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歌う

家族のことを誰にも話してはいけないと
母が居なくなったことは、恥ずかしいことと、思っていた。


家も汚れて、荒んでいる
幼い弟は、独り田舎に預けられ、兄弟もバラバラに暮らしてる。

誰にも見られてはいけない。
隠さなきゃと思っていた。

今まで、誰にも事情を話したことがなかった。
だから、路瑠の事情を誰も知らなかった。


自分一人で頑張っていた。路瑠も。お父さんも。


いつも、クールを装って
今ある現実に背を向けて、

私達家族は大丈夫、あなたには関係ないことと
独り壁をつくっては、泣いている。

自分自身の状況に蓋をして
素知らぬ顔でやり過ごそと、

「何もありません」とうそぶいている。


でも、そんなことには無理がある。
もし隠し続けていたのなら、心が壊れていただろう。

路瑠は歌う、
歌うことが好き。

蝶々がひらひら舞う様に、
路瑠も踊りながら歌っている。


暖かくなったのは、日差しだけでなく
みんなの『まなざし』も温かくなった。



路瑠に向けられる目は、柔らかく

路瑠の心も解けていく。



「路瑠ちゃん、歌のオーディション受けに行かないの?」と
声をかけてくれたのは、音楽の先生。


市立小学校だけど、コンクールに出場する程の腕前だ。

出場できるのは、選ばれた子だけが歌える、花の舞台。


オーディション課題曲は

『おぼろ月夜』

菜の花畑に入り日うすれ〜♪

見渡す山の端

かすみふかしぃ〜♪


路瑠は渋い曲を見事に歌いきり、合唱団に選ばれた。


先生は、「歌の上手さだけで選んだのではないのよ」と言っていた

先生は、路瑠の気が紛れればと誘って下さった。


合唱団は3年生から6年生までの20人ほど
朝は早くから朝練して。放課後も残って歌の練習。

路瑠は毎朝早く起きて、誰よりも早く学校に行った。

歌をうたう路瑠は声を出して弾けだし、
歌声で、歌詞にある思いを心を籠めて表現することは、
何より楽しかった。


心が泣いていた時間は、もう、終わりだ。

子どもらしい時間が
時を戻れとばかりに動き出す。

人は、何かを表現したいのかもしれない‥。

マイナスの感情だって、出さないよりかは、出した方がいい

何かをずっと溜め込んでいたのなら、きっと心が壊れちゃう。

出した方がいい? いや、出さなきゃダメなんだ。




子どもが一生懸命泣いている。

受け手も、受け止めきれなくて、泣いている。

近い人ほど、泣いている。

一緒になって泣いている‥。

もしかしたら、

受け手は、少し距離があった方がいいのかもしれない。

受け手を支える人も必要。

誰かに、『たすけて』のサインを出せた路瑠は

ラッキーだったの?

第5話  ↓ ちょっこっと、コラム ↓

いいえ、
これはラッキーとかアンラッキーの話しではありません。

困った時
苦しい時
子育て、介護、病、障害などで悩んでいる時

友人知人に相談することもできますが、

行政も皆様のために様々な繋がりを持つ努力をしております

『こんなこと言ってもいいのかな?』
『努力が足りない?私…』などと思わずに。


もし、子育てのことでしたら、地域の保育園などに、
どうぞご遠慮なくご相談ください。

保育園は、地域の子育て中のママさんパパさんの
サポートをすることも仕事なのです。

お子さんを預けてなくても大丈夫です。
必要を感じたら、いつでも門をたたいて下さいね。

保育士は、親御さんのために、何かのお役に立ちたいと願っております。
いつでもお持ちしております。

保育士 路瑠からの お願いです。



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