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ひらかたハートの宝探し:動物たちが教えてくれる大切なもの⑫『『迷いを超えて~結衣の心の変化と新たな始まり』

舞台は大阪府枚方市。にぎやかな街の中に、個性豊かな動物たちが住んでいる。彼らの冒険は、いつも予測できない展開を迎え、町中を駆け巡る。今回は悩める結衣ちゃんの夢に出てきます。

登場人物紹介
①らうちゃん: パンダの女の子。自分がアイドルだと思い込んでおり、いつも自己中心的な行動で周囲を巻き込む。
②江素男: フクロウの男性。松潤のようなカリスマを自認し、周囲の動物たちを「自分のファン」と思っている。
③パオ: ダンボのような泣き虫で、やくざ映画が大好き。落ち込んでいる時に、映画のセリフで励まされることが多い。
④アウル: 江素男の息子で、父親を尊敬し、パオと仲良し。
⑤キー太: 阪神タイガースのキャラクターのようなトラ。自信家で、何事も「勝つ」ことを信じている。
⑥シンバ: ライオン。百獣の王だと思っており、常に威厳を持って行動する。
⑦もんちゃん: サル。捨てられていたが、江素男に拾われ、家族として迎え入れられる。
⑧永明: らうちゃんの夫で、もう一匹のパンダ。冷静で優しい性格。
⑨江寿子: みんなのおかあさん。温かい心でみんなを見守っている。
⑩梨男: みんなのお父さん。物静かで、家族を支える頼りがいのある存在。
⑪いちご: 梨男家に飼われているうさぎの女の子。肉食系で、少しツンデレ。
⑫檸檬: 梨男家に飼われているうさぎの男の子。草食系で、おっとりとした性格。
⑬山田杏奈:カフェを営む女性
⑭結衣:今回の主人公

年末のある日結衣は会社の忘年会に参加していた。上司の山田課長に引っ張られ、義務感から参加していたが、心の中では新しい年を迎える不安と期待が交錯していた。普段は仕事の忙しさに追われ、気づけば年末を迎えていた。
外は冬の寒さに包まれ、街灯が静かに輝く中、彼女は毎日繰り返される通勤時間に嫌気がさしていた。電車の中で座席を確保し、手にしたスマートフォンを見つめながら、無駄に感じる時間に心が沈んでいった。

「この通勤時間、どうしてこんなに長く感じるんだろう。」結衣は、ひとりごちるように呟いた。

彼女は、普段から「8,000円の給料のために、毎日こんなに無駄な時間を費やしているのか?」という疑問を抱えていた。会社に着くまでの時間、そして退勤後に迎えるWワークのための移動時間。それらを合計すれば、給料に見合う労力をどれほど消耗しているのか、想像するだけで心が重くなった。

「通勤時間って、お給料にはならないんだよね…」結衣はため息をつきながら、窓の外を見た。毎朝、毎晩、無駄に思える時間を、なぜか無理に過ごしているような気がしていた。

そして、次の瞬間、浮かんできたのは「無駄な飲み会」のことだった。上司や同僚との会話が、結衣にとっては単なる義務のようになってしまっていた。決して楽しいわけではない飲み会に参加し、無理に笑顔を作る自分がいた。これも時間の無駄に思え、心の中で反発が湧き上がっていた。

「本当に意味があるんだろうか、これって…?」結衣は心の中でその問いを繰り返した。

そして、思い浮かぶのは、上司の顔色を伺いながら帰れない日々だった。上司が何かを言うたびに、その表情や言葉に気を使い、結衣は自分の時間がどんどん奪われていく感覚に苛まれていた。

その日の仕事が終わると、すぐにWワークに向かうために再び動き出す。けれども、どこかでそれが自分に大きな負荷をかけていることもわかっていた。心と体が疲れ、気持ちも沈んでいく日々が続いていた。

「もう限界かもしれない…」結衣は心の中で思った。

帰宅し、疲れ切った体をベッドに投げ出した結衣。ふと、今年は自分にとって何も変わらなかったことに気づく。もっと自分の時間を持ちたい。そんな思いが心の中で膨らんでいた。その晩も、布団に横たわりながら、彼女はこれからの自分の生き方に悩んでいた。お金を稼ぐために、こんなにも犠牲にしている時間は、本当に価値があるのだろうか? 自分の人生が、これでいいのか?と。結衣の心には、大きな迷いが広がっていた。

