路瑠ってどんな子。
投稿作品『僕の中に路瑠がいる』の番外編です。
路瑠が小学校の頃、保育士になりたかった思いを書いた文章です。
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思えば路瑠は小学校の頃から、
自分より幼い子ども達と遊ぶことが大好きでした。
近所の子ども達も「みちるちゃんあそぼ」と来てくれた。
子ども達みんな、家の人が夕飯の支度で構ってもらえない時間、
車の通りの少ない路地裏は子ども達が集まって遊ぶ格好の場所
そこに行けば、いつも誰かが誰かと遊んでいる。
その輪の中に入れば誰でも、もう仲間入り。
路瑠は子ども達と一緒に、虫編み片手に蝶々やトンボを捕まえて遊んだ。
アリの巣がどこまで地面の下に伸びているのだろうとイタズラに掘り進んでいった、結構深くまで掘っていった。すると黒い働きアリが大量に我々の脚にかじりついてきた『痛い、痛い、痛い』もう必死。アリも必死だった。
アリの猛反撃にみんなで大慌てしたこともある。
アパートの外階段をステージにして2人3人がアイドルになり
ちびっ子観客を目の前に振り付きで歌を熱唱したり
鬼ごっこ、かくれんぼ、探索、冒険などなど
工場にこっそり入り込んで、隅に秘密基地をつくった。
大人に気付かれてないと思っていたけれど、きっと大人が見逃してくれていたと思う。夕暮れまでどこまでも道を真っ直ぐに歩いて行き
「帰りがおそい」と叱られた夕飯前。
いつもみんなと一緒に面白がって遊んだ記憶。
小学校の卒業文集には『将来の夢は幼稚園の先生か保育園の先生になりたい』と書いた程、天真爛漫の路瑠だった。
だけど父と母が不仲で喧嘩が絶えない家だった。
2Kのアパート風呂無し家族5人の質素な暮らしでも
時折家計が苦しくなり、電気も水道も止まったこともあった。
その度母さんは家を支えるため『夜のお仕事』向かう。
母がいない夜がどんなに心細かったか。
母が蒸発して家にいない時期もあった。
いつまでも帰ってこない母を思い、
メソメソと泣いているとひどく父に怒られた。
ある日父が見ず知らずの女の人を連れて来た。
「こんにちは、みちるちゃん」と言う女の人の顔をみて、
新しいお母さんになる人なのかなぁとボーと見上げた記憶。
結局父は、母を探し出し、母は家に戻ってきた。
そのあと家の都合で転校し、その学校でいじめにも遭った。
だから路瑠の心はどこか淋しさで欠けているところがある。
いつも心のどこかで『普通の家族になります様に』と祈っていた。
夢見る空想癖はこの頃からだったのかもしれない。
路瑠が保育士を選んだのは、ただ子どもが好きだからと言うだけでなく
『心から子どもの味方になりたい』と願ったから。
夢が叶って保育士になった今
幼かった時のトラウマに縛られてしまうことがないように
いつも心がけていることは、
『子どもと向き合う前には心を整えてから保育する』
『心は言葉使いや態度に表れるから』
路瑠へ
保育の学びがあったから日記に書いておくよ。
いつまでも忘れないようにね。
あなたの心のどこかが、どんなに欠けていても
完璧でないから出来る優しさもあるんだよ。
時折保育士であることが辛いと思ってしまうのは、
子どもに何かをしてあげたいと願っているから。
欠点があるからこそ気づける長所もあるんだよ。
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この後、路瑠と園長先生の会話になり、
子育てを支援することは…と続きます。
機会がありましたら投稿したいと思います。
次回は、路瑠の元カレの話の予定です。
どうぞお楽しみに。
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