「量×質」のかけ算で研究コミュニティの成長を支える
こんにちは、ResearchPort長谷部と申します。
研究者ではない私が、昨年に続き、今年もこのアドカレに参加できてすごく嬉しいです。cvpaper.challenge advent calender 2022 [Link] の14日目の投稿になります。
弊社ResearchPortが、cvpaper.challengeとご一緒させていただいたのは、2021年6月~になるため、ちょうど1年半が経過したところです。我々を一言で表すとしたら……【“タレント(=研究者)”の成功をサポートし続ける“マネージャー”である】と公言しています。
*詳しくは昨年のAC2021の記事 [Link] をご覧になってください。
前回の記事では、黒子から見るcvpaper.challengeの魅力について投稿しました。今年はあれからの1年の備忘録として、行ってきた取り組みを紹介したいと思います。
改めて自己紹介
私どもは、cvpaper.challengeに集う研究者たちの活動を後方支援することをミッションに、コミュニティに関わらせていただいています。後方支援担当としては、研究に取り組むこと以外すべてが支援対象となり、「研究以外の業務はオレたちに任せろ」という気概で、主にコミュニティ運営を行うための各種会議体サポート、外部連携に関する渉外業務、広報活動サポートなどに取り組んでいます。
最前線でチャレンジを続ける研究者を支えて、cvpaper.challengeのビジョンである「コンピュータビジョン分野の今を映し、新しいトレンドを創り出す」の実現のために業務に取り組んでおります。
当初は、とにかくxpaper.challengeが若手研究者の登竜門としてメジャーになってもらいたい、世界で活躍するタレント研究者を育成できるコミュニティになってほしいとの思いで出来ることをいろいろやってみようという感じでした。あれから1年半活動をともにさせていただき、現在はより具体的にビジョンの実現のために必要なことは何なのかと考えながら取り組んでいる状況です。
コンピュータビジョン研究の研究
ResearchPortではAI関連の研究市場の動向を把握することを目的に、コンピュータビジョンや機械学習、ロボティクス分野の重要なトップカンファレンスの定点観測に取り組んでおります。コンピュータビジョンでは、CVPR、ECCV、ICCVを記事としてまとめています。各カンファレンスにおいて、時系列で投稿数・採択数の変化やトレンドキーワード分析に加えて日本人研究者の論文採択状況などを調べています。
CVPR・ECCVともに、投稿数は年々増加しており、コンピュータビジョン領域の競争激化が窺い知れます。その中では、日本人研究者の活躍も徐々に伸びてきているのが分かります。しかしながら、研究成果の市場シェアで見た場合、グローバルでアメリカ、中国の勢いが凄まじく業界のトレンドを牽引しています。研究者ではない私ですが、何とかして日本がトレンドの震源地になれないだろうか、とマネージャー(黒子)の立場から考えています。
黒子の立場から考えた「トレンドの震源地」になるためには、如何に研究の【量と質】を持続的に高めることに貢献できるかを考え、実行していくかが重要だと思いました(めちゃくちゃ営業やマーケティング的な視点です)。そのためにResearchPortが行っている取り組みを少しご紹介します。
「量」の向上につながるコミュニティ拡張活動
年2回開催されるcvpaper.challenge Conference(CCC)も2022年12月で4回目となりました。毎回、学術界と産業界からお申込みいただき1,000名近くの方々にご参加いただいております。ResearchPortは、広報面において広報ツール作成とプロモーションサポート、運営面では申込情報管理や顧客対応サポート、イベントコンテンツ面では登壇者のキャスティングサポートに携わっております。キャスティングサポートでは、主にcvpaper.challengeコミュニティとの産学連携をテーマに、イベント登壇者の発掘・交渉・調整などを行っております。
CCCのイベントはcvpaper.challengeの研究活動を外部に発信していく貴重な機会と考えており、個人的には、本イベントをきっかけに、一緒に共創していく研究者仲間が増えたらいいなと思います。まだまだ始めたばかりですが、CVコミュニティの新たな裾野を広げていく取り組みとして、まだ接点がない大学の研究室や、企業研究機関へのイベント案内を進めております。
このコミュニティは有志が集い共に研究する場です。ご自身の所属する環境にない要素を補完し合える場としての魅力があります。トップカンファレンスでの採択実績を持つ研究者たちがメンターとしてサポートいただける仕組みがあり、また同じ目標に向かって切磋琢磨出来る研究仲間がいます。そして何よりも魅力的なのが、チャレンジを互いに温かく支えるカルチャーがあります。サポート側からの視点で恐縮ですが、研究活動は孤独な作業が続くからこそ、持続的なモチベーションや、課題を突破していくキッカケがたくさん必要だと感じています。そのような機能がここにはあるように思います。だからこそ、「もう一度研究に取り組んでみよう」「トップカンファレンス……チャレンジしてみよう」という方々と共創していく可能性があると思いお声がけを進めています。
日本国内でも素晴らしいCV研究者・研究チームは多くいます。トップを決めるのは非常に難しいところです。ただ、「産学官の隔たりなくチーム組成し、かつ全員がボランティアで、志のみで繋がり、当たり前のようにトップカンファレンスを目指す若きオールスターチーム」という点においては、間違いなくこの組織は国内トップだと断言できます。
