モブ#2 ☆113
前の記事は『モブサイコ100』について語ったが、
最初は彼の言動が、いやにへり下って、自信がなく、事実ヘマばかりしているので、新米記者の頃のクラーク・ケントに似ているなと思った。
そう、スーパーマンのクラーク・ケントは元祖超能力者というかクリプトン星人で、
慎重に行動しないと周囲を傷つけるからと地球人の養父からもその力を隠せと言われ、
なので高校時代は本当の力を出せないからモヤモヤして友達も出来ないのである。エネルギーを発散出来ないのは辛いのだ。
しかし、その養父は急死し、絶望するクラークは納屋で宇宙船の残骸と緑色に輝くクリスタルを発見する。そしてそのクリスタルに導かれて北極へ行き、本当の父親ジョー・エルのホログラムを見て、自分が何者であるのかを知るのである。
つまり、これでやっとクラークのアイデンティティが確立出来たのである。
それと比較すると、一方のモブは自分が「何者」なのか全く分かっていないのである、霊幻新隆という師匠がモブにとって如何に貴重な存在であったか分かるのである。
家族は優しく接してくれるが、なんだか浮いている。弟の律(りつ)は特に優しかったが、意識下で怖がっていたと後に判明する。
ミルトン・エリクソンの発達理論によれば、アイデンティティが確立するのは13歳から22歳となっているが、モブが何者なのかは誰にも分かっていないのである。
実は、アニメ版ではプロローグで、宇宙の果てとも異次元世界とも知れない謎の空間で、1人の超人が沢山の巨大な怪獣とも妖怪とも悪魔とも知れない敵を殺戮しまくる幻想的なシーンがあり、
その後に本編が始まるのだ。つまりモブは前世でウルトラマン的な超人だったという設定を見せているのだろうか?
とにかく、そのシーンはその後シリーズでは1回も再び描かれていない。不思議な世界だが、
なにしろ単なる超能力者としては、モブの力はあまりにも絶大過ぎるので、このような前世を見せないと視聴者はその力に納得出来ないのかも知れない。
MAXのモブは、例えばバビル二世の比ではない、いや、そのバビル二世もコンピューターが彼やバビル一世の来歴をちゃんと説明してくれているのだ、
ただの中学生に、そんな訳の分からない恐ろしい力が備わっていたら、クラークのように思い悩んで友達も出来ないし、恋人も出来ないかも知れない。
そう、モブのたった1つの目標は、「女の子にモテたい」だった。
特に、幼なじみで、学校中のマドンナ高峯ツボミに愛の告白をしたい!!(月並みな中学生の発想だが、クリリンが武天老師に弟子入りした動機と同じである)
その為には、超能力ではなく(高峯ツボミはモブの力を知っている、幼なじみだから)、身体を鍛えようと考えて、
マッチョマンばかりのサークル肉体改造部に入部するのである。しかし、彼らがなかなか良い奴らで、運動音痴のモブを厳しくも暖かく見守り、
全校生徒マラソンで、ワースト10くらいだったモブが、1年で平均値くらいの順位で走れるようになるのである。
サークル内では最下位のモブだが、彼の地道な努力を肉体改造部の全員がリスペクトしており、
そのような人間関係によって、モブは肉体だけでなくアイデンティティも形成して行くのである。
精神は肉体よりも上位に思ってしまう事もあるが、肉体を鍛えたり、運動することによって精神疾患が治癒する事もあるのである。
クラークは鍛える必要が全くなかったけれど、それはむしろ弱点だったのかも知れない。溌剌と、サークルの仲間たちと走れるモブは幸せそうに見える。