日曜日のお父さん

『装苑』読了。
本当なら最寄り書店で購入が一番なのですが、早めの予約なら一日早く届くので今回はセブンネットで発注をかけて最寄りセブンでお迎えしてまいりました。
読了後の感想は上記の通りで、内容にはネタバレを嫌がる方もおられるため控えます。
今回はこの『Echoes of Life』の衣裳にフィーチャーした特集から派生したぼんやりとした事を。
――とは言ってももしかすると過去に書いたかもしれない内容なのですが、思った事は何度でも。書いた自分が忘れてるくらいなので、読まれた方も今一度二度目を通しても…いい…か、な……💦(すみません🙏)

羽生君はどのような衣裳でも着こなします。それはハイブランドから普段の服装に至るまで。アマ時代、羽生君の私服はダサいという声がありました。私は等身大だし特にダサいと思った事は一度もなかったのです。普通にTシャツにジーンズとか、何が気に入らなかったんですかね??? 今でも謎。
それでも、羽生君にとっての“戦闘服”はスケートで着用する衣裳です。
プロになってより一層そうなっていると今回の『Echoes』では思わされました。

『装苑』の中で衣裳をデザインされた方々がどの様な衣裳でも短時間の間に自分のものとしてしまう羽生君に対して感嘆の声をあげ、惚れ込んだのは話してもいいと思うので書いちゃいますねw

プロになった羽生君はもとより、アマ時代も衣裳への拘りはどの選手よりもあった人でした。デザインは伊藤さんお一人にオファーするようになって、それ自体には特に口を挟む事をしなかったと言われていますが、それでもイメージはキチンと伝えていましたし、そのイメージを実際のデザインに起こし続けて来た伊藤さんの能力も素晴らしいですよね。だから羽生君が伊藤さんにつけた条件らしいものといえば「動きやすさ」くらい。
羽生君が衣裳同様に自らの技術に、表現に拘り高評価を(重箱の隅を意図的に汚した上で下げられていても)受けていたアマ時代。他の男子フィギュア選手はどんどん味気なくなっていきました。海外選手、アメリカ・カナダ等は特に。
そんな訳で、ソチ五輪銀メダリストのパトリック・チャンにつけられたのが通称「日曜日のお父さん」。意味はそのまま、まるで日曜日のお父さんのような衣裳という…男子フィギュアは欧米では男性らしくない、なよなよした女々しいスポーツというレッテルがあり、それを払拭する為に敢えてこのような衣裳ともいえないようなものが衣装として着用され続けています。
この数年は競技スケートを見ていないので、どうか分かりませんが、羽生君を観て育ってきた若い選手は、きらびやかな衣裳を纏って演技している事が多くなってきた気もします。

で。その日曜日のお父さんでどれだけ高尚なクラシックを滑ろうが、ロックを滑ろうが、世界観は全く見えてこないんですよね残念ながら。
Pチャン程のスケートであればそれでも見応えというものがあって、それもまた良し、と思えなくもないですが…。
誤解を恐れず言うならば、個人としての外見もパッとしない選手がユニクロめいた衣裳と微妙な技術で演技しても記憶に残らないと思うのです。
やっぱりどこかに個性がなければ。衣裳が「個性」というのもおかしいのかもしれないですが、区別はつきますよね。

例えば、羽生君が『オペラ座』を滑ろうとしたとき、偶然にも日本人選手3名が同じプロを選択しました。先輩で今もnotteなどで交流のある無良崇人さんと、一応プロフィギュアスケーターの肩書を持ちつつ芸能界でお仕事をしている村上佳菜子さん。この3名はそれぞれに工夫を凝らした衣裳でそれぞれのオペラ座を表現していました。
羽生君は初代オペラ座衣裳はお蔵入りになった代わりに、この時初めて伊藤さんにオファーして現在の衣裳が定着し、その後も継続して伊藤さんに衣裳デザインを依頼し続けた経緯があります。
(あの赤ファントムの衣裳、羽生家のタンスで眠っていたりするんでしょうか…見たい…)

で、これは国内選手だけの話ですが、世界各国の選手同士でも同じプロを選ぶことはままあります。その時、衣裳が日曜日のお父さんだらけだったりしたら…まあ見ている側では記憶に残らないでしょう。
という事で、衣裳は立派な戦闘服だ!というのが今回の結論。

…でもね。
私達の大好きな羽生君は、練習着だけでもそのプログラムの世界観を確立できちゃうんですよ(自慢)。
思い出すのは北京でのサブリンク。黒い子で演じた懐かしいプロ達のどれもこれもが、一瞬のポーズで、滑走で、それと分かる。脳内に音楽が流れる。
記憶が呼び覚まされる。

羽生結弦が「羽生結弦」たる所以。


そうそう。私初めて『装苑』を手に、中身も見たのですけど。
この雑誌楽しいですね。普段例えば美容室とかに置いてあるゴッツイ分厚くてエライペラッペラでそのくせインク(印刷)がみちみちなので矢鱈と重量があるブランドものに特化した雑誌などより余程楽しい。個性的で。
羽生君の部分しか目を通しておらず、他の頁は未だ読んではいないけれどもペラペラ捲るだけでも、その違いは判りました。
厚みがあれば良いってものではないんですよねーー。