|お伽噺小説|籠目籠目籠目・不規則的不思議推理小説。
僕たち四人は、中学校の帰りの中学生の同級生四人組で、女子二人男子二人の下校生でした。夕方にはまだ早く、夕陽も沈んでいない冬場の地方の市街地から、田畑が望める道路を通っていました。
こんなのん気な地方都市で、まさか、あんな事が起こるなんて、今思い出しても信じられない思いでいっぱいです……………………。
その時のてん末は、こうです……。
A子は、遠くを見ながら、こう言ったんです
。
「あの田んぼの向こうに、なんかさぁ黒いグニュグニュしたデッカイゼリー状みたいなもんが動いてるよーー!変なのが?」
それは僕事、C男から見ても明らかでした。黒いゼリーは、何かこう、コッチへおいで、と言ってるような身振りでした。
僕たちは、半ば怖い気持ちを抑えて、その黒いゼリー状の近くへと近づいて行きました。
すると何時の間にやら、何体ものゼリー状が
僕達を取り囲んでいたんです。黒いゼリー達は圧力をかけて来るようで、僕たちは何か、言いようもない柔らかい力で、足元にあった
藁に囲まれた小さな穴に、四人とも身体が、わらび餅の様にプニュプニュした感じになり
、ヌルッと四人ともツルツルした質感で押し込まれて行きながらも地下世界に落ちて行くのに大空の雲の上の天上界へと飛び立つような浮遊感を四人同時に感じたと思います。
気付けば、そこは妙にほの明るい巨大な穴ぐら、というより地下世界といった方がふさわしかったです。そこかしこからチュウチュウ
とネズミっぽい細やかな鳴き声が聴こえてくるのです。僕たち、A子と、B男、C男の僕、D子は地下に落とされた痛みで、しばらくは身動きがとれませんでした。
ようやく痛みがとれた頃には、等身大のネズミのような無数の生き物達に囲まれていました。ネズミ達は何故かそれぞれ動物達の仮面をかぶり大勢たむろしてワラワラと動き回っていました。その仮面は、何処かで見たような………?
そう、十二支の干支の生き物の顔でした。子
を筆頭に、寅、午、酉……………………のお面を被って何か言いたげでした。
僕たちは、あたりを見回して驚いた!!
当たりには石うすが数え切れないくらいあり
、それは常にネズミ達に動かされ続け、黄金の大粒、小粒、黄金のかけらをザクザクと当たりに大量に量産していたからです。
子のお面を被ったデカいネズミは、こう言いました。お前達はココに来るべくして来たのだ。これからお前ら人間のガキにやらせねばならぬ事がある。
子のネズミはアゴをくいと合図し、申のお面のネズミにいくつかの干支の面を持ってこさせました。それは何故か丑、辰、未、戌、の
四つだけの面でした。
お前ら人間は、少し勘違いしているようだな
?自分達が選ばれた民のように振る舞っとる
。勘違いも甚だしい!!
前説は省くが、これからお前達に死ぬかも知れないキツすぎるデス・ゲームをやってもらおう…………………………
命名するとだな、デス・ダンス・ゴール、死の舞いだ!!
我々、地下のネズミはお前達人間に力を与え続けてきた。だから、今度はお前らの命をささげて、我々の代わりをしてもらわねばならん。
子の面のネズミは冷淡に言い放った。面をかぶれ、どれでもいい。
そして我々のネズミ達による地下帝国のゲームに尽力してもらわねば………。
この巨大な石うすを我々八匹の鼠と一緒に推して、回してそれぞれの心の中の一番見たくない自分の本当の正体を見せつけられ、我々
ネズミ達の拷問と難題に勝てたらゲーム・オーバー、解放されるか殺されるか?と言うわけだ、イッヒッヒッヒ、…………キキキキキキ
……………………?!
僕たちは、互いに顔を見合わせて、これからどうなるんだろう、と恐ろしさと恐怖で、震えながら、ここは鼠の穴ぐら、ネズミ達の地下帝国なのだと話し合いました。まるで|民話|おむすびコロリン、みたいだな、と。
僕たちは一人ひとり足を掴まれてネズミ達に引きずられて、ひとり、またひとりと、それぞれ干支のお面を被せられました。A子とD子は、それぞれ丑と未のお面を、B男とC男の僕は辰と戌のお面を、それぞれ強制的に、なかば強引に着けられかなり痛かったです。
それからネズミ達は僕らと一緒に、その巨大な巨石の大石臼を、十二本の飛び出た石棒を
持ち、正確には八匹のお面をカブったネズミの化け物と同じくお面を被った四人の僕らで
汗ダクになりながら、何十年と感じられた時間を、延々と果てし無き時間のあいだ、石臼を引き続けていきました。そのせいもあって黄金の大判、小判、おびただしい黄金の砂金がザクザクと石臼から吹き出ていったのです。
その時でした、A子はヒステリー状態になり
、いきなり叫び声を上げて絶叫しました。汗まみれになり崩れ落ちたのです。丑の仮面のままA子は子供の頃に受けた母子家庭ならではの生活苦からの、母親からの児童虐待を受けてきた、その封印してきた記憶が、頭の中から水のように溢れてきたのです。膝蹴りを喰らい胸ぐらをつかまれて壁に叩きつけられて、罵詈雑言を叩きつけられた忘れ去りたい記憶…………………それが………………………………………
……………………、、、、、、、、、、、押し入れの暗がりに
押し込まれ、閉じ込められて、自分自身の心
