「Luv Bias」を考える。②
Kis-My-Ft2「Luv Bias」の分析
前回に引き続き、Kis-My-Ft2の27枚目シングルである「Luv Bias」について分析を行う。
MVにあるレイヤー構造
前回はYoutubeに投稿されているMVを中心に分析を行った。映像の全体あるいは端々にある横断的な流れ、奥行きのある構造、直線で分割された画面から、「左ー右、手前ー奥、上ー下」の3つの方向(3つの軸)が重なるレイヤー的な構造を見出した。
しかしこれはMVに限った、映像のみにある構造ではなく、この作品全体に言うことができると考える。そのため以下では「Luv Bias」のCDジャケットの構図を取り出し、考察する。
CDジャケットにある分割
「Luv Bias」のCDは初回限定盤A,Bと通常盤の3形態で販売されている。
それら3形態の構図を切り出すために以下のようなスケッチを行った。
今回は構図に着目するため色彩については省いて考察する。
全体に共通して、距離に統一感のないメンバーの画像が組み合わせられており、コラージュに近い印象を受ける。そこに一筆書きのように模様が描かれている(スケッチ上では分かりやすくするためにグレーで描写している)。重なりを避け、境界を作っているそれはジャケットの正方形画面を分割していると言えるだろう。しかし、ここにある分割は上下左右の平面空間に限ったことではない。
それは初回限定盤Aにあるメンバーの画像と線描の関係から見出せる。
初回限定盤Aのスケッチから右のような形で模様のみを取り出した。例えばジャケット左下、右中央部分のメンバー画像、この上に模様が重なっていることが分かる。スケッチ上ではこれが見られる場所を赤で囲み、示している。
一方でジャケット中央、右上部分ではメンバー画像の下に模様が入っていることが分かる。これは青で囲み、示している。
ここからメンバー画像と模様には重なりがあり、またメンバー画像の中でも手前・奥の関係があることが分かる。
つまり「Luv Bias」CDジャケットにもレイヤー的な構造がある。
レイヤー構造・平面の操作
前回の投稿で述べたが、今回のMVはフルCGで撮影された。そのため撮影現場はグリーンバック、紛れもない平面空間だった。ここに撮影後の編集によって街並みや、背景が透過され、レイヤーとしてメンバーを包む。
こうした平面の操作がもたらすものは立体感や奥行きなのだろうか。むしろそれは平面的な世界を強調しているのではないだろうか。
見たこともない街、景色、それらが映像として視聴者の前に立ち上がる。追求されたのはおそらく”リアル”ではなく、作品としての分離した世界だと言えるだろう。
要請されたのは「Luv Bias」という現実ではなく、その作品を表現するための平面。そのため今回のMVがフルCGでの撮影に至ったのではないかと考える。
媒体が左右しうる世界
前述した仮定、これは視聴者が見る媒体によっても左右されうるという仮定を今後の可能性として記しておく。
視聴者がMVを見るために扱うもの、おそらくはTVやスマートフォン、PCといった凹凸の無い、液晶画面であるはずだ(私自身これを記述する際にはスマートフォンで見続けた)
この超平面に立体感をもたらすことや、”リアル”を求めることも可能である。例えば映像内の人物が極端にカメラに近付くとか、カメラ自身が動くとか。しかしこの「Luv Bias」が求めたのは作品世界の創造である。ここに立体感や”リアル”は不要である。視聴者が扱う凹凸の無い、視聴者自身が入り込むことのできない超平面はこの目的と合致する。
媒体がその世界を増強する、その可能性を秘めている。
反省
何日かの失敗を反省するために、一旦変則的な時間に書き、辻褄合わせに勤しんでいる。いつの間にか自分にとってしっかり定着していたらしい。思っていたよりもずっと悔しかった。今後論を高めることは前提とするが、その大前提に継続があることを忘れずにいたい。
また恒例となるが、前回と合わせても分かりづらい表現等があれば教えて頂きたい。研鑽。よろしくお願いします。
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