リンクさせています。

私が最終面接で見ているポイントについて。面接は見極めというよりも、フィットの確認だと思って実施しています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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