オムニバス的な雑記
千葉直也と申します.
今は大阪大学 D3センターの浦西研究室で准教授をしています.主な研究の興味は3Dデータ処理・非構造データ処理で,特に点群データ・Neural Field周りの技術に興味があります.
最近は応用先のアプリケーションを広げることを目指していて,ロボットビジョン,材料科学,計算力学などに各分野の専門家と一緒に取り組んでいます.というわけで,どちらかというとCVでの3D関連の技術を他分野に展開することを目指しています.
二年ぶりにお誘いをいただき,記事を書くこととなりました.相変わらずこういう記事を書くのは不慣れなので,読み苦しい点などあればすみません.
何を書くか
お声がけしていただいたときに
ということで何を書こうか悩んでいたのですが,オムニバス的に色々残しておこうと思います.
ちょっと前に作った資料の共有
一年くらい前に作ったNeural Fieldの導入的な資料です.いい機会なのでこのタイミングで世に出しておきます.
誤りなどあればぜひお知らせください.
Neural Field面白いですよね.もちろん普通にNeRFをレンダリングするのも面白いですが,メタい視点での研究が大好物なので,「それをFieldだと思ってNeural Fieldで記述したか!」みたいな研究事例が好きです.
続・毎日やるという話
背景
前回cvpaper.challengeのアドベントカレンダーに参加した際の記事を読み返してみると,「毎日やるという話」を書いていたので,答え合わせしてみようと思います.
2022年の記事はこちらです.
この記事内で,僕は「コツコツタスクが苦手な人がコツコツタスクをこなすための提案として,毎日やってみるというのはどうでしょうか」と提案していて,具体例を挙げていました.
2022ver提言のおさらい
具体的な達成目標を各日に設けること
具体的な達成目標に対してチートをできないようにしておくこと
反省
2年かけて継続できたか反省するのにちょうどいいので,振り返ってみたいと思います.
論文のサーベイ
案外安定していて,2019年夏からアベレージで毎日1本以上読み&簡単にまとめ続けることに成功しています.たまに間に合わないときには数日分まとめて読むこともありますが,継続できているので良い方です.
トップカンファに通った論文リストやarXivからのキーワード検索でのリストをがさっと作っておいて,一本ずつ進めている感じです.
特に他の分野の研究に3D関連の話を持ち出そうとすると,有望そうな方法をたくさん知っておくことが生きてくるケースがよくあります.そのための基礎トレみたいなつもりです.
当然これだけだと不足なので,テーマを決めてガサッと読んだり,他の方の記事やスライドで勉強させてもらったりも同時に行います.サーベイするのは毎回なかなかしんどいんですが,例えば読まないといけない論文リストを作ったときに数割は自分がメモを作っていたらちょっと嬉しいですよね.
もちろん読んだ内容は結局忘れるので,検索で引っ張り出せるようにしておくことが後々重要です.現状だとキーワードのブレなどがあって若干困っているので,たぶんLLMとか使ってまとめ直したりすればいいのかな,と思いつつ,まだ何も着手していません.
(Cf. https://github.com/cvpaperchallenge/Crux )
余談ですが,サーベイとタスク管理,その他諸々は自分の手元のObsidianで管理しています.
例:https://twitter.com/n_chiba_/status/1785701430277652911
勉強
コロナ自粛期間だった数年前から,ぼちぼちと数学の勉強をしています.こんなことを書くのも恥ずかしいですが.
何度も自分の数学力の無さに絶望してきたのですが,目の前の論文に現れた難しい数学やTLに現れるかっこいい数式を追いかけて,結局何もわからないという経験を繰り返してきました.(未だにそういうことは頻繁に生じています・・・)
cvpaper.challenge内の勉強会でパーシステントホモロジーを勉強していて,教科書の完走まではしたのですが,その後勉強をなかなか継続できず・・・.今更ですが,一緒に本を読んでくれた各位には大変感謝しています.数式から逃げてきた自分は,あの勉強会で学び方自体を学ぶ必要がある,ということを痛感しました.
