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第74詩 3つの優しさ

天気予報を見ないで
家を出てきたから
仕事上がりで
路面に白い雪が積もっているのに
少し戸惑った
 
ブーツで来ればよかったと
思った時には もう遅い
つるつるのパンプスで 滑ってしまって
気がつけば 尻もちをついていた
 
あたまもお尻も
こころまで 一気に冷たくなる
 
情けなくて
何とか起き上がろうとしたら
 
大丈夫ですか と
通行人が声をかけてきた
 
長い白髪のおじいさん
大学生くらいの男の子
私と同じ スーツ姿のお姉さん
 
3つの優しさを同時に与えられた
 
ありがとうございます と
私はそう答えて
精一杯の笑みを見せたら
3人ともホッとしたように
散り散りの方向へ行ってしまった
 
思いがけない雪に
この世もなかなか 捨てたもんじゃないんだと
教えられた気がした
 
明日も天気予報
気にしないで出かけてみようかな
 
晴れでも雨でも雪でも
きっといい日になる
そう信じてやっていこう

 




(挿絵はフリー素材です)

 雪の日でも、寒い日でも、皆黒づくめのコートを着ていても、温かい心に触れることが多いと感じる昨今です。

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