「オススメの棋書」概念のお話
ネットの噂、「3手詰めハンドブックがオススメ!周回するといいよ!」という話を聞いて、実践する将棋ウォーズ2級の知り合いがいた。私もそのやり方を実践してはいなかったが、悪くない方法だし、自分もいつか取り入れなければ!とは思っていた。
後日、書店で3手詰めハンドブックを買い、自分で解いて愕然とした。
「これは初心者向けじゃない!」
ハンドブックの難易度が初心者向けではなく、中くらいだとでも言えばいいのだろうか、とにかく、駒の動かし方がわかり始めた頃の初心者が解いていい書籍ではない。彼は駒の動かし方はわかるが、美濃崩しがわからないくらいのレベルだった。既にその書籍を買ってしまっているので、その事実を突きつけられずに時は過ぎ去った。今、彼はどうしているのだろうか……
僕個人としては、実践型詰将棋を解く→3手詰めハンドブックの周回作業に至るのが自然だと思う。
実戦型詰将棋は、実践に近い形での詰将棋の為、普通?の詰将棋より実践に役立つ形が多いのが特徴。
以下の文章は、Wikipediaの実践詰将棋の引用。
本題に入ろう。
オススメの棋書という概念、それはあまり信用ならないと思う。確かに、名著と呼ばれるオススメの棋書は私もオススメしたい。だが、これは外せないという棋書という概念でオススメしているわけであって、貴方の実力や使う戦法、棋風を見た上でオススメしたわけではないのだ。それを読めば強くなるのは間違いないが……読み手の段級位にあった書籍かどうか、そこが問題なのだと思う。
昔の詰将棋の棋書は〇分で〇級とか書いてあったし、浅川書房だっけかな、推奨段級位が書いてあった気がする、今の書籍はそういう文字が無い。今でこそ、そういった類の文字を入れるべきだとは思う、何故ならば将棋ウォーズというわかりやすい指標があるからだ。(まぁ、棋神で上げた有段者様がおられる現状は難しいか……)
じゃあ何を信用すればいいんだよ!と、そこのアナタ!!これから作る私の指標を見ればいいんです!!
初心者向け
定義
ここでの将棋初心者の定義として、駒の動かし方を知らない……もしくは覚えたての人とします。そして、初心者向けの項目だけは子供向けに話します。
おススメの書籍
「藤井聡太の将棋入門」や「将棋を初めてやる人の本」など、明らかな将棋初心者向けという印象の書籍なら何でも構わないと私は思っています。
どちらかと言うと、「入門」というワードや、「初心者」「初めて」などのワードが書いてある&ルールブックに近い形が良いかと思います。
それと、子供向けの書籍は大抵ルビを振っている事が多いので、子供が読めない文字は少ないと思います。(言葉の意味を聞かれる事はあるかもしれませんが……)
(書籍によってまちまちですが)初心者がルールを覚える事+低級位者のようになれるくらいまでのステップアップ本だと思って構いません。
大人の方は「大人のための一から始める将棋再入門」や「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」があります。私は買っていないので、内容はわかりませんが、おおよそ上に挙げた書籍と一緒の内容だと思います。
意外とルールを知らない
将棋の駒の動かし方を知っている初心者にいくつか質問をした事があるのですが、「二歩」というルール(禁じ手)は知っていても、「千日手」というルールは知らなかったという事がありました。そういった事があるので、駒の動かし方を知っているだけの人も買って損はないと思います。他にも細かなルールやマナー、雑学(成金は元々将棋用語)などを記している書籍もあるので、もくじを見て大雑把な内容を確認する事をお勧めします。
相手がいない
むしろ、将棋に対して一番の難敵は対局相手を探す事です。親御さんならば、子供に適度に勝たせてあげましょう。近場に将棋教室があるのならば、そこに通わせるのも一つの手でしょう。