前回の記事で現れた「友人」氏が数学科博士だったりしたこともあり,数名でオンラインで数学の勉強会を始めました.2022年始から開始していて,気の合う友人達と週1で継続できています.形式は色々変わってきたものの,最近は月1担当ペースで各々が教科書を読んで,お互いツッコミを入れてもらっています.
ちなみに自分は2024年入ってからトゥー多様体を読んでいて,最近セクション3まで来ました(※なお全29セクション+付録5セクションなので,9年ほどで読み終わるペースです).ゆっくりとですが,数学の教科書の読み方を教えてもらっているところです.
ずっと数学できないコンプレックスがあって,未だにあるのですが,まずは学び方を勉強できているというのは継続するという意味では良いことなのかな,と思っています.
こちらもメンバーに恵まれ,信頼できる人と一緒に勉強できること,そして勉強会の目標を「継続すること」に置いたことが功を奏しているようです.関連各位,いつもありがとうございます.
反省としては,勉強のための程よい「一日単位のタスク分割」がまだできていないことです.そのため,まとまった時間で予習&復習になってしまい,コツコツタスクとして実装できていない感があります.
楽器
ギターは全然触れてないですね・・・.ベースはちらほら.
物理出勤になったことが大きいのですが,まぁ言い訳ですね.
毎日やる系教則本をやっている期間は続けられたのですが,終わったら触れなくなっちゃいました.よくない.
毎日やるという目標は悪くないと思うのですが,「ゴールがあるからそこまで毎日やるぞ」という形式だと,ゴールを達成したらやめてしまうかもしれない,ということが学びです.
ダイエット
失敗しました.失敗し続けています.悔しいけどご飯美味しいんですよね.年を取ったら痩せにくくなるというのは本当だと思います.ただ,年を取ったら油っぽいものが食べられなくなるというのは人によるんだと思います.少なくとも僕はまだまだ大好きです.
完全に私事ですが,1年後に結婚式の予定(入籍は去年)なので,ここからなんとかしなければ...
執筆
あまりまとまった分量の記事を書く機会がなかったので,コツコツタスクとして実装する機会はありませんでした.
強いて言えば,持っているタスク全体量が徐々に増えてきたので,雑用的タスクをこなしながら構想しておいてまとめてなにかを書く,みたいなのは慣れたかもしれません.
反省を踏まえて,2024ver提言
毎日やる,そのためにチート対策をしておくということは有効です.戦略自体は悪くないと思います.
弱点として,目標を達成したらやめてしまうということ,また辞めかけたときにどうやって継続するか,ということが気になります.
踏まえて,2024年verの提言をしてみます.
具体的な達成目標を各日に設けること
具体的な達成目標に対してチートをできないようにしておくこと
忙しくてやめそうなときに,戻ってくるためのきっかけを用意しておくこと(月一で再開のチャンスをつくっておくとか)
ゴールを達成したら次のゴールを設定する,あるいは終わらない目標にしておくこと
次に見直すのは何年後になるのか,,,.自分も継続頑張ります.
引っ越しライフハック
背景
博士取得後,割と頻繁に引っ越しをしています.最近も大阪に引っ越してきたところなのですが,
2020/03: 仙台 → 東京(大久保)
2021/12: 東京(大久保) → 東京(西東京)
2023/03: 東京(西東京) → 仙台
2024/08: 仙台 → 大阪
という感じで,割とハイペースに引っ越しをしています.若手研究者の宿命ですが,自分もまだパーマネントではないので,今後もまだまだ引っ越しが続くと思います.
これだけ引っ越してるとだんだん慣れてきました.一応研究者目線ということで,将来の自分のためにも引っ越しライフハック的なことを書いておこうと思います.
