|随筆小説|Anche Se Sono Nato,Italiano。
ピータンは、みんなから、ピーマンに似てるから、そう呼ばれてた。チョッとしたイヤミの意味で。みんなが嫌いなピーマンなので。
ピータン「ヨッチのオウチはなんでIT、スマホアプリ開発関連のお金持ちなの?みんなおんなじじゃないと、不公平なのに………。」
クリキ「それはヨッチのオウチは正直で働きものなんじゃねぇ?」
ピータン「うちの親だって朝から晩まで一生けん命はたらいてるよ?」
ふたりは都の郊外のマンモス団地の公園の緑の林にふたりだけで秘密の密林と呼んでる奥の方に、自分たちだけのひみつ基地を作っていて、それはみんなにヒミツでナイショでした。その基地の名前は マユ と呼んでいました。
そこはかなり前から何人かで面白おかしく作ったものでしたが、一人さり二人さり、やがてピータンとクリキだけが、遊んだり、秘密のお話をする様になりました。
ふたりの家は貧しく、お小遣いはもらえないため、たまに近所の古い駄菓子屋から、店主のおばちゃんの目をぬすみ、小銭を盗んだりスーパーの店員の目をぬすんで、お菓子のたぐいを万引きしていました。
ふたりは盗んだ戦利品のお菓子を食べたり、お金を分け合ったりしながら、喜び、始終笑顔でニコニコしあいました。
ピータンとクリキだけになっても、今もまだ
たまの夕方に、ひみつ基地 マユ にふたりで夕焼け空のドラマチックさに見とれながら
、ほおを手で支えて様々なイメージを思いめぐらせていました。
ピータン「親を見てるとたまに思うけど、僕らって、なんで生まれてきたのかな?
生まれたくないってこともあるのに、なんで生まれてくるの?僕なんて、はたらいてもはたらいてもまずしい親の下で生まれても、うれしくなんてないよ………。」
クリキ「それってみんなおなじじやぁないって、不公平ってこと?」
ピータン「もし、僕らの子どもたちが、貧しかったら、その次の、そのまた次もダメな貧しいままで、ずーっと続くのかな?」
クリキ「なんで、違いが出てくるの?みんな一生けん命生きてるのにね。」
ピータン「それは生まれつきダメなひとが、ダメな生き方を変えないままずーっと行っちゃうんじゃない?」
クリキ「僕は違うと思う。悪いことする大人たちが悪いシステムみたいなもんかな、それをつくっちやうんだ。」
ピータン「そう、みんなだまされてるんだよ
。」
クリキ「そんな人たちは殺しちゃえばいいんだ。」
ピータン「そう、悪いやつ、みんな殺しちゃえばいい!」
マユ の密林の中でピータン、クリキは、地面の雑草をむしって、キレイな夕陽に向かって投げつけました。
ピータン「ヨッチのオウチはお金持ち。ほかはびんぼう。ぼくらのおうちも、じゃあぼくらは生きててもしかたないってことだよね。がんばっても、びんぼうなんだし。」
クリキ「僕たちはなんで生まれたの。くるしい世の中なんかより、子どもから赤ちゃんへ戻って生まれるまえの見たこともないところへもどって行きたいね。」
ピータン「このあいだ、うちのママが言ってた。毎日毎日いそがしくて、カオに汗かいて、はたらいてもはたらいても貧しくって仕方ないって。」
クリキ「クラスのお金持ちの、るりちゃんや、プーやんも、苦しくもない楽しいえがおで毎日がっこうに来るよね。
なんでこんな差が出てきちゃうの?」
「いやだ!いやだ!(涙)
そんなのいやだ!!(涙)
るりちゃんぷーやんは、一生、幸せのままなの!!
パパとママがダメだから僕たち何やってもダメな人間なの?」
ピータン「でも僕たちパパやママから捨てられたら、住むところなくなってさいごに死んじゃうんだよ。」
クリキ「そんなのいやだ。イヤイヤ。」
クリキは泣きじゃくりました。
その頃には夕陽は沈み、空には星が表れていく頃でした。
ふたりは マユ から、抜け出して、ほおのなみだをぬぐって、夜空の下、家族がいる、それぞれの団地のおうちに帰っていきました。
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