一方、ネット将棋はおススメしません。ネットは、お互いの顔が見えないので、相手が子供だとか、初心者だとかは知った事ではありません。容赦せずにこちらを負かしてくるでしょう。
礼儀、駒の動かし方、ルールをちゃんと覚えてからネット将棋を始める事をおススメします。
飽きる
今でも私は将棋を5時間くらいやったら飽きがきます。そして、当然のように疲れます。
子供も一緒で、1時間くらい将棋をみっちり教えたら「飽きた!」と言い、疲れている事を自分自身が知らず知らずのうちに誤魔化しているケースが多々発生してます。
小学校の授業はおおよそ1時間で小休憩を挟むわけですから、当然それに合わせて休憩を取るのも自然です。飽きたら休憩させても問題ないと思います。そして、自然に休憩が飽きて将棋を指し始めたら将棋を教えている事に成功していると言っていいと思います。
符号に慣れる
そして、逆に買ってはいけない書籍があります。それは低級位者向けの書籍です。符号という物をご存じでしょうか。
級位者向けの書籍から有段者までの書籍で、この符号という存在がずーっと出てきます。将棋初心者に符号は難敵で、慣れるまでに時間がかかります(早くて1日ですが、遅くて1ヵ月、平均して1,2週間くらいです)
まずは、将棋の基本ルールを覚える+勝つ楽しさを知る。そうしてから符号に慣れてもらう!これが無理のない将棋の覚え方なのかなという気がします。
詰将棋
最後に、詰将棋についてです。
将棋というのは王様を取ったら勝ちのゲーム。王様を取るためには王手をしなければならないのですが……絶対に王様を取れる形というのが将棋界に存在します。いわゆる「詰み」と呼ばれる形。絶対に王様を取れる形に持っていったら勝てる!!これを理解してもらうのが低級位者になるための第一歩です。
詰みと呼ばれる形に持っていくにはどうしたらいいのか……その詰みの基本形を知る上で、詰将棋はおススメ。とはいえ、いきなり3手詰から入るのではなく、1手詰から入ってほしい。
ただし、注意点が2つあります。
・漢字が多く、ルビの振っていない書籍も多数ある
・〇手詰ハンドブックはやめてほしい。
まず、ルビを振っているかどうかを確認してください。詰将棋の書籍はルビを振っていない事が多々あります。
ここで説明するのもなんですが、〇手詰ハンドブックのシリーズはどちらかと言えば芸術作品寄りの書籍です。詰将棋慣れした人が読む書籍だと思っていて下さい。ここでも、初心者向けの詰将棋書籍を買うべきだと私は思っています。問題の出し方も味気ない感じで、ヒントもありません(中上級者向けの書籍という事です)
先ほど説明した符号というものは、この詰将棋にでも出てきますが、普通の将棋(本将棋)と違い、詰将棋は盤上にある駒が少ないので、符号という観点から見たらとっつきやすいです。
ただし、詰将棋本は結局は問題集、子供が嫌がる時は時間を置いたりして、挑戦する機会を待ちましょう。
ワンポイントアドバイス
さて、子供向けの解説をしましたが、最後にワンポイントアドバイス。将棋の本を買ったけど、読んでくれない……そんな悩みを解決するために、まず、自分が真剣に読んでみましょう(わざとらしくは駄目です)。真剣に物事に取り組んでいる大人に子供は興味を持ちやすいです。子供が「何しているの?」と聞かれたらこっちのものです。一緒に読むなり、子供が将棋の本を奪ってくれる事でしょう。
低級位者向け
概要
まず、3つの項目がある
・序盤
・中盤
・終盤
将棋の初めから終わりまでを分解すると、この3つに別れる。それぞれの説明をすると
序盤は定跡書と呼ばれる戦法を書き記した書籍で鍛える
中盤は次の1手と呼ばれる将棋の技を紹介した書籍で鍛える
終盤は詰将棋と呼ばれる詰み形の問題集で鍛える
よって、それぞれを鍛える事で初段前後に行きましょう!というのが目的で、それぞれの棋書を紹介していく。
