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雨をちょっと好きになれた話

朝、起きると雨。こんな日に最初に思うのは外に出る時の憂鬱さ。靴は防水のにしなきゃいけないし濡れた時のためにタオルや予備の靴下用意しないとだし丈の長いスカートやズボンはなるべく履きたくない。でもその次に必ず浮かんでくるのがあの子が言ったひとこと。「雨の日も悪くないよ。」

高校生の時、学校が駅から徒歩25分のところで自転車必須だったから自転車用のポンチョを羽織って頑張って自転車を漕いでいた。自転車漕げないくらい土砂降りの時は靴下びしょびしょにしながら登校してた。そんな生活だったから当時は本当に雨が大嫌いだった。
そんな高校生時代、雨を好きになれるひとことをくれた子に出会ったのは語学学習者同士が繋がれるチャットアプリ。語学学習者同士、と言っても遊びや出会い目的のメッセージが多い中、まともな会話をできていた数少ない英語圏→日本語学習者の子。お互い母国の言葉を教え合うために日本語と英語を混ぜたチャットが結構続いていて毎日の些細な出来事を共有する仲だった。その日もいつも通りチャットをしていて「雨の日は学校まで行くのにびしょ濡れになるから雨が大嫌いなんだよね〜」と送った。それに対してその子は「雨の日も悪くないよ。傘に水滴が当たる音はとても素敵だもの。」と言った。

本当に些細なひとことではあったけど、なぜか妙に心に残った。現にあれから6年以上経っているけれど忘れることなくこうして文章にしている。自分が嫌いだと決めつけたものを全く思いもしなかった角度から見ていて、むしろ好きだと言える感性と心の余裕が心底羨ましかった。その日から雨に対する嫌悪感が明らかに薄まった。結局その子とのやりとりはアプリを使わなくなって自然消滅してしまったけれど、今でも傘を開くたび雨の音に耳を傾けるようになった。

考えてみれば世の中には雨をテーマにしたラブソングや映画がたくさんあって、雨モチーフの食べ物やグッズも、素敵なものがたくさんある。(ASKAの『始まりはいつも雨』とか新海誠監督の『言の葉の庭』とか旅する喫茶のクリームソーダとかガラスペンとか)
そして傘を差して歩けば素敵なリズムが聞こえてくる。ちょっと憂鬱だなと思うことの中にもきっと素敵なことがある。そういうのを見つけられる、心に余裕のある人間になりたいものだ。

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