ひらかたハートの宝探し:動物たちが教えてくれる大切なもの⑨『ひらかたの動物たちとクリスマスの奇跡』
ひらかたハートの宝探し:動物たちが教えてくれる大切なもの⑨『ひらかたの動物たちとクリスマスの奇跡』
舞台は大阪府枚方市のにぎやかな商店街。大阪府枚方市。にぎやかな商店街の中にひっそりと佇むカフェ「ひらかた庵」。ここでは、小さな冒険が巻き起こる。カフェを営む女性、山田杏奈(やまだ あんな)と、常連客である動物好きの老人、佐藤淳(さとう じゅん)。この二人が織りなすクリスマスの物語に、動物たちが加わり、枚方の街中に奇跡を起こす。
登場人物紹介
①らうちゃん: パンダの女の子。自分がアイドルだと思い込んでおり、いつも自己中心的な行動で周囲を巻き込む。
②江素男: フクロウの男性。松潤のようなカリスマを自認し、周囲の動物たちを「自分のファン」と思っている。
③パオ: ダンボのような泣き虫で、やくざ映画が大好き。落ち込んでいる時に、映画のセリフで励まされることが多い。
④アウル: 江素男の息子で、父親を尊敬し、パオと仲良し。
⑤キー太: 阪神タイガースのキャラクターのようなトラ。自信家で、何事も「勝つ」ことを信じている。
⑥シンバ: ライオン。百獣の王だと思っており、常に威厳を持って行動する。
⑦もんちゃん: サル。捨てられていたが、江素男に拾われ、家族として迎え入れられる。
⑧永明: らうちゃんの夫で、もう一匹のパンダ。冷静で優しい性格。
⑨江寿子: みんなのおかあさん。温かい心でみんなを見守っている。
⑩梨男: みんなのお父さん。物静かで、家族を支える頼りがいのある存在。
⑪いちご: 梨男家に飼われているうさぎの女の子。肉食系で、少しツンデレ。
⑫檸檬: 梨男家に飼われているうさぎの男の子。草食系で、おっとりとした性格。
クリスマスイブ。枚方の商店街は華やかなイルミネーションと音楽で溢れかえり、通りには買い物客や子どもたちが楽しそうに行き交っていました。
カフェ「ひらかた庵」も、窓際には赤いリボンで飾られたリースがかかり、店内はほんのり甘いココアの香りに包まれていました。しかし、店内は少し静か。常連客の佐藤淳が一人でコーヒーを飲みながら、雪が降る外をぼんやり眺めていました。
「今年も一人か…」
カップを置き、ため息をつく淳を、店主の杏奈はカウンター越しにそっと見つめていました。
その時、店のドアが勢いよく開きました。入ってきたのは、派手な赤いリボンとキラキラのスカートを身に着けたパンダのらうちゃんです。
「どーん! 今日は私のステージやで! みんな準備できてる?」
杏奈は思わず苦笑しました。らうちゃんはこの商店街で勝手にアイドル気取りをしていて、クリスマスイブの商店街でパフォーマンスをするつもりだったのです。後ろから、夫の永明が控えめに店に入り、深々と頭を下げました。
「すみません、妻が…」
それから、次々と動物たちが店に入ってきます。
江素男は得意げにウィンクしながら、「俺のファンはここに集まってるんやろ?」とカウンターに座り、息子のアウルは「お父さん、クリスマスにはもっと謙虚に…」とたしなめます。
パオは大きな耳を震わせながら「泣き虫な俺でも、このカフェには来れる…」と感慨深げにコーヒーを注文。後ろから、やたら気合の入ったトラのキー太が「クリスマスも俺が主役や!」と叫び、ライオンのシンバが「百獣の王は俺や。静かにせんか」と叱りつけました。
カフェはあっという間に動物たちで賑やかになり、杏奈は忙しく動き回りながらも楽しそうでした。
そんな賑やかな雰囲気の中、佐藤淳はふと席を立ちました。彼は店の端に飾られた小さなクリスマスツリーを眺めながら、若い頃のことを思い出していました。
「若い頃、家族と過ごしたクリスマスはこんな感じだったな…」
かつて、淳には妻と二人の子どもがいました。しかし仕事に追われる日々の中で家庭を顧みることができず、今では一人暮らし。子どもたちも遠く離れ、連絡を取ることはほとんどありません。
「こんな俺が、今さらクリスマスに幸せを感じるなんて…」
杏奈はそんな淳の様子に気づき、提案しました。
「淳さん、この動物たちと一緒にクリスマスをお祝いしましょうよ。」
淳は驚きましたが、動物たちが「歌うぞー!」「私のダンスも見てな!」と盛り上がり始めると、少しずつ表情が和らいでいきました。
動物たちはそれぞれの得意技を披露し、店内は笑い声と拍手で溢れました。パオは大好きなやくざ映画のセリフで即興劇を始め、キー太とシンバが対決するコントを披露。らうちゃんはダンスを踊りながら、無理やり江素男にデュエットを迫ります。
そして、最後はみんなでクリスマスキャロルを歌うことに。杏奈がピアノを弾き始めると、動物たちが声を合わせ、淳も小さな声で歌い始めました。
「Silent night, holy night...」
外では雪がしんしんと降り続け、商店街のイルミネーションが輝きを増していきます。
歌い終わった後、淳は涙を拭いながら言いました。
「ありがとうな。こんな温かいクリスマス、何十年ぶりやろう…」
杏奈は微笑んで答えました。
「ここにいるみんなが、淳さんを待ってたんですよ。」
それから、淳は動物たちと毎日のようにカフェで顔を合わせるようになり、少しずつ商店街の人々とも交流を深めていきました。
動物たちとともに迎えたクリスマスが、彼の心に灯をともしたのです。
「また来年もここで歌おうね!」
らうちゃんの声に、動物たちも商店街の人々も一斉に「メリークリスマス!」と応えました。
カフェ「ひらかた庵」の灯りは、その夜、いつにも増して温かく輝いていました。