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追悼 アラン・ドロン、メディアを通し、年齢相応の姿を魅せ続けた。

*画像は、「メンズウエア100年史」
株式会社 スペースシャワーネットワークより。

アラン・ドロンが、88歳でこの世界からいなくなって1週間、8月18日、仏中部ドゥーシーの邸宅で、娘のアヌーシュカ、息子のアラン=ファビアンと異母兄弟のアントニー、愛犬のルーボに囲まれて、息を引き取ったそうだ。

アラン・ドロンを知ったのは、1970年代のテレビのロードショーを通してだった。当時、夜9時から11時の時間帯に、週に4回、映画を放映していた。

解説は、月曜日 荻昌弘、水曜日 水野晴郎、金曜 高島忠夫、日曜日 淀川長治、だった。テレビの録画機能も、レンタルショップも、インターネットもないので当然、配信サービスもなかった。

アラン・ドロン映画を見るためには、ロードショーをやっている時間帯に、テレビの前に座っているか、映画館に行く以外に方法はなかった。

最も古い記憶のアラン・ドロン映画は、フランスの名優ジャン・ギャバンと共演した「暗黒街のふたり1973年仏伊」だった。テレビのロードショーで、家族揃って息を詰めて観た記憶がある。

銀行強盗の前科があるアラン・ドロンは、真っ当に生きようとするけれど、昔の仲間に翻弄されたり、彼を信用しない警部の執拗なやり方に怒りを爆発させ、殺人を犯してしまう。かつての保護司ジャン・ギャバンや弁護士が、死刑にならないで済むように奔走するが、結局、死刑を宣告される、冤罪と死刑問題を扱った映画。

死刑実行の直前に振り返る、アラン・ドロン当時30代後半に、団子っ鼻の名優ジャン・ギャバン当時60代後半が、頷いてみせ、刑執行の瞬間に、映画は終わる。フランスでは、1970年代までギロチンによる斬首刑が行われ、1981年、死刑制度が廃止された。

アラン・ドロンが、両腕を後ろに固定され、ギロチン台に、かけられようとする直前、ジャン・ギャバンを見つめるドロンの真っ青な目を観た瞬間、体中の血が湧き上がってくるような感情に揺さぶられた。

以降、アラン・ドロンは、世間へ向けた自分の見せ方の、指針のひとつになった。どんな風に見られたいか、どうカッコよくありたいか、どうキレイだと、思われたいか、という曖昧な願望に対して、確かな答えを出してくれる存在だった。そういう人が、わたしと同じ世界からいなくなった。とても寂しい。

とは言え、わたしはオンナ、アラン・ドロンに匹敵するような女性のロールモデルを探したこともあったが、見つからなかった。

具体的に、どんなイメージを、漠然と思い浮かべているのだろう、と思うと、小泉今日子、小林麻美、ジェーン・バーキン、「パンクの女王」ことパティ・スミス、が浮かんできた。他にもいるがすぐには思いつかない。

わたしが惹かれる人は、年齢に逆らわない、あるいは、逆らってはいるけれど、自然に老化しているように見える、ことを好む人たちだ。

きっちりメイクアップをしている浅丘ルリ子も、大好きな女優だ。昔の出演作は、ほとんど見たことがない。

でも、テレビ朝日系列で、お昼の時間帯に放映していた、倉本聰 脚本の、俳優、作家、ミュージシャン、アーティストなど、テレビの全盛期を支えた人だけが入居できる架空の老人ホーム、を舞台にしたドラマ「やすらぎの郷 2017年」と「やすらぎの刻〜道 2019‐2020」で、現在進行形の浅丘ルリ子をコミカルに演じている姿を追っているうちにファンになった。

彼女のひび割れんばかりのメイクアップが、大好きだ。厚化粧がこれほど似合う人はいないと思う。

メイクアップしようがしまいが、本人のキャラクターと思いが一体化しているような「顔のつくり方」が好きだ。年齢を重ねて皺だらけの晩年のジェーン・バーキンやパティ・スミスも好きだ。

素顔が想像つかないほどのメイクだろうが、メイクのかけらもない顔だろうが、本人の信条と一体化すると、説得力のある、ある種の威厳が生まれる。

年齢を重ねるに連れて、顔と服の着方は、生きてきた重みと思想が反映される。そうやって勝ち取った美しさが、後年のアラン・ドロンにはあった。

60年代、70年代以降のアラン・ドロンのルックスは、作り上げられたものだと、わたしは思う。前妻の女優ナタリー・ドロンとの間に生まれたアントニー・ドロン、

オランダ人モデルのロザリー・ファン・ブレーメンとの事実婚で生まれた、アラン=ファビアン・ドロンも、父親の面影があるが、俳優が後年身に着けた視線、仕草、経験値までは引き継げない。

