第76詩 プチトマト
いつの間にか
短いスカートは履けなくなって
ピンクの口紅も似合わない
弄んだ毛に白髪発見
こんなオンボロ 携帯残り数%の自分でも
あなたに会うと 一気に充電満タン
未だにできている 恋
未だに私のなかにある 乙女
こっそり今日も
赤い下着をつけてきました
淡いオレンジネイルの付け根に
鈍色の指輪
あ 私 結婚してたんだった
ついうっかり 忘れそうになった
だけど それでいい
往年のあの頃より
少ししわがれた声で
あなたの名前を呼びます
部長
あ 部長も結婚してたんだった
ついうっかり 忘れたくなった
だけど 別にいい
デスクの上に広げる愛妻弁当
私も持参したお弁当のなかに
部長と同じ プチトマトを発見
そんなことだけで 嬉しいんだ
ひとの能力を見抜くあなたでも
あなたの呼び名に 色香が含んでいるのには気づかないでしょう
片思いが楽しい そう思えるようになった
年を重ねるのも悪くないと
口に放り込んだトマトが
甘酸っぱく弾けた
(挿絵はフリー素材です)
いつまでも恋はしていたいです。
未だに誰かを思って(推し含む)きゅんとしたりすると、まだまだ私も枯れてないな、って人生楽しいです。