翌日、仕事と仕事の合間に結衣は、ひらかた庵のオーナーである山田杏奈と偶然カフェで会うことになった。杏奈は自由なライフスタイルを楽しむ女性で、結衣にとっては憧れの存在でもあった。

「結衣さん、最近どう?」杏奈が気さくに声をかけた。

普段なら明るく答える結衣だったが、その日は少し沈んだ表情で言った。

「実は…悩んでいるんです。毎日、通勤や無駄な飲み会、上司の顔色を見ながらの時間が、もう耐えられなくて。Wワークもしているけど、正直、どれもこれも意味があるのか分からなくて…。」

杏奈は静かに頷き、結衣の話をじっくりと聞いていた。その優しい眼差しと自由な生き方に、結衣は何かしらのヒントを求めていた。

「結衣さん、わかるわ。でも、何かを変えるためにはまず、自分がどうなりたいか、どう生きたいかを明確にしないと、どんなに時間があっても意味がないのよ。」杏奈は穏やかに答えた。

「どう生きたいか、ですか?」結衣は思わず質問した。

「そう。例えば、もし今の仕事が本当に好きじゃないのなら、その時間をどう使いたいのかを考えてみることだよ。」杏奈はゆっくりと話し始めた。「そして、自分にとって大切なものは何かを見極め、そのために一歩踏み出す勇気を持つことが大切。時間を無駄にしないために、自分の生き方を変える必要があるかもしれない。」

結衣はその言葉にじっと耳を傾け、少しずつ心が軽くなるのを感じた。杏奈の言葉が、どこか胸の中で響いていた。

その後、結衣は彼女のアドバイスを胸に、自分の時間を取り戻すための第一歩を踏み出すことを決意する。それは必ずしもすぐに変わるわけではなかったが、彼女の心の中には確かな希望が芽生えていた。

その夜、ベッドに横たわっていた結衣の目の前に、突然不思議な光景が広がった。部屋が明るくなり、そこに現れたのは一匹のライオン、シンバだった。

「おお、結衣ちゃん。僕は百獣の王、シンバ。結衣ちゃんが求めるものを与えてあげるよ。」シンバは堂々と語り、まるで王のように振る舞った。

その後、フクロウの江素男、サルのもんちゃん、パンダのらうちゃんとその夫の永明、そして江素男の家族が次々に現れた。家族の温かさと仲間たちの力強さに、結衣は圧倒される。

「きみが迷っている時は、みんなが支えてくれる。」江素男が言うと、シンバがさらに続けた。「自分の王国を作るためには、まず自分を信じて進むことだよ。」

その言葉に、結衣は少しずつ心が動き出した。しかし、まだ迷っている自分を感じていた。

動物たちのアドバイスが続いた。まず、もんちゃんが言う。「過去に捨てられたことがあるからこそ、今は家族を大事にしてるんだ。もし自分が怖がってばかりなら、誰もついてきてくれないよ。」

「うん、わかる気がする。」結衣はもんちゃんの言葉に共感を覚えた。

その後、永明が冷静に言う。「焦ることはないよ。自分のペースで進んでいけばいいんだ。無理をしても長続きしないからね。」

結衣は、動物たちの言葉を胸に刻み、少しずつ自分の人生を見つめ直していった。迷いながらも一歩ずつ前進し始めたその日から、彼女はもう無駄な時間を過ごすことはなかった。自分のペースで、心の声を大切にしながら生きること。それこそが、彼女にとって最も価値のある時間だった。

「今、私は自分を信じて進むんだ。」結衣は心の中で決意を固め、静かな夜に向かって歩き出した。

新年を迎えるにあたり、結衣は心を込めてこう言った。

「今年は、何かを変えるための一歩を踏み出す年にしようと思います。これまで迷い、悩んできたけれど、今は自分を信じて、心の声を大切にすることが大事だと気づきました。私が変われば、周りの人たちにも良い影響を与えることができるはず。みんなが自分らしく、幸せに生きられるように、私もその力になりたい。新しい年が、みんなにとって希望に満ちた素晴らしい一年でありますように。」

結衣は笑顔を浮かべながら、みんなに向けてその言葉を届けた。希望と勇気が溢れる新たなスタートを切るために、彼女は前を向いて歩き始めた。

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