基本戦略
すぐ使うものをすぐ展開できることを最優先に
梱包作業はスタックをイメージして,使わないものから順番に
インターネット環境の確保
ライフハック
インターネット環境を確保
インターネットがなければ仕事になりません.ので,新居で即PC作業できるようにインターネット環境を準備しておきます.(ラップトップ派の人はノマドすればよいですし,フライングして職場に行っても良いと思いますが.)
自分はSoftBankの回線を使っているので,SoftBank Airを引っ越しのときに借ります.ポケットWifiなどでも良いと思います.
これで引っ越し先ですぐに作業再開できます.幸せ.
SoftBank Airで間をつなぐ場合の注意点として(ちょうど今回の引っ越しでやらかしたんですが,)いつ申し込んだとしてもSoftBank Airの機器は回線切替の直前に届きます.しかもいつ届くかは問い合わせてもわかりません.特に引越し日前日までネット回線を使うような想定だと,引っ越しが終わってから機器が届いたりします.既にそこに私はいません.
どれだけ早めに申し込んだとしても,届くのは直前です.忘れずに受取を新居にしておくことを忘れないようにしましょう.また,自分から問い合わせないと到着日がわかりません.待たずに即問い合わせましょう.
段ボール開封優先度
すぐ仕事を再開するためには,最低限の作業環境を短時間で再構成することが大切です.一日に段ボールを何箱開けれるかを見積もっておいて,作業環境と寝床だけは確実に構築するようにしましょう.
カーテンとか枕とかマイクとか忘れがちなので注意.
上記に限らず,段ボールの開封の順序を作っておくことをおすすめします.経験上,やることが多くて開封作業の方が疲れがちで,宝探し状態で使いたいものを探すのは避けたいところです.
これは一般論ですが,段ボールには中身を書いておきましょう.そしてついでに開封順序を書いておきます.例えば「到着した日に開ける」,「翌日までに開ける」,「数日中に開ける」,「週末で開ける」,「欲しくなったら開ける」みたいな.頭を使わずに順番に開けたら良いようにしておくのが重要です.コツは,何であるか(例:PC周りの機器,衣類,消耗品など)よりも,いつ使うかを優先してまとめることです.
ちなみに,引っ越しの気晴らしになるものも開封計画の早め段階に含めておくといい感じです.自分はたまにオタマトーンで遊んでいるのですが,いいストレス発散になりました.
書籍の引っ越し
一つの段ボールを本だけで埋めてはいけません.毎回反省していながら今回もやらかしたんですが,今回でついに腰を痛めました.本ギッシリの重い段ボールを作ってはいけません.
また,引っ越し後にすぐ使う本とそうでもない本があると思います.優先度を付けて,逆順で梱包 → すぐ使う本を早めに出す,というのが大事です.
書籍の優先度も合わせて書いておくと良いです.
PCの引っ越し
周辺機器は取り外し前に写真を取って,全部同じ段ボールにまとめてしまいましょう.付箋などで接続をメモるとつなぐときに楽です.配置などが違うと絶妙に使いにくかったりするので写真を見ながら復元するとよいです.
うまく起動しないときには焦らずにグラボ抜けたりしてないか確認しましょう.今回焦りました.
データは複数手段でバックアップしておくことをおすすめします.一回だけですが引っ越しでHDDが壊れました.
PCが動いてネットが使えるようになれば,研究が始められます.やったね.
学会関連の住所登録
これは失敗談で,未だに東北大にちらほら学会誌などが届きます.関係の皆さまお手数おかけして申し訳ありません..
(学会周りに限りませんが)引っ越しが決まった時点から何が届いているかを記録しておき,住所変更が必要なリストを作成する良さそうです.もっというと,本来は入会している学会のリスト等を持っておくべきです.
研究費・物品の移管
粛々とすすめるだけです.双方の事務に連絡して,必要に応じて郵送します.早めに動くのが吉.
今回は異動先の浦西先生に郵送した物品を受け取っていただき,研究室での研究環境の立ち上げもスムーズに進めることができました.ありがとうございました.
