見出し画像

頼る ☆123

スクーリングを受けに新宿都庁の辺りを歩いていると、けっこうな数の浮浪者が目についた。

浮浪者なんだけど、彼らはある程度の私有財産を持っていて、それは路上に置かれているから薄汚れているが、きっと生活必需品なのであろう。

中にはペアの浮浪者も居たりして、仲良く朝食食べてたりして、それなりに何とか暮らしているようにも見える。

私はソーシャルワーカー目指して、目下勉強しているが、その動機となった1つは、正に自分がかつて浮浪者生活を経験して、その挙句、国に救われた実体験を持っているからなのだ。

それはまるで奇跡のような出来事だったのだが、このようになるなんて、ぜんぜん思いもよらなかった。

私は本当に何も知らなくて役所に泣き付いた。その時の私の訴えは、3000円貸して下さいという、ただそれだけだったのである。

3000円借りて、山谷辺りで日雇いの仕事にありついて、何とか凌ごうという素朴な発想だった。でも、やはりお金は借りられず、その代わり自立するための施設を紹介してもらった。

そういう施設の存在を私はぜんぜん知らなかった。世間の人の多くも多分知らない筈だ、

何故なら、私はラジオのヘビーリスナーだが、ある有名なMCが困っている人のメールを読んで、「何とかしてあげられないの、こういうの?」などと憤慨していたが、いつもならすぐに常連さん達からのアンサーが届くのに誰も何も答えられなかったからである。

一方、「蛇の道は蛇」とも言う。施設の噂はあるルートでは広まっており、どうしようもなくなった人が、ある程度の余裕を持って駆け込んで来るのである。中には「税金を絶対に払いたくない」なんて逃げてる人も居た。

そのように悪用されては施設も迷惑するので詳しく書かないが、

勉強していて感心したのは、東大の熊谷晋一郎准教授の

「自立とは依存先を増やすこと」という言葉であり、発想である。

熊谷晋一郎先生は物心ついた頃から脳性麻痺により障害を持って生活して来られた方だが、

彼には自分で出来ない事は多いけれども、依存先を増やす事によって相手の負担も分散し、負い目も分散してしまうのである。

そんなの親や、兄弟や、子供達にばかり負担かけていたら大変なのである。どんどん誰かを頼ったら良いのだ。

自立というのは、そういう事なのだ。

>15分かかって誰かに介助されて着替えさせてもらって外出出来る人は、

2時間かかって、やっと自分だけで着替えて、でもヘトヘトになって出かけられない人より自立しているのである。

シングルマザーが、朝から晩まで頑張って働いても、収入が少なくて、子供の養育費が大変で余裕がないのなら、生活保護を受けた方が良いのかも知れない。

私は施設に世話になって、そのシステムの完璧さに舌を巻いた。いや、これは私個人の感想なので、要求の高い人はぜんぜん満足しなかった可能性もあるのだが、

私が受けたのは生活保護の一歩手前の制度であるが、本当によく出来たシステムで、これを誰が考えたのかというのが当時の私の疑問であったが、

それは個人ではないのである。ソーシャルワーカーだけでもない、哲学者や政治家や、古今の、世界中のあらゆる叡智が寄ってたかって作り上げたものだったのである。

私1人では、私はたぶん社会復帰出来なかっただろうと思う。山谷で安い酒飲んでくだ巻いてるのが関の山だったかも知れない。

だから、困っている人は、どんどん人を頼ったら良いのである。役人でもソーシャルワーカーでも相談しまくったら良いと思う。

都庁近くに住んでいる、あの浮浪者の方々に、

いつか私が話しかける日は来るのだろうか。

いいなと思ったら応援しよう!