とは言え、8月24日の葬儀、数日前に撮られた、二人の息子の歩く姿が、父親のスタイル、歩き方にそっくりで、ゾクっとした。血は争えないものである。シャツのボタンを2つ3つ開け、胸元のVゾーンを、あくまでさり気なく強調、典型的なフランス人男のスタイル。

https://www.youtube.com/watch?v=7GMJ17oVnk0

引用元:AFP通信公式「Obsèques de Delon: ses fils viennent saluer les admirateurs de leur père」

アラン・ドロンの、若い頃の輝くような美貌は、徐々に老化し熟成した。

この人は、ジャン=ポール・ベルモンド、ヴァネッサ・パラディと共演した1998年「ハーフ・ア・チャンス」以降は、映画には出ていない、

*と思ったら、フランスのコミック「アステリックス」を実写映画化した「アステリックスと仲間たち オリンピック大奮闘2008年」があった…

その後も、舞台、テレビインタビューなど、メディアの露出は多く、検索すればインタビュー映像など、現在進行形のアラン・ドロンを見ることができた。

2019年のカンヌ映画祭、名誉パルムドールを受賞した年に、脳卒中を起こし、2021年、ジャン=ポール・ベルモンドの国葬に、杖をつき、黒のマスクを顎にかけて、カメラに向かってにっこり笑うアラン・ドロンがいた。


◆Wikipediaより、生涯に主演した映画、ドラマのリストを張り付ける。

でも、その前に、わたしが観た映画のご紹介。テレビ映画、レンタル、配信サービスがほとんど、映画館は数えるほどだ。

まず、内容をなんとなく覚えている映画から。

1960年 太陽がいっぱい
映画館で1回、レンタルなどで3回くらいは観た。アラン・ドロンのシャツとパンツスタイルに途方もなく影響を受けた。ポイントは、フレンチスタイル=ノンシャラン、頑張ってる感=ゼロスタイル。

1960年 若者のすべて
1962年 太陽はひとりぼっち

1963年 地下室のメロディー
ジャン・ギャバンと共演した白黒の犯罪映画。映画館で一回観た、ストーリーは覚えていないけれど、見応えがあったことだけ覚えている。

1967年 冒険者たち
アラン・ドロンの歌う曲「レティシア」の声の響き。レティシアは、ジョアンナ・シムカス演じるヒロイン。走り回るアラン・ドロン!

1967年 サムライ 殺し屋アラン・ドロンのトレンチコート!

1968年 あの胸にもういちど
過去に何度も眠りかけた作品、しかし、今年に入ってAmazonプライムで筋を把握。イギリスのポップアイコンでミック・ジャガーの恋人だったマリアンヌ・フェイスフルが、裸で革のライダースーツを着てハーレーで疾走する。こんな素晴らしい映画だったとは。若い頃のわたしって、何を見ていたんだろう。

1968年 さらば友よ 
チャールズ・ブロンソンとアラン・ドロンの犯罪映画。アメリカとフランスを代表するスターが共演。対照的な二人の魅力と演技力に魅せられる。

1968年 太陽が知っている 
モーリス・ロネ、アランドロンの元婚約者のロミー・シュナイダー、ジェーン・バーキンが共演。南仏のプール付き別荘で繰り広げられるロマンチックなサスペンスミステリー。このリスト中で一番好きな映画。

プールサイドのフレンチスタイルの朝食、モーリス・ロネが、パンにジャム、バターを塗る仕草、かつての恋人同士だったロミー・シュナイダーとアラン・ドロンのラブシーン、ジェーン・バーキンの小悪魔的な魅力、妄想フレンチスタイルが全てここにある。

1970年 ボルサリーノ 
ボルサリーノはイタリアの有名な帽子メーカー。ジャン=ポール・ベルモンドと共演した暗黒街を舞台にしたギャング映画。2人の殴り合い、歩き、喋り、コミカルな躍動感に痺れる。

1971年 レッド・サン 
三船敏郎と共演。意外にもアラン・ドロンより、三船敏郎のサムライぶりに痺れた。

1971年 帰らざる夜明け
メグレ警部で有名なフランスの推理作家ジョルジュ・シムノン原作を映画化。フランスの農村、シモーヌ・シニョレ扮する中年女と脱獄犯のアラン・ドロン。地味だけど、濃厚な心理劇に引っ張られる。

1972年 ショック療法

1973年 燃えつきた納屋
フランスの農村、殺人事件、シモーヌ・シニョレ扮する老女とアラン・ドロン扮する判事の対決。村社会と人間の心理。アラン・ドロンがアラン・ドロンを演じていない、演技力の高さを感じられる作品。

1973年 ビッグ・ガン
1973年 暗黒街のふたり

1974年 愛人関係
実生活で15年間同棲したミレイユ・ダルクと共演。重大な犯罪を犯した精神的に不安定な美女と弁護士の関係。ミレイユ・ダルクの少年のようなボディと儚げでミステリアスな魅力が堪能できる。

1974年 ボルサリーノ2
1975年 フリック・ストーリー
1977年 プレステージ
1979年 エアポート'80

1981年 危険なささやき
アラン・ドロン初監督作品、だそうです。評価は、あまり高くないようですが、大好きな映画。コーヒーを飲むシーンがやたらと出てくる、陶酔もの。元刑事で探偵のアラン・ドロンと秘書のアンヌ・パリロー。コーヒー、フランス、裸、アラン・ドロン、観たいもの全部見せてくれる。痩せぎすのアンヌ・パリローの体当たり演技とあっけらかんとした雰囲気が魅力的。

1998年 ハーフ・ア・チャンス
ジャン=ポール・ベルモンド、ヴァネッサ・パラディ共演。2人のおじいちゃん名優が、息切れしながらアクションシーンをこなす、楽しい!

