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豆花という食べ物

 ー「きんとんを三百匁、一人で食べてもいい」と言われたりしたら、どんなに嬉しいだろう、と本気で私は思っている。ー (きんとん/阿部艶子)
 
この文章を見つけた時、それほど好きな食べ物があるのはなんだか羨ましくなった。だって三百匁って1.125g、1kgもある。「一番幸せな時はどんな時ですか?」って聞かれたら迷わず「美味しいものを食べている時です。」って答える私だけど、1kg食べても飽きないもの、特に甘いものはなかなか思い当たらない。コストコのティラミス?あれに憧れて3分の1サイズのを自分で作ってみたけどそれすら半分で飽きた。珈琲香坊のずっしり濃厚なチーズケーキ?これは一切れでやめておくからこそ感じられる幸福があるので違う。それじゃあそれを食べたくて呉に何回も行くほど大好きなエーデルワイスのクリームパイは?この間念願のホールケーキをいただいたけどこれもやっぱりクリームが重いからちょっと大きめの一切れで十分だったな。中学か高校の頃、よく友達に「クリームいっぱいのケーキに埋もれて死にたい」なんて言っていたけど覚えてる人いるかしら。でもこれは甘くてふわふわでいい匂いのものに埋もれたかっただけで別にお腹いっぱい食べたいわけではないんだよな。
そんなことを考えながら夜ご飯の鍋を食べていたら、鍋の中に豆腐を見つけてハッとした。そうだ、豆花だ。豆花なら本当に1kg食べれるかもしれない。
 
みなさんご存知かもしれないが豆花(中国語でドウファ)は台湾の名物スイーツで、豆乳で出来たプリンのようなものに小豆や緑豆を甘く煮たものや小さいタピオカのようなモチモチしたもの、優しい甘さの蜜がかかったものだ。日本でいうぜんざいの白玉が豆乳プリンになった感じかな。まぁちゃんとした定義は知らないけれど。存在自体は数年前に知っていた。タピオカのブームに一足遅れて日本に入ってきたから。でも天邪鬼で流行に乗りたくない私は美味しそうだなと思いつつなんとなく避けていた。(タピオカは普通に飲んでいたくせに)
けれどもさすがに台湾に行くとなったら避けるわけにはいかないし友達からも台南におすすめの店があるよなんて言われたら行くしかない。おやつどきに着いたお店は綺麗な感じで若者が多くて店員さんも多分自分より年下だった。メニューを見てみると何種類かベーシックがあって、そこに追加トッピングを何にするか選ぶスタイル。ただメニューが中国語だけでイマイチわからない。レジ前であたふたしていたら私の前にいた若いお兄さんが「どれを頼みたいの?」と英語で助けてくれるではないか。そこでお兄さんの手元にあるお皿を見る。白くてぷるぷるしたものに小さいタピオカだけがいっぱい乗ってるな…とりあえず同じものでいいか。お兄さんのお皿を指して "same one, please"とだけ言う。でもよく写真で見るやつには小豆らしきあったよなそれが食べたいなどうしよう、と考えていると店員のお兄さんが察してくれたのか小豆のタッパーを持ってこれ?と聞いてくれたなんと察しのいいことか。そうして優しいお兄さんたちのおかげで無事に注文できた念願の豆花。まずは白いぷるぷるだけ食べてみる…全然甘くないぞ?!第一印象は「なんだこれただの絹豆腐やんけ」だった。次に蜜と小豆と一緒に食べてみる。これが正解だった。びっっっっっくりするほど甘さのバランスが良くてとんでもなく美味しい。こんなにスッキリさと甘さのバランスが取れていて手が止まらなくてあっという間に食べ終わってしまうスイーツは今までに食べたことがない。正直軽く見ていた。ごめん豆花。日本ではあんなに避けていたくせにまんまと虜になってしまったのだ。
 
5日間あった初めての台湾旅行。美味しいものが数え切れないほどある台湾ではとにかく毎食違うものを食べることが目標だった。そんな中4日目に初めて食べた豆花、もっと早く食べていたら毎日食べてしまっていたかもしれない。実際、最終日にも食べなければいけないものがあったのに豆花の店を見つけるたびに気持ちが揺らいでしまった。もっと早くにこの美味しさを知りたかった気持ちと出会えたのが4日目でよかったという気持ち。

まぁこんな感じで私は豆花を三百匁食べれる!と胸を張って言えるくらい、美味しい食べ物に出会えて幸せというわけです。これからは天邪鬼になる必要はないから日本でも積極的に食べていきたいな。今後長い付き合いになりそうだねよろしくね。とりあえずこれを書く間ずっと「豆花」を「まめはな」って打たなきゃいけなかったからキーボードのユーザ辞書に登録することから始めよう。

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