ネクスト・Hot ・Spring 動物達とピエロときらびやかな者達との様々なファンタジーア。
古い木を削り上げて造られた、ホコリをかぶった古臭い骨董品のピエロ人形は、ひんやりした満天の夜の星空を見上げて、こう、つぶやいた。
「いつかの……お話し……。このあいだ、何処かの偉い大統領さんがねぇ……ピストルで撃ち殺されちゃったんだよ………可愛そうだけど……でも、その人って近くの大国と戦争の引き金を引いちゃったんだよね?これから死んでいく若い兵隊さん達可愛そう。……何処かの国のコワイ大統領さんに、その……裏で、さ。脅されて…………。」
星空が見上げられる森の中の空き地で、にゃんこのスコティッシュフォールドは、夜空を見渡し
「僕たちは、ココに温泉 ♨ を掘りに来たんだよ。そんな事言うもんじゃないよ。ナーバスになるよ。大体、リラックスしに来たんだろ。ピエロさん、もっと自然のエナジーを感じようよ!」
ピエロ人形は、ホコリまみれの三角帽子をつかんで離し、いやぁ、ゴメン、ゴメンと気まずそうに、猫二匹、犬三匹と車座に座って、焚き火を囲んでいる夜の宴で、わんわん、にゃんにゃん、謝りました。
彼らの周りにはホタルが数匹飛び交い、コオロギ数匹が鳴いていました。彼らも温泉掘りの仲間だったのです。ホタル達は温泉が待ち切れなくてウキウキしながら光り夜空を幾何学的な軌道を描いて舞い、コオロギの群れは
ピアノ練習曲第3番「イーイ・ユダナ」を温泉を待ち望み、愉しくキャピ・キャピ演奏してました。
体のデカい、温和な性格のスイスの災害救助犬だった誇らしげな過去を持つ、セント・バーナード犬は夜空の向こうにほっこりとした温泉に入る極楽なような自分こと、イヌ、を夢想していました。
あー、きっもちいいだろうなぁエヘ~〜。
その声を微かに聞いて、ピエロの古い人形は、ホコリまみれの古着のフロックコートを着たボロイ木の身体をきしませながら、よっこいしょ、と、身を起こしました……………。
ジャパニーズ・ボブテイルのニャンコちゃんはピエロさんに続いて、重いシャベルを肩に担いで歩き出し、他のニャンコ、ワンコ達に
「一緒に来るニャ、早く!!」
と、急かすように歩き始めました。尻尾をフリフリ振って後ろから歩み始めたニャンコやワンコ達、皆に合図を送りながら、夜の山道を行くのだった。
わんこ達はイラッときました。なんで、ニャンコごときに、我々犬が指図をされないといけないのか、と。
それでも、やっぱり、足の短いウェルシュ・コーギー犬は背中にかなり重い温泉掘削道具
を背負っていたので、歩くのが遅いのでキツかった………………
それでも、ワンコやニャンコ、ホタルやコオロギ達は温泉の少しばかりの原泉が出る、最初からの目測どうりの森の奥深くの、目的地に、何とかかんとか、ようやく辿り着くことができました。良かった、よかった!!
そこで古道具、骨董品のピエロさんは、さっそく温泉の源泉の湯量を探るため、ダウジングを始めました…………
緑柱石、エメラルドの小さな原石に細い鎖を着けたものを、地面の少し上にぶら下げて、
こう、語り始めました。
「温泉さん!温泉さん!湯量の方は………どうなんでしょうかね……………?」
そうやってピエロは、緑柱石の言葉を、じー
っと、持ち続けたのでした。緑柱石、エメラルドは真っ赤になって恥ずかしがっているようにも見えました。
すると緑柱石は、何か、変な動きをし始めて
Zだったり、Oらしき動きを魅せて、Pっぽかったり変な図形を動き、伝えようとするのです………………。
そのまわりをホタル達はお尻を光らせ、たぶん、面白半分で舞い踊りました。すると、ダウジングの緑柱石は激しく振り回りました。
ワンコやニャンコ一同、ここだよ!!と叫びました!ここに温泉が、ここを掘ろうよ!!
と……………!
コーギー犬は苦しい重労働から解放された反動からか、キャンキャン鳴き叫びながら短い足をバタつかせながら、そこら中を跳ね回りまくり歓び、歓声を上げ喜びました!バーナード犬も大きな声を上げ後ろ二本足で立ち上がり、デカい体でキャピキャピ喜びました!
ホタル達、コオロギ達が光で照らし、音を奏でながら盛り上げていく中、ワンコ達や、ニャンコ達の温泉ほり、は夜中の暗闇の中、一生懸命行われました。ただ骨董品のピエロさんは、ただ、何もなくボーッと眺めておりました……サボっていて………。全く、要領が良いというか……………。
やがて………温泉は完成しました。いの一番に
ミニチュア・ダックスフンドちゃんは、疲れから逃げ出すように、その短すぎる足をバタつかせながら、素掘りのホカホカ温泉 ♨ にドボン、と飛び込みました!イヤッホー!
!!
ワンちゃんネコちゃん達は頭にタオルを乗せて湯に浸かり、皆で大声で歓びの歌を大合唱しました。コオロギの演奏をバックにして……
「正直………温泉堀ってるときに、もうやだよ〜って思ってたけど……こう、ホカホカ温泉に入ってると、そういう疲れみたいなのぜーーーーーんぶ、吹っ飛んじゃうよねーーーー!!!!また、ぜひ、温泉やってみたいよねーーーー」。本来、仲の悪い犬やネコ達も、そのことを忘れて騒ぎ立てました。一同にそう合唱しました。
満天の夜空の銀河に、温泉の白い湯気がもうもうとかすみ、その中をホタル達の黄色い光が舞うさまは、体や心の中疲れが吹き飛ぶ程でした。
コオロギ合唱団も負けじと湯けむりの中、交響曲・われわれは苦労して大温泉を造ったのだ、を静かに演奏するのでした。リーン、リーンと。ニャンコ達もホッコリした満面の笑みで…………。
木偶人形のピエロさんは、木で出来ているので、湿気てフヤケてしまうので温泉には入らず、樹木の横に腰かけて、じーーーーっと、大空の夜の銀河の美しさに見とれていたままでした。心のなかで自らの、なまけ者根性を恥じながら…………。
夜空の満天の銀河は、息を呑むほどに美しかったのです。
銀河の夜空を見る湯けむりの
にゃんこ達…………。