その他(ただの引っ越しライフハック)
着替えなどを数日の出張のつもりでスーツケースに入れておくと,最悪ケースでなんとかなる
トイレットペーパー,タオル,ティッシュ,石鹸,綿棒,爪楊枝,軍手,ハサミ,カッター,ビニールひも,電源タップ,懐中電灯,電池,予備のスマホ充電器,ヘッドホン,歯ブラシあたりをまとめて一つにしておくと良い
お土産を早く買いすぎないように.萩の月はそんなに保たない
引っ越し前後は消化の良いものを,多分そばとかが良いと思います.ラーメンとかはハイリスク(でした).
移動日にホテルで暇なら,Amazonの住所登録などをしておくと良い
クーラーの手配を確実に
カーテンを忘れない
最悪,博士学生時代を思い出せば段ボールでも寝られるということを思い出す
余談:最大の反省
今回の記事での最大の反省は,お声がけしてもらって,いま熱量を持って特に書きたい事項が思いつかなかったことです.
仕方なく前回の記事を見返して,それをヒントとして書いてみました.が,これは消極的ですよね..数年前なら「最近やったこの研究を紹介したい」とか「このアイデアが面白いから紹介したい」とか,なにかしらもうちょっとアツいものがあった気がします.
何を書こうか思案していたときに,他にも「30過ぎたアカデミア研究者ライフの悩み事」「なぜアカデミアに戻ったのか」「専門家になったが一流になれなかった研究者の生存戦略」「共同研究に漕ぎ着くまでのさまざまなハードル:東北大学・失敗編」「Google Form & Google Spreadsheets & GASで小規模学会の投稿システムを作った話」「なぜ東北大学ではOKだった同人活動が大阪大学ではNGなのか」みたいなのを書こうかなとも思ったのですが,書いても誰にも得がないとか,書いていいか微妙だったりとかでやめました(興味があればなんかで会ったときなどに聞いて下さい)
今回「続・毎日やるという話」で書いたように,淡々とこなすことが技術であるのと同時に,熱量を持って一気に取り組むというのも技術なのかもな,と思っています.
まだ枯れた事を言い出すには早すぎるので,ここから気合入れ直して頑張ります.
追記1
今回のアドカレ,12/9の福原さんの記事って読みましたか?まだ読んでない人は読んでください.
cvpaper.challenge ALUMNI構想,面白そうですよね.ぜひ実現してほしい・・・!
福原さんは自分と同世代なんですが,学生時代からずっと狂った仕事量を続けている方です(という認識です.)そしてまだ続けているようです.すごすぎる.
もはや熱量の差とかじゃないのかもしれないですが,やっぱりまだまだ自分も頑張らないとな,と思わされました.
追記2
とはいえ,一通り反省パートを書いて読み直してみて,じゃあ何もやってないのかというとそんなことはないという気もしています.
自分が最近何をやってるのかと考えてみると,ここ数年では趣味と仕事がどんどんグラデーションになってきたような感覚があって.伴って,いつ芽吹くかわからないことに時間やコストを割くのが楽しいと感じるようになってきました.
成果になるかどうかではなくて,楽しいから・趣味として取り組む,それが数年後に案外返ってくる,みたいな.
修士~博士くらいのころになんとなくやっていたことや趣味が,思わぬ形で今役立ったりするケースがちらほらあり,回収時期を設定しない伏線をたくさん張っておくのが楽しいなと思っています.
最たる例がたぶん教育で,到底自分が回収することがない伏線張りができると思うと,本当にワクワクします.
いま,単に楽しいから取り組んでいるいろんなことについては,回収できる時が来たたらどこかで紹介できれば,と思います.
執筆の機会をもらって,cvpaper.challengeに参加した学生時代の無鉄砲さをちょっと思い出せて良かったです.
これからも淡々と,時に熱量を持って,いろんな活動をやっていこうと思います.