①/⑧『入門シュンペーター 資本主義の未来を予見した天才』

①/⑧中野剛志氏著『入門シュンペーター 資本主義の未来を予見した天才』読了。



全体として難しい本でした。中野剛志氏本人が言っていますが、シュンペーターの本は難しく、本著で引用されている部分も中野剛志氏の解説なしじゃ何言ってるかわからないものでした。


先に著者の解説を動画で見たい方は以下より。中野氏の説明も明晰ですし、インタヴュアーの方の質問も良い質問となっています。


今回は難しい本でしたので、各章ごと(全8章)にまとめていきたいと思います。


各章はこのようになっています。

①どんな人がイノベーションを起こすのか

②資本主義とは何か

③なぜ日本経済は成長しなくなったのか

④創造的破壊とは何か

⑤企業の成長戦略

⑥どんな企業がイノベーションを起こすのか

⑦シュンペーター的国家

⑧資本主義は生き延びることができるのか


今回は①を取り上げます。


①どんな人がイノベーションを起こすのか

結論から言うと、経済分野において、社会的な同調圧力や習慣の束縛など意に介さず、経済的な欲求の充足に満足せず、「創造的活動の喜び」と「社会的な権力的地位につく喜び」とに駆り立てられて精力的に活動する「行動の人」(企業者)が、イノベーションを起こす人とシュンペーターは言っています。もっと平たく言うと、「空気なんか読まずに、何かを生み出すことが好きで、権力欲もある人」となりますね。アメリカだとスティーブ・ジョブズ、イーロン・マスク、日本だと西野亮廣、ホリエモンあたりになるでしょうか。


また、イノベーションには「新結合」も不可欠で、それは新製品、生産プロセスの革新、新市場の開拓、原材料の新しい供給源の開拓、組織の革新を含んでいます。


なぜ、シュンペーターは、このような概念を作ったか。それは、既存の経済学ではイノベーションや経済成長を理解できないからです。彼は既存の経済学(新古典派経済学)を「静態的な経済」とし、ここでは「自分の効用を最大化するために合理的に行動する個人」が前提になり、需要と供給が必ず一致する「一般均衡理論」を土台とするものとしています。需要と供給が常に一致するので、モノの過不足も、カネの過不足もない、言ってみればファンタジーの世界です。一方、シュンペーターはそれに代わる「動態的な経済」という概念を持ち出し、そこでは先ほど書いた「行動の人」(企業人)が存在する世界を提示しました。ここで、彼が強調したいのは、「動態的な経済」というのは「行動の人」(企業人)が起こすイノベーションによって、経済成長すること、つまり、経済システムの「内部」に経済を成長させるメカニズムがあるということでした。


ここで言われているイノベーションだとか、企業人だとかがよく切り取られますが、全体の文脈でこれらを捉える必要があります。回を追うごとにその全体の文脈がわかってきます。


今日はここまで。


以上

いいなと思ったら応援しよう!