ヘッドライトと双眼ルーペ
先日こんなものを買った。
PENTAXの双眼ルーペ『PRISMVUE』
内部に搭載された偏向プリズムの機構により、48°下向きの視野を正面視で得ることができる。
その結果、下を向き続けることで生じる首の疲れから解放されるほか、助手との視野の共有がしやすい(頭がぶつかりにくい)などをメリットとして謳っている。
この年になり、気付いた時には膝蓋腱反射が亢進していた。冗談のつもりでみてもらったら、なんのことかわからないが、「頚椎症になりかけ」という非常にありがたくない診断もどきをいただいた。バイクで何度か転んでいるが、そのせいだろうか。そんなこんなで、首は常々大事にしたいと思っていたのだ。
この製品はなかなかよくできており、3倍の拡大した世界を、明るく広い視野で、首を疲れさせることなく提供してくれる。
ベッドライトがほしい。
一般に拡大された視野は暗い。
小中学校の理科実験で使った顕微鏡も、ライトを反射板に当てて初めて明るく観察できたのを思い出す。
実際にルーペを活躍させる場面では、9割方は自前のヘッドライトなしで問題なく機能している。上からガンガンに明るい備え付けのライトで照らしているのでこれは当然。
残りの1割の場面。これはどうしようもない。
助手の覗き込みや、自身の位置どりのせいで、ひとたび視野が暗くなれば、うまくいかないイライラは積み重なり、徐々に様々なことに影響が出てくる。
常に平静を保つための手段として、自前のヘッドライトは必要なのである。
そんな中で目をつけていたのは近藤研究所のこの製品であった。
まず大事なこと、それは国産であること。
サポートが受けやすいとか、日本語の解説が充実しているとか、色々な要因があるが、やはり自国の企業は応援したいものだ。
この製品は界隈でそれなりに有名で、装着率もそれなりに高い。僕自身も近い人からの口コミで知ったので、当然その人の周りには同じようにつけている人まみれである。
みんなが使っているものを使うのは面白くない。
天邪鬼な僕には、この製品がどれだけ魅力的でも、選択肢から外れてしまうのであった。
魅力的なポイントとして書いておくべきは、充電がUSB-Cでできること、さまざまなルーペマウントを作っていること、値段が比較的安いことなど。
興味があれば学会会場でぜひ手に取ってほしい。会場の営業マンの方はとても印象が良く、外資系の人たちとは違い、とても話しやすくウェルカムな感じだった。
別の選択肢 LUMADENT
ヘッドライトなど調べてゆくうち、LUMADENTというメーカーを発見する。
まず歴史が非常に浅く、2009年にできた企業である。2010年にヘッドライトを発売し、2012年にルーペを発売している。なんという歴史の浅さ!
この会社も偏向ルーペを発売しており、ErgoPrismという名前で出している。(実はその手のルーペを探すうちに、この企業を知ったのだった)
ルーペに関しては、サポートを手厚く受けられそうな本家のPENTAXから買うことにしたが。
それにしてもこのLUMADENTのルーペは安価であった。
サイトに焦点深度や視野径をしっかり書いており、その点でわりかし信頼のおける企業なのだろうと感じた。(他の企業は相当な大手でもそこら辺がイマイチ不透明だったりする)
機器の手助けにより視機能を拡張するものとしてルーペを捉えると、当然試着は必須である。装着していて、相性が悪いために限界が来るようではダメなのだ。体の一部のようにならないと話にならない。
それは攻殻機動隊でいうところの義体化であり、バトーさんなのだ。
製品の印象は別に悪くなかったが、試着できないという点で大博打になってしまうので、今回はルーペに関しては購入を見送った。
しかし、ヘッドライトは別である。こんなものは視機能の拡張とか大それたこととは関係ない。明るければ、そして軽ければそれで正義なのだ。
かくして僕はLUMADENTのヘッドライト“ProLUX”を購入した。
しめて$700程度。自宅に届くまで10日弱であった。
製品自体は問題なかった。
明るさについては、PENTAX純正のライトもなければ、近藤研究所のライトもないため比較できない。申し訳ない。YouTubeのレビューでも探してほしい。
マウントがルーペごとに専用設計で、最小限の設計であるため当然に軽く嵩張らず、好感が持てる。
LUMADENT ProLUX
よかった点
