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車椅子おばあちゃんのひとり旅?その12

ステージの正面、後ろの方といってもかなり近い位置に一段高くなった車いす用のステージみたいなスペースが用意されていました。
特等席です。大がかりなスロープが設置されていてスタッフが車いすを押して席まで連れて行ってくださいます。
横一列に10台くらいは並べる広さです。そして150センチくらいの高さがあるので、前の通路を人が通っても全く妨げになりません。
今まで私が知っている車いす席は、周りの方が立ち上がると、もう何にも見えなくなってしまい、なんだか取り残された気分になったりするのです。
「すごい・・・」
これが一流アーティストの心配りなんだ
私は感動していました。

前の列から順番に車いすを停めて、隣に付き添いの方が座っていましたが、続々と車椅子ユーザーが上ってきます。並びきれなくなり、付き添いの方の席は2列目に変更されました。
「すみません、付き添いの方は後ろへお願いします」スタッフの方が1人1人に声をかけ協力をお願いしていらっしゃいます。たいていの方は快く後ろへ下がってくださいましたが、中には
「先に来たんだし、チケット代だってちゃんと同じ金額支払っているのに・・・」と不満を訴えている方も居られます。
たしかに、気持ちはわからなくもないなと、聴いていました。
それにしても、お若いスタッフさんの対応が素晴らしかったです。

会場が暗くなり、静まり返っていよいよステージが始まります。
小田和正さんのお人柄が伝わってくる、素晴らしい空間でした。
コロナ以前のことですので、途中何度も客席を回られて、ファンとの直接の交流もたくさん盛り込まれていました。
とはいっても8000人以上です。とてもとても全員というわけにはいきません。
そんな中、驚いたのは、小田和正さんが車いす席に近づいて来られたことです。
そして、手の届く限り、車いす席の全員と握手をされたのです。
お隣の女性は、感激のあまり号泣されていました。
にわかファンの私も、もちろんしっかりとおててを握らせていただきました。
ファンを楽しませる数々のサプライズや、常連のファンの方にはお決まりの企画などが盛り込まれ、ステキな歌声と、音楽に包まれて夢のような時間はあっという間に過ぎていきました。
何度も何度もアンコールにこたえて、小田和正さんとそのお仲間のメンバーがステージから姿を消されました。

ざわざわと帰り始める8000人、館内には退場についての支持が何度も繰り返し放送されています。
「危険ですから、順番に退場をお願いいたします」
車いす席にもスタッフの方が集まり、安全に1人ずつ退場の案内をしてくださいました。
外は、近づいている台風の影響で荒れ模様のお天気です。
大勢の人の流れに乗って車いすを漕ぎながら、廊下続きで戻れるホテルに泊まれて本当に良かったと感謝した車椅子おばあちゃんです。
さあ、夕ご飯はどうしようかなぁ~


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