耳を澄まして ☆69
ラジオが好きだ。
子供の頃は、テレビっ子で、朝から晩まであらゆる番組を見続けていたくらいだが、
何となく詰まらなく思えて来て、
昭和天皇が崩御された年、たまたま我家のテレビに寿命が来て壊れたが、
同年、手塚治虫も美空ひばりも松田優作も亡くなり、トドメをさされた。完全に心が挫けて新しいテレビを買うのをやめてしまった。
実際、この頃のラジオは面白かった。(もちろん今も面白いが)文化放送の「吉田照美のやる気MANMAN!」もこの頃だし、「大沢悠里のゆうゆうワイド」では永六輔も毒蝮三太夫も内海桂子も大活躍していた。
土曜日は伊東四朗の「あっぱれ土曜ワイド」が放送されて大好きだったが、
「土曜ワイドラジオTOKYO 永六輔その新世界」が始まってしまい、悩んだ末永六輔をとった。
土曜日、それを聴きながら東京の街を散歩したり、サイクリングしながらあちこち出掛けるのが楽しかった。
当時はメールが無くて、リスナーはせっせと葉書を書くか、直接電話していた。
今はスマホがあれば、radikoというアプリで聴けるし、メールも送れるし、ラジオ番組なのにネット配信したり色々便利になったが、
同時に世の中の規制が強くなり過ぎて、少し窮屈に感じてしまう。
テレビで受け取る情報は、右の耳から入って、左の耳から出て行くような感じがする、後に何も残らない。
ラジオだと、しっかり聞かないと訳が分からなくなるので、頭の中でイメージしなくてはならないから、似たようなニュースでも記憶に留まるような気がする。
と、言っても、
聞き慣れた人なら空気のように、水のように、ラジオの音がすっと身体に入って来て、イメージするのは簡単だ。
そういえば、文化放送では「焚き火特番」なんて企画もあったのだ。
これは、ノルウェーのテレビ局が、ただの焚き火が燃えているだけの映像を流したら、
意外に高視聴率を取ったので、それを真似して、焚き火が燃える「パチ、…パチ…」なんて地味な音だけを、(深夜帯に)90分流した。
やっぱりこれも好評だったらしい。寝ながら聴くなら安らげるかも知れない。
寄せては返す波の音なんてのも、海辺で寝転がって聞くのは、幸せな気分になれる。
私がよく行く温泉では、寝転がって背中だけ温泉に浸かれる「寝転び湯」みたいなものがあって、
そこは天井がないので、今日のように(2024/5/5)晴れた日は快適なのだが、ときどき高い空をヘリコプターが飛んでパタパタと行き過ぎる音が聞こえるのも心地よい。
かえって静けさを感じてしまう。