最後から2番目の「恋物語」じゃなくて「挑戦物語」です。71
「…この本を出版するための応援を、どうぞよろしくお願いいたします」
カチッ
手元のリモコンのスイッチを切り、「ふう~」とため息をつきました。
よし、とりあえずは出来た!
全国出版オーデション予選用のYouTube動画を編集していただくための自撮りです。
いや、大変でした。
まず、白髪を染めなければいけません。
行きつけのサロンでやっと予約が取れたのは2週間くらい前です。
なので、それまでは撮影は出来ません。
それなら原稿を読む練習をしておこうと何度も原稿を書き直し自分の言葉にして行きます。
録音をして、聞き直して、時間を計って、もう一度初めから読み始めて。
何度も繰り返し、なんとなくこれでいいかなと思えたので、次は自撮りのリハーサルをしてみました。
スマホスタンドを組み立てて、位置を調整します。
狭い部屋なのでカメラに映る場所だけ荷物を片付けて、なんとか体裁を整えました。
あ、車いすも乗り換えなくちゃ。
スマホをスタンドに取り付けて、ビデオにして、カメラを内側にして、スマホに写った自分に「ぎょっ」すっぴんでアップはきつい。
原稿の文字を老眼鏡をかけなくても見える程度の大きさにして印刷しなくっちゃ。
A4用紙を横にして3枚に収めて印刷、セロテープでつなげてカメラの横の壁に貼ります。
よし、とりあえず1回撮ってみよう。
カチッ
リモコンのスイッチを入れると録画が始まりました。
「皆さんこんにちは、エントリーナンバー21番・・・」
笑顔笑顔、声ははっきりと。
「今日は私の出版企画・・・」
企画書のタイトルが言えずに沈黙・・・
ダメだ、録画を止めます。
もう一回初めから。
こんなことを何回も繰り返しているうちに、
「ピンポーン」宅配が届いたり
「ルルルル」家電が鳴ったり
「ピーポーピーポー」救急車が通ったり
これはちょっとまずいです。
もう夕方、やっとどうにか最後まで出来た録画を再生してみたら、
目線はひたすら原稿を追っているし、手元はリモコンをもってずっと動いているし、全体的に薄暗いし、とても見ていられませんでした。
で、リハーサルは終了。
サロンで白髪染めをした日に帰ってきてから、ぶっつけ本番です。
髪はきれいにセットしていただいたし、とりあえずメイクもしています。
いろいろ考えた末に衣装は白いブラウスに着替え、お出かけ用の電動車いすに乗り換えました。
お部屋の電気を全部つけて、懐中電灯で照明替わり。
よし、いざ録画スターティン!
「皆さんこんにちは、エントリーナンバー・・・」
そして、「…この本を出版するための応援を、どうぞよろしくお願いいたします」カチッ。
一気に最後まで撮影しました。
やりきった~自画自賛の車椅子おばあちゃんです。
さあ、今度はこの動画を編集してくださる方に”ギガファイル便”とやらで
送らなければいけません。なにそれ?前途多難です。
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