ジョン・ロールズの正義論

近所の仲間と行っている読書会の次の課題図書が。山本圭著、嫉妬論、光文社新書、2024.2.29です。これは、とても読みやすいのですが、「〇〇では」、の記述が多いいわゆる出羽守本の印象もあります。そうではありますが、ジョン・ロールズの正義論がたびたび出てきたので調べてみました。
ミルトン・フリードマンやフリードリヒ・ハイエクらに代表される新自由主義。それを批判した宇沢弘文。人新世の資本論の斎藤幸平などが、経済社会論争で浮かぶ名前です。新自由主義に対して、米国でリベラルの立場からの論説はないのかと思っていたところ、ちょうどジョン・ロールズがそういった人でした。ベトナム戦争の最中の1971年に『正義論』を刊行しています。同時期、日本ではガルブレイスが有名で、ジョン・ロールズはあまり一般に知られていなかったのではと感じます。

さっそく、次の本を読んでみました。
1.玉手慎太郎 ジョン・ロールズ 誰もが「生きづらくない社会」へ 講談社現代新書 2024.4.20
2.齋藤純一・田中将人 ジョン・ロールズ 社会正義の探究者 中公新書 2021.12.25
2つめの本は、哲学書に近い難解な書きぶりですが、読み進むにつれて、慣れてきました。

2の<あとがき>より、
《【2021年は、ジョン・ロールズの生誕100周年、そして『正義論』の出版から50周年 に当たる。
この半世紀のあいだに格差は著しく拡大し、人びとを隔てる溝はさらに 深まりつつある。また、価値観や生き方の違いに対する不寛容は、別の仕方で社会に亀裂を走らせている。ロールズは、格差の拡大によって市民間の平等な関係が損なわれる事態、多元的な価値観が互いに排他的なものに転じることによって安定した共存が掘り崩される事態をすでに想定していた。
ロールズの政治哲学の「公正な機会の平等」や「財産所有のデモクラシー」、あるいは「重なり合うコンセンサス」といったアイディアは、社会が過度の不平等によって引き裂かれたり、多元性の否定によって抑圧的なものに転じたりすることなく存続していくことはいかにして可能か、という問いによって導かれたものである。半世紀を経た今、このロールズの問いは一層アクチュアルになっているように思われる。
社会の制度や規範が「正義にかなっている」か否かを問うことは、政治哲学にとってはつねに中心的な、しかもリアルな課題でありつづけると考える。ロールズは『正義論』の冒頭部に次のように 力強く記している。
「どれほど優美で無駄のない理論であろうとも、もしそれが真理に反しているのなら、棄却し修正せねばならない。それと同じように、どれだけ効率的でうまく編成されている法や制度で あろうとも、もしそれが正義に反するのであれば、撤廃し改革せねばならない」
正義にかなっているか否かは、効率的かどうか、福利を向上させているかどうかよりも優先されるべき問いである。 そして一人ひとりの自由な生き方は、他の人びとのやはり自由な生き方とも両立するものでなければならず、正義にかなった制度や規範から切り離すことができない。政治哲学にとって、いかに、どのような方向に向けて不正義を縮減していくかは重要な問いである。》

次に、ロールズの「自尊心」(self-respect)についてChatGPTに訊いてみました。以下の通りです。

《 彼の政治哲学において非常に重要な概念です。特に『正義論』(*A Theory of Justice (1971) *)で、社会的に公正な制度が市民に対して自尊心をどのように保障するかについて強調されています。ロールズの自尊心の概念について解説します。

自尊心の定義

ロールズにとって、自尊心(self-respect)は、自分の人生や目標、能力に対する基本的な信念と、それに伴う自己価値感です。彼は自尊心を2つの側面から捉えています:

  1. 自分自身の目標や価値を達成できるという信念: 自分の計画や目標を実現するための能力や価値があるという自信。

  2. 社会の中で自分の価値が認められていること: 社会から自分が尊重され、平等な一員として扱われていると感じること。
    この自尊心は、ロールズが提唱する「基本財」(primary goods)の中でも最も重要なものの一つとされています。つまり、正義の原理によって構築された社会では、個人が自己の尊厳と価値を保てる環境が提供されるべきだと考えます。

正義と自尊心

ロールズの正義の理論では、社会制度の正当性は、各個人がその制度の下で自尊心を保てるかどうかにかかっています。公正な社会制度は、個人が自分自身の目標を追求し、社会において尊重される存在であると感じられるようにしなければならないというのがロールズの考えです。

第一原理と第二原理との関連

ロールズの2つの正義の原理(自由の平等の原理と機会均等および格差是正の原理)も自尊心と密接に関連しています。自由の平等の原理は、すべての市民が平等に自由を享受できる社会を求め、これは個人の自己尊重に繋がります。また、機会均等と格差是正の原理は、社会的・経済的な不平等が許容されるのは、それが最も恵まれない人々に利益をもたらす場合だけであるとします。このような仕組みは、誰もが社会の中で自分が価値ある存在だと感じられることを保証し、ひいては自尊心を支える役割を果たします。

自尊心の社会的意義

ロールズは、自己尊重が欠けると、個人は積極的に社会に参加することや、自分の人生を充実させる努力を怠る可能性があると考えました。したがって、公正な社会制度は個人の自尊心を奪うことなく、むしろそれを育むように設計されなければならないと主張します。

結論

ロールズにとって自尊心は、正義の社会において不可欠なものであり、社会制度はそれを保護し、育成するものでなければならないという主張です。自尊心が保障されることで、個人は自己の価値を信じ、社会において平等で尊重される存在として生きることができます。》

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