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新米PI日記 「PIになっちゃいました」

アメリカでPIデビューしました。

「冷やし中華始めました」のノリで大変恐縮ですが、2024年1月からPIとして新しい赴任先での生活がスタートしました。そこでPIになったらどんな生活が待っているのか、今後、PIを目指す方の参考になればいいなと思い久しぶりにnoteを更新していこうと思います。

そもそもPIとは何なのか?私の相棒、ChatGPT 4.0に説明してもらうと、『PIとは「Principal Investigator」の略で、日本語では「主任研究者」と訳されます。研究プロジェクトや実験を主導する人のことを指し、プロジェクトの計画、実行、管理、財務の管理、そして最終的な成果物の発表まで、全体の責任を担います。研究の方向性を決め、研究チームを率いるリーダーの役割を果たします。』ということでした。

ちなみに、アメリカで研究者としてどのように生き残っていくかについては、以前の記事「アメリカに研究者としていかに生き残るか。」を、そしてPIになるには何が必要かについては「アメリカでグラントを獲得する意味」をご参照下さい。

PIになったいきさつ

研究者として渡米し5、6年が過ぎた頃から、今後の自分の研究者としての方向性をいろいろと考えることが増えました。PIとしてアメリカで成功していくことがいかに大変であるかを、その当時のラボのボスの姿を通してひしひしと感じていたため、「PIになって独立したい」という強い希望はあまりもっていませんでした。そんな中で、一番のネックとなっているのは「どうやって研究者としてアメリカに滞在し続けるか」でした。つまり、いかに十分な生活費をかせげるかです。そうなると選択肢は必然的に2つに絞られてきます。

1.出世する
2.グリーンカード(永住権)を取得して副業をする

自分はその当時のラボのボスとも相談して、2の選択肢(とあるベンチャーのコンサルタント)を視野にいれていて2019年からグリーンカードの取得に向けて動き出していました。2022年の6月に無事にグリーンカードを取得し、予定通り2の選択肢の話を進めていましたが2023年5月にそれが難しくなっていくことが判明してしまいます。幸いなことに2023年4月にアメリカ心臓学会(AHA)がスポンサーをしているCareer Development Awardを取得することができたので、それから1の道を選択することを視野に入れ始めました。

人間万事塞翁が馬

私のメインの実験のプロジェクトは心不全を治療するための外科デバイスの開発を手掛けていましたが、それ以外も大動物実験に係るプロジェクトは全て参加していました。その中で、先天性心疾患に対するデバイスを作りたいというボスの要望で、他大学との共同研究で大動物を用いた先天性心疾患モデルを作成するというプロジェクトにもメインの術者として参加していました。幸い、そのプロジェクトについてはある程度まとまったデータが出たので2022年に学会発表も行いました。
そのような中、前述したように独立を狙うのに必要な額のグラントも取れたので、2023年5月くらいから手探りでポジション探しを始めました。通常はウェブサイトなどでポジションの公募を検索して応募していくようですが、私は知り合いの中ですでにPIとして活躍している先生たちにメールを送って面接してくれる人がいないかを探しました。そうすると私が2022年に学会で発表した内容を会場で聴講してくれていた人(とある研究施設でセンター長をしているその領域の有名な研究者)が興味を持ってくれて面接に呼んでもらうことになりました。
私は過去8年において動物実験はラットを使ったものが300匹以上、大動物で450症例くらい経験しており、「この数の動物実験を経験している外科医」の存在は割と稀なようです。また、いろいろな人の協力を得ながら築いてきたネットワークがうまく奏功したこともあり、このようなチャンスを得ることができました。充実した研究実績も大切ですが、「その人の希少性 (技術や研究分野) × 十分なネットワーク」は英語を第一言語としない外国人としては就活をするうえで重要な鍵になると感じました。あともう一つ。研究にしろ臨床にしろ、過去の日本人研究者やフェローなどが頑張っていた施設では日本人の採択率が高い印象を持っています。いろいろな思いを抱えながらも頑張ってきた日本人の先人たちには本当に感謝しかありません。自分もそのような1人になれるように心新たに頑張りたいなと思います。
そしてその後3回の面接を経て、晴れてPIとして今の施設に採用してもらえることになりました。いろいろと大変なこともありましたが、ふってきたチャンスにすべて挑戦してきて本当に良かったなと思えた瞬間でした。

次回はPIポジションを得るために受けた面接について書きたいと思います。

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