ノンアルコールカクテル レモネード
ノンアルコールカクテル レモネード
ここは、場末のBAR M&N。
芸術の秋、秋の初めごろの早秋、
今夜は、ピアニスト音ちゃんがシューベルトの子守唄を優しく奏でている。
看板猫のハチワレ猫ねねは、香箱座りから、段々ごめん寝になっていった。
チリンチリン♪
青白い顔をした女性ミヅキがやって来たと思ったら…
バタン!!
その場でお腹をかばいながら倒れてしまった。
みつは拭いていたシェイカーをカウンターに置くと、すぐさまミヅキに駆け寄り、
「大丈夫ですか?」
と声をかけミヅキを起こした。
「あぁ…ごめんなさい、貧血で倒れてしまったんですね。」
ボーっとした様子のミヅキ。
ごめん寝していたねねも、びっくりして、辺りをキョロキョロ見渡していた。
「実は、今妊娠3か月で、つわりがあって、ろくに何も食べられなくて…。」
ううっと吐き気も催しそうなミヅキに
「でも、ここはBARにゃんよ、お酒しか出ないにゃん」饒舌な口調のねねに
「あら?このかわいい猫さん、お話が出来るのね?私はミヅキ、よろしくね!」ミヅキが猫と仲良しのサインの人差し指を差し出すと嬉しそうに
「やっとアタシの魅力を分かってくれる人が来たにゃん」
ねねは、得意げにゴロゴロと喉を鳴らし、ミヅキの人差し指にに鼻を近づけて鼻チューをした。
「で、ミヅキさん、どうなさいました?」
心配そうにミヅキから詳しい話をみつは問うと
「実は、私は、結婚して、子供に恵まれたのは嬉しいのですが、テレビやネットなどのメディアの育児をしている人の投稿を見ていて、私なんかに育てられるか不安で不安でたまらないんです。」
「そんなの心配するにゃ」
ねねは、顔を洗いながら余裕そうにそう言った。
「猫は、一度に仔猫を5~6匹産むにゃん。オッパイの数だけ産むにゃんよ。
中には栄養が足りなくて虹の橋(あの世)を渡ってしまう子もいるにゃ。
でも、悲しんでばかりいないで、他の子たちには、逝ってしまった子の分も元気に生きてくれにゃって言ってるのにゃん」
ねねは続ける
「アンタら人間は、栄養もいいし、住んでるところも安全だし、心配することはないにゃん。しかも、猫は、メス一匹で全部の仔猫を見るんにゃから、ミヅキさんは一人だけにゃら心配にゃいでしょ?心配にゃら、アタシとみつとでたまに育児に手伝いに行ってもいいにゃん、それに、生まれてくる赤にゃんにあにゃたは、みんなから愛されてるってことを教えてあげにゃきゃ。」
「そこまで思っていただいてありがとうございます、少しほっとしました」ホッと胸をなでおろしたミヅキであった。
みつは、子供を産んで育てたことはないけれど、子供を育てる人の苦労は分かるので、うんうんとうなづいていた。
「それはさておき、今からカクテルを作りましょう、カクテルはカクテルでもいつものとは一味違いますよ」と言い、みつはカクテルを作り始めた。
材料…レモンジュース…40㎖
はちみつ…2~3tsp
水(ミネラルウォーター)…適量
スライスレモン
作り方…グラスにレモンジュースとはちみつを入れてよく混ぜる。
グラスに氷を入れて冷えた水(ミネラルウォーター)で満たし、
軽くステアする。
好みでスライスレモンを飾る。
みつは、「ノンアルコールカクテルのレモネードの完成ですどうぞ、妊婦さんには、アルコールはお勧めできませんので、お店にあったものを使用して作りました。はちみつが入っていて栄養もありますよ」といった。
ミヅキは、ありがとうございますと言い、一口飲むと…。
「あっ…甘くておいしい…落ち着くし、栄養もあるし、吐き気もしないから、後でお家に帰ったら作ってみようっと赤ちゃんが生まれたら、見せに来ますねー。」
「無事に元気な赤ちゃんを出産出来ると良いわね。」
優しく声掛けするみつとねねに
「ありがとうございます、玉のような子を産みますね」と言ってBARを後にしたミヅキだった。
チリンチリン♪
ねーむーれーよーいーこーよー♪
モーツァルトの子守唄をハミングするBAR M&Nの三人だった。