無から有を生む力
小さな村に住む少年がいました。彼の家はとても貧しく、6色の絵の具しか持っていませんでした。けれども、その限られた色を混ぜ合わせ、工夫することで無限の色を作り出しました。その色で描かれる彼の絵は、やがて多くの人々の心をつかみ、少年を世界的な画家へと導いていったのです。
この話を聞くと、私の若い頃を思い出します。私もあまり恵まれた環境ではありませんでした。父親が3度も変わり、家業は倒産。高校や大学時代もアルバイトばかりで、「青春の思い出」なんて何ひとつ思い浮かびません。それでも、アルバイト先で誰かが50円のコーヒーをおごってくれると、本当に心が温かくなったものです。
正直に言えば、親に支えられて楽しく過ごしている人たちがうらやましいと感じたこともありました。でも、そんな思いを抱えながらも、私はその時の状況を受け入れ、自分なりに楽しみや喜びを見つける術を覚えていきました。絵の具の数は少なくても、その中で工夫し、新しい色を生み出すような感覚です。
限られた条件の中で、自分だけの方法を見つけること。その積み重ねが、今の私を形作っています。もしあの頃、すべてが思い通りの環境だったら、きっとこの感覚は身につかなかったでしょう。
少年が6色の絵の具を工夫して無限の色を生み出したように、私たちもまた、自分の持っているものでどれだけ素敵な未来を描けるか。それを試すチャンスが、いつだってあるのだと思います。
「若い頃はよかった」なんて思えなくても大丈夫です。今ここから、自分自身がそれぞれの人生というキャンバスに、どんな絵を描いてもいいんだと思います。夢を描く力は、どんな状況からでも生まれます。限られた絵の具で描いた絵だからこそ、きっと見る人の心を動かすものになるはずです。
かつて「うだつの上がらないダメサラリーマン」と言われた一人の男、小林一三さんの物語とも重なります。彼は38歳でビジネスの世界に飛び込み、「お金がないから何もできない」とは考えず、工夫と情熱で阪急・東宝グループや宝塚(阪急阪神ホールディングス)を創り上げました。小林さんの言葉には力があります。
「金がないからビジネスができないというやつは、金があっても成功できない。」
この言葉は、どんな困難な状況でも、自らの知恵と行動で新しい未来を切り開く力を持てるというメッセージだと思います。
この少年や小林一三さんのように、私たちも持っているもので工夫をし、夢を叶える力を秘めています。大切なのは、 「今の条件を嘆くのではなく、そこからどう創り出すか」 です。年齢や状況は関係ありません。夢を持つのに、そして行動するのに遅すぎることはないと思います。
それぞれの人が今持っている6色の絵の具を使い、自分だけの色彩で人生というキャンバスを描いていけば、きっと何かを生み出せると思います。