の中の暗がりに、…………逃げて、逃げて、……
あたし……あたし………もう、逃げられないよぉ
…………………………………………限界……………………………
……………………うううっ…………う、、、、、、、、、、、、、
、、、、、、、、ウッ……ウッ……………………
未の仮面のD子はたまらず押していた石棒を手放し、泣きながらA子の近くに走って行きました。
なぜならD子はA子の幼馴染であり、虐待を見続けていた嫌な記憶が子供の頃にあり、それを見て見ぬ振りをしてきた自虐的な懺悔の後悔の念があり、自分を責める気持ちが急にココロの奥底から、自らの醜い顔を大鏡で直視するような、そんなネガティブなイメージが急に湧いて出たからなのでした。
D子はA子に何か小声で慰め合うような言葉で
、囁きかけながらクタクタになりながらもとの石棒に戻り、それを僕達、辰のB男と戌のC
男の僕らは見続けて、今度は僕らの心のなか
が何かこう、恐ろしくなってきたのでした。
次は自分が鏡で本心を見せ付けられるかも……と、そんな恐ろしさが背筋をゾッと這い上がって行きました。
それからでした。石臼を切りのないくらい押し続けさせられる重労働で汗だくになり逃げ出したくなる気持ちを抑えていた、僕こと戌の面を齧ったC男である自分の幼い頃の、こころの中の過去にあった、嫌な記憶から逃れたいとの恐怖感が芽生え始めたのは………………
……………………。
ネズミの面を被った、ネズミの指導者、この
ゲーム・マスターの怪物は、こう叫びました
どうだ!!自分の心の中の奥底の恐ろしい恐怖を目を塞ぐこともできない真の恐怖の味はどんな味だ!これが我々ネズミ族が地下で味わい続けた苦しみと等価の重さ、なのだ!
その時、戌の僕は小学校時代、不登校児だった頃の記憶が、バケツで頭から水を全身にかけられ、教師、クラスの全生徒から、嘲笑われていた、毎日の様にあった嫌な記憶が頭の奥底から水のように沸き起こってきました。
ヒリヒリする心の痛みのあったあの頃にはもう、戻りたくない……………………
不登校で授業が受けられずにいて、毎度、保健室で保険の先生と顔なじみの保健室登校の連続だった無様なあの頃には、………………………
……………………。
辰のB男の中にも、両親の子供の時の離婚の時の嫌な記憶が蘇って来ているようでした。あんた!お父さん、お母さん、どっちに付いてくのよ!ボーッとしてると捨て子として捨てていくよ!!あの禍々しいイヤな記憶が水鏡に写る自分の嫌な顔としてあわせ鏡に写るあの感覚が湧き上がり、自分自身から逃げられなくてしまい、崩れ落ちてしまう自分を想像しているようで、全身に汗をビッショリとかいてガタガタと震えていました。
僕たち四人は、心の中の拷問にも、石臼を引き続ける身体の拷問にも、限界に達していました。その時、ふと思い付いたのです。
十二支の十二人がなぜ石臼を、挽いているのか?
僕達だけ人間が、昔なんかで読んだ事が蘇ってきた。干支の動物達は、子は水の五行、丑は土、寅は木、………と続いて水、木、火、土、金の五行が連続して生み出していく中国の五行説どおりだという事が……………………
僕達は丑であり辰であり、未であり戌である
。全て土の五行で……じゃあ水の五行の子から
最期の五行の亥も水で、水から連続し続けだんだんと強力になっていく五行の力がヒートアップし爆発しないように土の五行がダムのように力をせき止めているのでは。じゃあダムを決壊させて大洪水を起こして全てを破壊させれば、とふと思い浮かんだ。
僕は、とっさに他の四人に目配せして、石臼から離れろ!と合図した。
そしてみな一斉に離れて、合図どうり両足で
思いっ切りの体当たり・キックを四人で石臼
に食らわしてやった!!
石臼は巨大な轟音をたててひっくり返って、
ズズズズズズーン!!!! と粉々に破壊されていった……………………。ネズミ達は恐れをなして地下帝国の闇の中を、慌てふためき四方八方へ逃げ去っていきました。その時、走り出した子の仮面のネズミは、つまずいて倒れたときに、ネズミの仮面が剥がれ落ち、一瞬
素顔が垣間見えました。たしか、3歳だった頃の子供の頃の写真に写ってた自分の顔だった、様に見えましたが、ネズミはチラリとこちらを見やって、何か言いたげでしたが、他のネズミ達と伴に逃げ出していきました。あれは、いったい何が言いたかったのだろう……
………………………………………………………………
不思議と、その後の記憶は、あの悪い夢を見てうなされている、あのままの感覚で、記憶は無くて頭がズキズキ痛んだことは確かで、
目が覚めてハッと気がつくと、前の場所とは違った場所で、寝転んでいました。刈り取られた畑で時間も、前と同じ夕方でした。
僕達四人は、互いに顔を見合わせて、そのあ
まりにも現実離れした今までのお話に馬鹿馬鹿しくなり
みな、四人とも田んぼに倒れ込みながら、お腹の中から思いっ切り大笑いしました。
そしてスッキリとしました、みな心の中の隠しておきたかった暗い記憶と向き合い、そしてそれを洗い流し、少しばかりの希望が芽生えてきたからです。
空はもう夜に近かった。大きな星がひとつ光輝いていた。