・重量が軽い(5g)
解説不要と思われる。マウント自体も非常に簡素だが、余計なものがなくかえって良い。
・60000luxの明るさ
数値通りであればそれなりに良いはず。
他社もそのくらいの光量でやっているよう。
・値段が安い
予備バッテリーなど無駄につけて$100値段が上がったが、そうでなければ送料込みで$700くらいだろうか?悪くない価格設定だと思う。円安なのが痛い…
わるい点
・ライト照射範囲がわずかに小さい
PRISMVUEの広視野型を使用しているが、これにつけると視野の縁の幅1cmだけ照らされていない状態になる。こんなものは全く仕事の最中は気づかないためどうでもいいのだが、どうでもいいことも気付いた後には気になるのであった。あと数センチひろければ全域が照らされるが、それはそれで他のことに不都合が生じうるのだろうと思う。
・ケーブルのスイッチ位置が良くない
ライトに配線を刺したのち、ルーペのテンプル部に配線をゴムでくくりつけて、後頸部、背部と通して、ベルトにくくりつけたバッテリーに配線する。
その際にテンプル部にライトスイッチが付くようになる。このスイッチでon off切り替えや、光量の調節ができる。
不潔操作となるためあまり活用することはなさそうだが、あるに越したことはないだろう。存在自体は高評価である。スイッチの作り自体は、押し心地と質感合わせて良いものであった。
しかし、これの位置が不味かった。
配線のあまりに末梢側にスイッチがあるせいで、そもそもPRISMVUEのテンプルの細くて具合が良いところにスイッチを取り付けられない。ルーペの関節部ほどの遠位にスイッチをつけなくてはならなくなる。そうすると、今度は付属のOリングのようなゴムでスイッチをうまく固定することができない。
加えてその状態でルーペをたたむことができない。スイッチ部がいっそ関節に干渉するし、そうでなければ配線が突っ張るせいだ。
そもそもおそらくだが、ケーブルの規格が1つしかないのだろう。マウントのみ作成して、実際に取り付けて畳んで、ということはしていないんだろうと思う。安いだけのことはある。いい加減なのだ。こんなことならスイッチが付いてないケーブルであってほしいくらいだ。
ケーブルをテンプルに括った状態で折りたたむことが困難なせいで、合体させた状態でケースにしまうこともできず、いちいちOリングを外して、ケーブルを抜いて、という作業が生じる。これは本当にまずい。
…とはいえ、純正品ではないことから、仕方ないといえば仕方ないのだが。
・充電の取り扱いの面倒くささ
製品の特徴として3時間で充電が完了するとしている。それは良いのだが、充電に使うパーツがこれである。
まあいろいろと言いたいことはあるが。
その推奨しているUSB 5V 2Aという規格、古くないのだろうか。いまや高速充電の時代でなぜこうなったのだろう。
何より不味いのが、充電時間に対する取り扱いである。
充電を開始すると赤色に光り、終わると色が変わるらしい。1回あたり3時間ほどで満充電になる。
…ここで問題が生じる。
満充電になったらそのまま置いておいてはいけない。すぐに充電器から取り外さなければならない。でなければ問題が生じる。
てな具合の警告調の厚紙がいっしょに入っていた。ペラペラのやつではなく、厚紙。赤や黄色でカラフルな感じ。
なぜ自動で給電を中止してくれる仕組みじゃないのか。今は令和ですよ。アメリカ人にはわからんか令和。
ゲームボーイ時代の充電式外部バッテリーも自動で充電止めてくれてたような記憶が。
多分だけど、国産や純正ならそこら辺はうまくやってくれるんだろう。
こればかりは、非国産、非純正を購入した人間は受け入れなければならないんだろう。
まとめ
・PRISMVUEはとても良い。
値段もdesign for visionの偏向ルーペの半分もしないので、買うならこの一択だろう。少し重く、鼻のあたりに褥瘡ができそうだが、そんなものは愛でカバーできるくらいの良い製品だった。
・LUMADENTのヘッドライトは頑張りましょう!なレベル。
仕事で使ってるうちは全く問題ないが、それ以外の管理などで問題が生じそうなデザインであった。改善を望む。なんなら日本の営業部門として僕を雇ってくれ。
ルーペとヘッドライトを選ぶのに、もしこの記事が引っ掛かって、その時に少しでも参考になれば。
そして今後いつの日か、これらを一緒にいれるために選んだケースの話もします。