⑤/⑧『入門シュンペーター 資本主義の未来を予見した天才』

⑤/⑧中野剛志氏著『入門シュンペーター 資本主義の未来を予見した天才』読了。


著者による解説動画は以下より。



今回は難しい本でしたので、各章ごと(全8章)にまとめていきたいと思います。


各章はこのようになっています。

①どんな人がイノベーションを起こすのか

②資本主義とは何か

③なぜ日本経済は成長しなくなったのか

④創造的破壊とは何か

⑤企業の成長戦略

⑥どんな企業がイノベーションを起こすのか

⑦シュンペーター的国家

⑧資本主義は生き延びることができるのか


今回は⑤を取り上げます。


⑤企業の成長戦略

この章では、企業の成長戦略についてシュンペーターと彼の業績を引き継いだベンローズという学者の言説を紹介します。


ベンローズは企業を「一つの管理組織体であると同時に生産資源の集合体」あるいは「一つの管理枠組みのなかで組織化された資源のプール」と定義しています。ここで重要なキーワードは「資源」であり、その「資源」は「物的資源(ブランド、設備、土地、天然資源等)」と「人的資源(労働者、事務、管理、財務等)」に分けられます。ベンローズはこの中でも、経営陣という人的資源が重要であると説き、彼らがどこまで企業内の利用可能な資源を活用できるかによって企業の成長が決まると明言しています。様々な要素が絡み、企業の成長は決まるのですが、簡潔に言うと、経営陣が資源をフル活用して、組織的に計画を立て、集められるだけの情報を集めて、自信を持って決断すれば企業経営は上手く行くと書いてあります。要は、トップが優秀じゃないといけないよってことですね。

また、この章では「規模の経済性」と「成長の経済性」を取り上げています。「規模の経済性」はよく知られている通り、「大量に作れば、コストは低減できる」というものです。ということは、企業も大きくしていけばいいことになります。では、「成長の経済性」の観点で見るとどうなるのでしょうか。まず、「成長の経済性」とは「企業が、その内部にある未活用の資源を活用することで得られる経済性」のことです。要は、使い切れていない資源を使って利益を生むことですね。これは使い切ってしまえば終わりなのですが、新たな分野に進出したり、企業の人材が経験や知識を新たに獲得していけば、さらに活用できる資源が増えることになります。つまり、常にチャレンジする企業で、従業員が勉強家で知識や経験の習得に貪欲な企業は常に成長ができるということになります。ここまでは、主に大企業を前提に話をしてきましたが、中小企業の場合はどうでしょうか。中小企業は大企業よりも競争力が弱いはずなのに存在し続けています。なぜなのか。それは、経済成長のなかで、大企業が取りこぼした事業機会(間隙、カンゲキと読みます)を活用しているからだと言います。好景気の時にはこの間隙が増えるので、中小企業も成長していきます。反対に不況の時には、資金繰りが難しく、競争力のない中小零細企業はバタバタと倒産していきます。よく、「日本にはスタートアップ企業がないから、イノベーションが起きない。だから、景気がよくならない。」という言説を見かけますが、因果は逆です。不況だからスタートアップ企業などの中小零細企業が育たないのであって、スタートアップ企業を支援すれば好景気になることはありません。ここから導き出される最良のスタートアップ企業育成、中小零細企業育成は、政府が財政出動をすることによって需要を生み出し、景気を回復させるということになります。次回はどんな企業がイノベーションを起こすかについて書きます。


今日はここまで。


以上

いいなと思ったら応援しよう!