③/⑧『入門シュンペーター 資本主義の未来を予見した天才』
③/⑧中野剛志氏著『入門シュンペーター 資本主義の未来を予見した天才』読了。
著者による解説動画は以下より。
今回は難しい本でしたので、各章ごと(全8章)にまとめていきたいと思います。
各章はこのようになっています。
①どんな人がイノベーションを起こすのか
②資本主義とは何か
③なぜ日本経済は成長しなくなったのか
④創造的破壊とは何か
⑤企業の成長戦略
⑥どんな企業がイノベーションを起こすのか
⑦シュンペーター的国家
⑧資本主義は生き延びることができるのか
今回は③を取り上げます。
③なぜ日本経済は成長しなくなったのか
このテーマは皆さんが気になるところだと思います。結論を言うと、日本経済が成長しない理由は政府の支出が少ないからです。(もちろん、税制の歪みや株主資本主義も理由の一つとして考えられます。)
日本経済の分析の前に、「資金循環理論」を紹介します。これは、民間部門と政府部門に分かれます。では、まず民間から。民間部門では、銀行の信用創造により、企業が資金を調達し、取引先への支払いなどを通じて貨幣が民間部門に流通していきます。そして、その企業が最終的に事業を通して収入を得て、銀行に貨幣を返済することで民間部門の貨幣は消滅します。ここで大事なのは、「資金を融資してもらった企業の支出が先で、収入は後」ということです。では、政府と中央銀行と民間ではどうなるでしょうか。まず、政府が公共投資など需要を見つけ、中央銀行から融資をしてもらいます。そこで得た貨幣で公共投資などを行い、民間に貨幣を供給します。そして、その後徴税により税収を確保し、中央銀行に負っていた債務を返済すると、民間から貨幣が消えることになります。もっとも、政府が負う債務は自国通貨建てなので返済する必要もありません。ここで大事なのは「政府支出が先、税収が後」という点です。そうなると、よく話題出される「財源問題はどうするんだ」というのは完全に貨幣観を誤っていることを露呈していることになります。ちなみに、政府が債務を負って、民間に貨幣を供給するプロセスは、この貨幣循環理論が示すものより少し複雑です。ですが、「政府の負債を増やすと、民間への貨幣供給量が増える」という結論は変わらないので、初学者は貨幣循環理論の理解で十分だと思います。もし、実際の政府による国債発行のプロセスを知りたい方は以下の動画、書籍より。
「日本の未来を考える勉強会」ーMMTポリティクス〜現代貨幣理論と日本経済〜
中野剛志氏著『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』
ここまで、資金循環理論を見てきて分かる通り、民間における貨幣の源泉は個人や企業の「資金需要」です。しかし、デフレになると資金需要がなくなってしまうため、銀行の信用創造の量は減ってしまいます。ということは、デフレというのはシュンペーターの言うところの資本主義を機能不全に陥らせるものとなります。
では、日本では何が起こったのか。まず、バブルが崩壊します。儲かるはずだった人が儲からなくなります。さらに、債務の返済に負われるわけですから、当然デフレ圧力がかかります。ここで、政府が大胆な減税政策や公共投資の拡大をしていれば問題なかったのですが、ここ三十年で日本政府が行ったことは公共投資をはじめとする予算の削減と消費税に代表される増税でした。つまり、自らデフレ社会にデフレ圧力をかけたのです。日本はバラマキをしてたという言説を聞いたことのある人はぜひ、添付の写真をご覧ください。データが示すように日本はバラマキをしていません。ちなみに、シュンペーターはデフレ期の政府支出拡大には肯定的でした。
今回はシュンペーターの話は少なかったですが、政府が債務を増やさないと民間の貨幣量が減ってしまうということをぜひ御理解していただきたいです。
今日はここまで。
以上