「脱サラ職人としての挑戦と、これからの道」
50歳を前にして、私はそれまで勤めていた商社を退職し職人としての道を選びました。
商社という場所での仕事は非常に多くのことを学ばせてくれたし、たくさんの貴重な経験も積むことができました。
一方で、子供の頃から大工さんを始めとして様々な職人仕事に漠然と憧れていた私は趣味として物を作ることを細々と続けていました。
そして30歳を越えた頃からうっすらと「ものづくりを生業にしたい」という気持ちが湧いてきて、それは年を追うごとに強くなっていきます。
そして最終的にはその思いが抑えられなくなり脱サラという選択にたどり着いたワケです。
起業したのはちょうど50歳のとき。
周囲には、「この歳で独立して大丈夫か?」と心配する声も少なくありませんでした。
もちろん私にも迷いはありました。
今のITの時代に職人とか、そもそも目指す方向性がズレているのでは?とかね。
現在は、ITや情報商材といった、デジタルやバーチャルの世界が多くの人にとって魅力的に映る時代です。
もちろん、そういった分野にも非常に大きな可能性がありますし、多くの成功者がいることも事実です。
しかし、私は自分の手で形を作ることにこそ価値がある、と心のどこかで感じているようですし、やはりその方向性にしか心が向かない様なのです。
いや、もちろん信念だけで飯は食えません。
それまでに趣味の世界で身につけた物づくりの実績はありましたが、最後に決断を後押ししたもののひとつが、それを商品化して販売できるはず、という自信でした。
それまで商社で身に付けたマーケティングの知識、販売や営業の戦略、と言う考え方が役に立つはず。
まぁ、全くの畑違いに見えた商社の仕事と職人仕事ですが、なんだかんだきっちりリンクしてくるから不思議です。
月並みに言えば「人生に無駄無し」って、いうことになりますかね?
とはいえ、起業の道は決して平坦でないのは当然。
当初は、仕事が少なく売り上げは微々たる物。
何度も「再就職した方が良いのでは?」とか、「すぐに収入につながる下請け仕事をとりに行こうか」とか、「なんか簡単に稼げると噂の情報商材に手を出したら良いのでは?」なんて日々心が揺れていたものです。
そこで支えになったのがお金。
とりあえず慎ましく暮らせば全くの無収入でも5年程度は死なずに済むだろう程度の貯金を作っておいたのです。
なんだかんだ現金の存在ってのは心強いものだな、としみじみ思ったものでした。
期せずして会社員時代に積み上げた知識とスキルとお金が大いに役に立ったんですね。
そんな訳で、メンタルのバランスも崩すことなくのらりくらりとこれまでやってこられた感じです。
ですから、もしこれから独立したいと思っている人がいたら私ができるアドバイスは「社員でいるうちに商売を学び、そして金を貯めろ」です。
そんなこんなで3年経った今では、ようやく収益が安定し、なんとかこの仕事で預貯金を減らさずに生活していけるようになってきました。
この経験を通して感じたことは、手に職を持つことの価値です。
最近は、起業と言えばどうしてもデジタルやオンラインビジネス、となりがちですが、手で作る仕事にも、やりようによってはしっかりと可能性が残されています。
特に価値のあるものを作りその価値をきちんとマーケットに届けることは、この先も続く本質なのでは?と感じています。
私がこうして脱サラして職人としての道を歩んでいるのも、昔ながらの物作りの価値を信じつつ、それを発信できているからです。
特に、ITやデジタルの世界が中心となっている今だからこそ、逆にアナログな手仕事の魅力が再評価される。
しかもIT技術により、今はそれらを不特定多数に簡単に発信できる。
だからこそ、これからも自分のペースで質の高いものを作り続けることが許される時代なんだろう、と思う訳です。
今この記事を読んでくださっている方の中には、独立や起業を考えている方もいらっしゃるかもしれません。
特にリアルな「物」を作り出して提供することや、物理的なサービスの展開で起業したいと考えている皆さんには、私の記事で「あぁこんな感じなら死なずにやれるんだな」と思っていただけたら嬉しい。
なんて思いつつ、挨拶に替えさせていただきます。
脱サラ職人