PickUp…ことばを拾う5。
二匹の蟹の子供らが青白い水の底で話していました。
「クラムボンは、わらったよ。」
「クラムボンはかぷかぷわらったよ。」
「クラムボンは跳ねてわらったよ。」
「クラムボンはかぷかぷわらったよ。」
上の方や横の方は、青くくらく鋼のように見えます。そのなめらかな天井を、つぶつぶ暗い泡が流れていきます。
「クラムボンはわらっていたよ。」
「クラムボンはかぷかぷわらったよ。」
「それなら、なぜクラムボンはわらったの。」
「知らない。」
つぶつぶ泡が流れていきます。蟹の子供らもぽっぽっぽっとつづけて5、6粒、泡を吐きました。それは揺れながら水銀のように光って斜めに上の方へ、のぼって行きました。
つうと銀のいろの腹をひるがえして一匹の魚が頭の上を過ぎていきました。
「クラムボンは死んだよ。」
「クラムボンは殺されたよ。」
「クラムボンは死んでしまったよ………。」
「殺されたよ。」
「それならなぜ殺された。」
― 中略 ―
「わからない。」
宮沢賢治「やまなし」より。
難しい言葉で言えば、宇宙、コス
モロジーと、カニの子らの例えの
命のはかなさと残酷さが共振して
ると、思う。何か子どもの残酷さ
と、無垢さが共存してるみたいな
………………………。
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