釣りバカ父さん
母と釣りバカ日誌を見始めて、12話まで見終わった。
釣りバカ日誌10のラストシーン、西田敏行さん演じるハマちゃんが海釣りをしている。
釣竿がグンとしなり、なんだか大物が釣れたようで、周りの釣り人がみんなハマちゃんの周りに集まってくる。
そのラストシーンを見ていた母が言う。
釣り場所で誰かが大物を釣ると、そうやってみんな集まってきて、何が釣れたのか興味津々見守るのだと言う。
気ままにマイペースに生きて、隙あらば釣りにいくハマちゃんは、我が父にそっくりである。
ハマちゃんが釣り上げたのは大きなスズキだった。
父も堤防釣りをしていた時、やはり映画のシーンのように釣竿がグンとしなった。
ものすごく強い引きである。釣り糸を巻き上げようとするが、うんともすんともいわない。
これは大物だぞ、とその様子をみていた釣り人たちは騒然となって、父の周りに集まってきた。
顔を真っ赤にして釣り糸を巻き上げる父の動きに合わせて、周りの釣り人たちが、ヨイショ、ヨイショ、と掛け声をあげる。
すると、ゆっくりとだが、海から何がが上がってきた。
なんだなんだ?と父も周りの釣り人たちも、期待を込めた目で上がってきた生き物を見つめた。
えっちらおっちらと上がってきたのは、大きなタコだった。
釣り用の三脚をガッチリ掴んでいる。
父が釣り上げたのは、三脚付きのタコだったのだ。
釣り上げられまいと必死にしがみついたのがたまたま三脚だったのだろう。岩にしがみついていれば、釣り上げられなかったかもしれない。
その姿が海面から現れた瞬間、父の周りの釣り人たちはみんな大爆笑した。そして、大笑いしながら自分の竿の方へ戻っていったという。
父はタコと三脚を家に持ち帰って、母にその話をした。
必死に釣られまいとしていたタコの話を聞いて、母はかわいそうになって、逃してあげればよかったのに、というと、父もそうだなあ、と少し悲しそうに言った。
美味しい茹で蛸を食べた後だったので、時すでに遅し、であった。