落とし物
雪原に真っ赤っかに熟れた一個のりんごがポツリ。真白い雪の中だと真っ赤っかなりんごがよく映える。「何故ここにりんごがある?」「若しかしたら魔女が毒林檎を落としたかも」同行した友人が大真面目に応える。「そんなまさか」真面目に捉えない私。りんごを捥いで食べようとした動物ならあり得る。が、童話の可愛い姫君を眠らせようと画策する魔女が毒林檎を落とした?考える程に子どもっぽい。子どもっぽいと考えてしまうようになったのはいつ頃だったのか。大人色に染まる私。子ども色のままの友人。「いつまでも変わらないで」卒業式にお互いの手を取り合い願った言葉。今はもうない。
りんごの行方を友人と見守ると可愛い姫君が魔女顔負けの黒い狂った笑顔で「あった。この毒林檎で憎きあいつを倒せる」あどけない表情で去った。私は呆気に取られた表情で友人を見た。友人は真面目くさった表情で「ねえ、落とし物だったでしょう」
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