「質」の向上につながるコミュニケーションサポート
片岡さんが投稿された12日の記事内 [Link] で、よい研究チームの在り方として「チーム全体がお互いをリスペクトし特性を理解して、密なコミュニケーションをとりつつ改善を続けている状態が良いチームであり、健全な姿である」とのコメントを発信されていました。私自身思うことですが、皆が本当に互いをリスペクトしている一方で、リアルな接点がないと特性理解にはどうしても時間がかかってしまうことが、研究室という”基地”を持たない組織の難しさだなと感じています。
cvpaper.challengeの研究コミュニティはさまざまなバックボーンの研究者で構成されています。大学の研究室に在籍されるPh.D・博士・修士・学部生の方々や、教授先生、国の研究機関の研究員の方、企業の研究者や技術者など多彩な顔ぶれです。ここ数年はコロナ禍の影響もあり、皆さんWeb会議や情報共有ツールを活用したオンライン環境で研究活動をされています。コミュニティ内ではさまざまな研究プロジェクトが進行し、メンバー間のインタラクションを誘発するような工夫をトライしています。それでもやはり横断的に人が交わる機会はどうしても少ない状況に見えました。加えてcvpaper.challengeコミュニティをワンチームとしてみた場合、前述したメンバー間の特性理解はもっと何か出来る余地があるのではと感じます。
黒子側から見ると、ここは多彩なタレントが集まる場所なので、コミュニティ内での雑談、コラボレーションがもっと活発になるといろんな奇跡が生まれそうで面白いなと思っておりました。そこでまずは、互いを知るきっかけを作り、メンバーに興味を持つネタ提供をしてみようということで、cvpaper.challengeメンバー限定(一般非公開)の研究者検索サイトを作成しました。
メンバーの顔写真やプロフィール情報と一言コメントを集めWeb化し、参加者がコミュニティにいる研究者のことを知るきっかけ作りを目指しました。意外にも、各メンバーのプロフィールシートを作成してみるとzoom画面だけでは気付かなかったことがたくさん出てきて正直楽しかったです。サイトを制作し眺めていると、不思議と顔が見えるだけで今まで以上に温かさを感じるようになりました。まだまだ改善が必要ですがコラボレーションサポートを通じてコミュニティを盛り上げることに貢献していける可能性を感じています。
そして雑談には今後の活動をよりよくするヒントがたくさんありました。雑談を通じて仲間をより深くすることができ、どんなサポートがいいかアイディアが沸き、そして改めてビジョン実現に向かうモチベーションが上がりました。リモートワークを駆使したワークスタイルが進化しましたが、対面でのコミュニケーション、顔が見えるコミュニケーションはなくせないと実感した次第です。
今後のcvpaper.challengeへのサポートについて
ResearchPortとしてのコミュニティサポートは、まだ1年そこそこの活動なので、これからが本番だと思っています。試行錯誤の途中ですが、今後我々は以下のようなテーマに取り組んでみたいと思っています。
若手研究者の登竜門としてのポジション確保
最近、今まで以上に若手の研究者(学生さんなど)からコミュニティに参加したいとのお問合せが少しずつ増えて来ているように感じます。研究者のキャリアを考える上で、トップカンファレンスへのチャレンジがさまざまな価値をもたらすと思います。cvpaper.challengeをきっかけに、本格的に研究をはじめ主要トップカンファレンス採択を実現させた方々がいます。産業界では、研究と実装は全然違うとの声もありますが、そもそも若手のうちにトップカンファレンスに論文を通した実績を持つ人材の市場価値がとても高いです。特に貴重な学生時代にこの経験が出来ることにとても意味があると思います。
全国のCV関連の研究や勉強をしている方の人口を考えると、もっとチャレンジャーが生まれてもおかしくないはずだと考えています。コミュニティ運営サポート側の立場で、若手研究者のチャレンジを促進する取り組みを加速していきたいと思います。そのためにも現在試行錯誤段階ですが、産学連携推進にも注力していきたいと思います。
コミュニティパフォーマンスを向上させる機能強化
黒子として重要な使命が研究者の活躍支援です。現在cvpaper.challengeの組織は成長段階にあります。そうなると必ずさまざまな調整機能が必要になります。主に、ここに集う方々が活躍できるような環境づくりです。これから今まで以上に研究サポートチームの拡張が必要になってきます。ResearchPortでは、仕組み面でのサポートも進めつつ、中期的には研究者を支えていくスタッフ部門を、人的リソース面でも強化し貢献していく必要があると考えています。非営利組織のバックアップチームの在り方について模索していこうと思っています。
cvpaper alumniの活性化
過去にこのコミュニティに貢献いただき、大きな成果を上げた先輩方のおかげで今の組織が成り立っています。その先輩方は、企業研究所で実践的なスキルを獲得した方、教員として研究マネジメントを磨いていらっしゃる方など多様です。このような方々が息抜きがてらふらっと帰省してくれて、盛り上がった流れで研究スタートできるようなそんな座組があっても良いのではないかなと妄想しています。
来年もチャレンジが続きますが、メンバーの皆さまや協力いただいている関係者の皆さまには今後ともご指導ご鞭撻いただけたら幸いです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。