2003年 - 2004年 
「アラン・ドロンの刑事フランク・リーヴァ」2.3話しかしか見てないけれど、もっと観たい、と思わせるドラマ。かつての恋人ミレイユ・ダルクがゲスト出演!

◆部分的に見たか、途中で寝てしまった、もしくは、雑誌「スクリーン」「ロードショー」を読み、観た気になっている作品。

1962年 フランス式十戒
1963年 山猫
1964年 黒いチューリップ
1966年 名誉と栄光のためでなく
1969年 シシリアン
1970年 仁義
1972年 高校教師
1972年 リスボン特急
1973年 スコルピオ
1975年 アラン・ドロンのゾロ
1975年 ル・ジタン
1976年 パリの灯は遠く
1976年 ブーメランのように
1977年 友よ静かに死ね
1977年 チェイサー

アラン・ドロンが歌っている、または呟いている

もっとあるが、わたしが知っていて、かつ大好きな曲。アラン・ドロンの声の響き、抑揚、リズム、呟き、にゾクっとする。

  • レティシア(冒険者たち、挿入歌)/Alain Delon - Laetitia (Leticia) with lyrics

  • 甘い囁き - ダリダとアラン・ドロン/Dalida et Alain Delon Paroles Paroles

◆Wikipediaより、アラン・ドロン作品のリスト



①1957年 女が事件にからむ時
②1957年 黙って抱いて
③1958年 恋ひとすじに
④1959年 お嬢さん、お手やわらかに!
⑤1959年 学生たちの道
⑥1960年 太陽がいっぱい
⑦1960年 若者のすべて
⑧1961年 生きる歓び
⑨1961年 素晴らしき恋人たち
⑩1962年 太陽はひとりぼっち
⑪1962年 フランス式十戒
⑫1963年 地下室のメロディー
⑬1963年 山猫
⑭1964年 黒いチューリップ
⑮1964年 危険がいっぱい
⑯1964年 さすらいの狼
⑰1964年 黄色いロールス・ロイス
⑱1965年 泥棒を消せ
⑲1966年 名誉と栄光のためでなく
⑳1966年 パリは燃えているか
㉑1966年 テキサス
㉒1967年 冒険者たち
㉓1967年 サムライ
㉔1967年 悪魔のようなあなた
㉕1968年 世にも怪奇な物語
㉖1968年 あの胸にもういちど
㉗1968年 さらば友よ
㉘1968年 太陽が知っている
㉙1969年 ジェフ
㉚1969年 シシリアン
㉛1970年 ボルサリーノ
㉜1970年 仁義
㉝1970年 栗色のマッドレー
㉞1971年 もういちど愛して
㉟1971年 レッド・サン
㊱1971年 帰らざる夜明け
㊲1972年 暗殺者のメロディ
㊳1972年 高校教師
㊴1972年 リスボン特急
㊵1972年 ショック療法
㊶1973年 スコルピオ
㊷1973年 燃えつきた納屋
㊸1973年 ビッグ・ガン
㊹1973年 暗黒街のふたり
㊺1974年 個人生活
㊻1974年 愛人関係
㊼1974年 ボルサリーノ2
㊽1975年 アラン・ドロンのゾロ
㊾1975年 フリック・ストーリー
㊿1975年 ル・ジタン
51.1976年 パリの灯は遠く
52.1976年 ブーメランのように
53.1977年 友よ静かに死ね
54.1977年 プレステージ
55.1977年 チェイサー
56.1978年 ナイトヒート
57.1979年 エアポート'80
58.1979年 未知の戦場/ヨーロッパ198X
59.1980年 ポーカー・フェイス 
60.1981年 テヘラン 43
61.1981年 危険なささやき
62.1982年 最後の標的
63.1983年 鷹
64.1984年 スワンの恋
65.1984年 真夜中のミラージュ
66.1985年 復讐のビッグガン
67.1986年 デーモン・ワールド
68.1988年 アラン・ドロン/私刑警察
69.1990年 ヌーヴェルヴァーグ
70.1992年カサノヴァ最後の恋
71.1995年  百一夜
72.1998年 ハーフ・ア・チャンス
73.2002年 アラン・ドロンの 刑事物語
74.2003年 - 2004年 
アラン・ドロンの刑事フランク・リーヴァ
75.2008年 アステリックスと仲間たち オリンピック大奮闘


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