「ワンピースが返ってこない」と書かれた箱の中身
昨日、病棟での仕事中。
「洗濯に出したワンピースが返ってこない。」というMさん。
(心の声)ここ数日、朝の申し送りのときにそのような訴えがあると言っていたなぁ。このことか。
申し送りでは、「Mさんが何故そのような発言を繰り返しているのか?」ということについては何の情報もないまま、Mさんが言っていることだけが申し送られていた。
Mさん、本当は何が言いたいんだろ。
どんなワンピースだったのか訊ねると、紺の無地のワンピースだと言う。
「どんなときに着ていたの?」
と訊くと、
仕事場のお祝いごとのときに着たのだと話す。
「そっかあ。そのお祝いごと、とても楽しかったんですね。」
そう声をかけると、万遍の笑みで
「そう。」
と言いながら深く頷くMさん。
Mさんが話したかったのは、楽しかったときのこと。印象深くて思い出に残る日だったのだろう。
もしかすると、本人も何故そのワンピースに拘っているのか忘れていたのかもしれない。
【紺色のワンピース=楽しかった日】
だったのだろうな。
心が覚えているって、こういうことだよな、と人間のしくみを目の当たりにする瞬間。
「ワンピースが返ってこないんです。」と書かれた箱の中身は、Mさんのいつかの楽しい記憶だった。