54 白十字運動
54【白十字運動】
僕は、募金箱を持っている人間を全く信用しない。詐欺も多い。
そして、なんとなく、疑ったら心が汚いみたいな雰囲気がある。それも気に入らない。
コンビニなどに置いてある募金箱は、ある程度の信頼をして、お金を入れることがあるが、それだって、本気で信頼してるわけではない。
どこのお笑い事務所とは言わないが、震災後、芸人は募金箱を持たされロビーで呼びかけをしてズラーッと並んでいたらしい。
芸人は、事務所からやらされているから立場上は断れない。
これは、意見が分かれると思うが、僕個人は、このやり方が大嫌いである。
まず、僕はお笑い事務所なんて信用しない。てめーら、いくら抜くつもりだ?
そう思う。
芸人が募金箱を持っているから、優しいでしょ?みたいなことなのか?
なぜ事務所が事務所として募金をしないのだ。
募金箱を持っている人間は募金をしていない。
いや、してるかもしれないが、募金箱を持っているという現象単体には、そんな意味は含まれていない。
お笑いライブをやるなら、なぜ【入場料の10パーセントを募金します】などにしないのか。
そうしてくれたら、お客さんからしても、こんな時期にお笑いなんて楽しんでいいのだろうか、という気持ちも少しは緩和される。
そして、責任持って募金額を証明するような流れに、なぜなっていないのか。
疑ったら悪、みたいな風潮はなんなのか。
募金箱を持ってたら、優しいか?
優しいとは限らない。
僕は、そう思っていた。
というわけで僕は、一円もお金をごまかさないで募金を集め、赤十字に募金をしに行くという活動を始めた。
ブログで呼びかけ、お金を集めた。
その当時、常にホワイトボードを持ち歩いていた。僕はお客さんから預かった募金額をホワイトボードに書き、そのお客さんにホワイトボードの数字を見せるように手に持ってもらい、写真を撮った。
顔が出たくない人には顔は隠してブログに写真をアップしていき、募金額の合計をその都度更新していった。
この方法なら詐欺かどうかすぐに確認できる。
赤十字に持っていくのに、活動の名前は白十字運動となった。僕が考えたのではなく、活動の名前を募集したところ、白十字運動という答えがあり、それを気に入ったので採用させてもらった。
白十字運動で集めたお金と、前述したパピヨンライブの売り上げをすべて合計した金額をみんな赤十字に持っていき、赤十字のお姉さんにもホワイトボードに金額を書いたものと、僕といっしょに写真を撮ってもらった。
ちゃんと正式な募金をした証明書ももらい、持ち歩いていた。
合計は15万円にもなった。
疑いを持たれないように、パピヨンライブの会場費は、全部僕の自腹だった。手伝ってくれた後輩との打ち上げ代もすべて僕が出した。もちろん自分もお金を募金した。
打ち上げ代に関しては、僕の性格上そうだったはずだが、ひょっとしたら、後輩が「中西さん、それはいくらなんでも」となっていくらか甘えたかもしれないが。
記憶が少し曖昧ではある。
この白十字運動をしてるときに、募金箱を持っている人に募金をお願いされた。
僕は個人でこういう活動をしているので、と断った。
その募金箱を持ってる人は清々しい笑顔で「お互い頑張って募金しましょうね」と言っていた。
僕としては、お笑いなんて、なんの役にも立たないということを痛感していた時期だったので、募金するという前提がないと、単独ライブなんて、恥ずかしくて、できないと思っていたのだ。
そうなのである。
パピヨンライブというのは、僕がハクション中西として、なんの下積みもなく、いきなり行った単独ライブだったのである。