カモミールティー
カモミールティー
※♪ ピーンポーンパーンポーン↑この物語は、一部自傷行為の表現がありますので、苦手な方は、回れ右をして下さい。
…亡くなった親友のリストカット跡を見て、聞けなかったこと、伝えたかったこと、リストカッターの知り合いから聞いた話などを参考にしました。
BAR M&N
カモミールティー
夏も近づく八十八夜の歌が似合う初夏
「ねねの夏毛もポンポン抜けるにゃん。」と毛づくろいしながらねね。
「お掃除が大変なんだけどねー」とほうきとちり取りを両手に持ちながらみつ
「ピアノに入ったら、大変だぜ!」とピアノを柔らかい布で拭きながら音ちゃん
そんな中、
チリンチリン♪
「うぅ…。」
何と、苦しそうな表情をしながら左手首に切り傷と、少量だけど出血をしている女性がやってきた!!
「ちょっと!!みつ!!急いで!!救急箱にゃ!!」尻尾を最大限にぽんぽんにして驚きを隠せないねね。
みつは、いそいそと休憩室から救急箱を取り出し…
「ちょっと、そこのあなた、こっちおいで、染みるからね…」
消毒薬で消毒をして、軟膏を厚めに塗り、大きめのカットバンを貼り、包帯を巻いた。
「…応急処置だから、この後、ちゃんと病院に行ってね。それにしても…何なの?この切り傷の多さは!?」驚くみつ
何と彼女の左手首だけではなく、両手首から、腕、二の腕辺りまで刃物のようなもので
切った切り傷、通称リストカットや、アームカット跡だらけ…。
「何があったらこうなるんだ?痛くねぇのかよ?根性焼きする奴はレデースにもいたがよ。」音ちゃんが疑問に問うと、
「…私は、メイと言います。大学四年生なんですが、家族から見放されてて、愛されていないんです。それで、自分に自信がなくて自分を見失いそうな時に、リストカットをして、自分の存在意義を確かめるんです…。」
「おいおい、そんなことしたって、アンタは幸せにならねーじゃねーかよ?第一、家族から愛されてねーって、虐待でも受けてんのかよ?」と音ちゃんが問うと、
「はい…、母からは暴言、父からは暴力を受けています。ですが…部屋にこもって、リストカットをして、痛みを感じて、血を流している時が、自分の生きてる証を感じるんですよ。」
何とも痛ましい発言に驚く3人
「おいおい、だったら、自分を切りつけるよりゃー、大人の何とかクラブに行って、マゾやってた方がいいんでねーか?金になるぞ?」
マニアックすぎて有り得ない音ちゃんの発言にねねが、
「そんにゃ、音ちゃんみたいな変態じゃないにゃよ!メイちゃんは!!」
とびっくりし、みつは冷静になって
「そうねぇ、音ちゃんのは極端すぎるから、何か良い案を考えましょうよ?ね?ひとまず、落ち着くために、カモミールティーをお出ししますね。あ、この分のお代は結構ですよ?」
にっこりと微笑むみつ。
材料…フレッシュカモミール…小さじ一杯
熱湯…適量
作り方…フレッシュカモミールを、ティーポットに入れ、それに熱湯を入れ、3分程待ち、
お湯で温めたティーカップに注ぐ。
どうぞ。
「ごくっ。あっ、リンゴみたいな香り。」それと共にホッとため息をつくメイ
「ふふっ、不思議でしょ?うちの実家は農家なんだけどね、畑の一部にカモミールの種を巻いたら、沢山カモミールが生えたわけ。
で、そのまま見て、そのリンゴみたいな香りを楽しんでも良かったんだけど、
ハーブティーになるって知って、フレッシュカモミールティーにしたの。」
「おっしゃれー!」と感嘆の声をあげるメイ
「でしょ?何も、化粧をしたり、着飾ったりすることがオシャレではないと、私はおもうけど?」と、得意げにみつ
「へえぇー、みつってたまーに面白いことするな?」と音ちゃんが言うと、誰よりも鼻が敏感なねねが
「コレ、クサいんにゃけど!」
それぞれに様々な意見が出たところで
「メイちゃん、せっかく女の子に産まれたんだから、自分を大事にしようよ、こんなこと簡単に言って申し訳なかったんだけど、あのね、騙されたと思って聞いてて。
今はね、家族に愛されていないかもしれない。でもね、今後メイちゃんに、好きな人ができるとする。でもね、そこでボロボロに傷ついた腕のメイちゃんがいます。相手はどう思うと思う?本当にメイちゃんの事を思う人は、もう、そんな痛いことするなって言うはず。だから、メイちゃんを愛してくれる、心からメイちゃんのことを思ってくれる人のために綺麗になろうよ。」
「こんなどす暗い心の私が?」メイは、困惑した表情をすると、
「何でメイちゃんがどす暗いの?世の中ねぇ、どす暗い心の人って、人のことを踏みにじったり、蹴落としたり、いじめたり、からかったり、良い人ぶって利用したりして、人を馬鹿にして喜んでる人のことを言うのよ、あなた違うでしょ?」
「違いますけど…」
「だったら大丈夫じゃない、胸を張って生きていきなさい。」
「もし、この先道に迷ったら、いつでもこのBAR M&Nにいらっしゃいな、人生経験豊富なおせっかいおばちゃんと、美魔女猫がいつでもお話聞くわよ!!」
「おばちゃんとはなんだ!!音ちゃんと呼べ!!」
「ありがとうございます!!」
チリンチリン♪
爽やかな笑を浮かべ、メイちゃんは去っていった。