おまけ 『入門シュンペーター 資本主義の未来を予見した天才』
おまけ 中野剛志氏著『入門シュンペーター 資本主義の未来を予見した天才』読了。
著者による解説動画は以下より。
おまけ(シュンペーターの思想)
今回はシュンペーターの思想の紹介です。シュンペーターは、保守主義を自認していました。彼の言う保守主義は簡単に言うと「人間の価値を守ること」です。彼は経済が動態的である以上、社会構造の変化は不可避なものだと考えていました。しかし、その中で失業、家族や地域社会の破壊、モラルの低下、環境破壊などはできるだけ最小限にとどめるべく奮闘努力するべきだと考えていました。なんだか、今の保守を名乗る政治家は「自己責任」とだけ言ってて、何も「保っていない」し、「守ってもいない」(強いて言えば自分の収入と名誉と地位を保守している)のを見るとシュンペーターの考える保守主義のほうが魅力的ですし、人間に対するの愛を感じます。
巻末では、シュンペーターの敗北主義への批判に対する反論が書いてあります。以下引用します。
敗北主義とは、行動との関連性においてのみ意味をもつ一定の精神状態を言う。事実そのものやそれから導き出される結論は、たとえそれがいかなるものであろうとも、決して敗北主義的でもその反対でもありえない。ある船が沈みつつあるとの報告は、けっして敗北主義的ではない。ただこの報告を受け取る人の精神のみが敗北主義的たりうるにすぎない。たとえば、船員はこの場合に座して酒を飲むこともできる。また船を救うべくポンプに突進することもできるのである。その報告が丹念に実証されているにもかかわらず、ただ単にそれを否定するような人があれば、そのような人は逃避主義者である。
状況が絶望的でも、最後までやるべきことをやる。これは、シュペングラーの「絶望への道を勇敢に歩く」という格言に通ずるものを感じました。今回は主にシュンペーターやシュンペーター派の学者のイノベーション論と、資本主義から社会主義への変化の過程を学びました。世間では「創造的破壊」「イノベーション」が誤って使われているのだと知ることができました。誤った貨幣観ならぬ、誤ったシュンペーター観があることを認識し、正しいシュンペーター観を広めないといけませんね。
シュンペーターの思想や哲学も知れて、しかも彼の考える保守主義からは人間に対する愛を感じられて、とても尊敬の念を抱くようになりました。今月末には中野剛志氏の『政策の哲学』も出るので、出版され次第読みたいと思います。
今日はここまで。
以上