序盤
序盤においては棒銀の戦法がおススメ。例を挙げるならば「なんでも棒銀」、振り飛車を指してみたい!という貴方は「なんでも中飛車」という書籍がおススメだ!古い書籍になると、「勝つ将棋 攻め方入門」などもおススメだったりする。
逆に、この書籍を読んで難しいと思ったのならば初心者向けの書籍に戻ってほしい。そこにも棒銀戦法が書いてある。
共通している事が一つだけあり、Amazonの書籍のタイトルを見てみると(将棋必勝シリーズ)と書いてある。このシリーズは私が知る限り、15年前くらいから、将棋のルールを完璧にした子供たちを符号と図面で初段近くまで導いてくれる書籍だ。さらに、この書籍は中盤に差し掛かる辺りまででなく、終盤まで書いているので、この1冊でほぼほぼ完結する。
中盤
序盤の項目を見ていただいた方々には「1冊さえあればいらないじゃん!」と思っている方々が多いと思うが、序盤から中盤にかけて、書籍の順を外れる事のなんと多い事、よって、中盤からは書籍に書いてある手順だけではなく、自力で勝負するしかない局面がおのずと訪れる。
よって、定跡書1冊だけでは事足りないのだ。定跡書の手順が舗装された道路だとしたら、実践は悪路での走行だと思ってもらって構わない。その悪路を走り抜ける技術が必要で、その基礎的な技術を補うために、次の一手問題集が是非に読んでほしい書籍。
とはいえ、書籍を紹介するとなるとかなり難しい。次の一手問題集にありがちなのが、問題の難易度がバラバラという事だ。
ここは、ルビが振ってある将棋初心者向けの次の一手の書籍を買うのが一番安泰か。「羽生善治の手筋の教科書」などがおススメ。
また、少し古い書籍になってしまうが、歩の手筋が書いてある書籍はおススメで、「ひと目の歩の手筋」などはどうだろう
終盤
将棋界の名人である藤井聡太先生。彼は子供の頃から詰将棋を物凄い数解いていた。その彼の一番の長所は読みの深さ、精度、速さの三つである。その三つを鍛えるために必要とされているのが詰将棋。そして、詰将棋を解くと、詰将棋に似通った形が終盤によく出てくるので、詰将棋を解きましょう。というのが一般的な教え。
何一つ間違ってはいない。だが、重要なポイントがある。それは「詰将棋を解く事によって終盤に似通った形が出てくる」という点だ。これについては半分正解で半分間違いだと言いたい。何故なら、(始めの方で書き記したが)実践型詰将棋と呼ばれる詰将棋が存在するからだ。
私がおススメするのは「1・3・5手実戦型詰将棋」だ。この書籍を読んで終盤の力をつけてほしい(難易度高めなので、もう少し良い書籍があるかも)
なお、必死本はおススメしない。必死をかける為に、水面下で5手7手の詰み筋を読む必要が出てくる、それが必死問題というもの。もう少し後回しでよいのかもしれない。なお、5手詰めが解けるようになっているのならば必死問題は解禁してもよいと思っている。
先ほども言ったように水面下で5手7手詰が出てくる。それが必死問題だ。詰将棋より難しいと感じる人は多数いると思う。解けなくてよい。答えを見てまずは形を覚えるくらいに思っていただきたい。
初段前後向け
概要
初段前後は最も将棋が楽しい時期で(個人差があります)巷に溢れている書籍の推奨棋力はここと初心者向けを中心に集中していると思っています。
まず、マイナビ出版の将棋書籍を買っておけば間違いありません。また、一部除く名著と呼ばれる書籍は周回して暗記するくらいには読みふける事をおススメします。
序盤
自分の好きな戦法の書籍を買えば間違いありません。マイナビ出版が色んな戦法の書籍を出しているので、そこから探してみましょう。
なお、「対抗系を避けたい(3手目▲6六歩)党」という珍しい人以外は「四間飛車の急所1」を買っておきましょう。名著であり必読書です。アマチュア間での数が多い戦法の四間飛車、その対策本として過去から未来に至るまでこの書籍を超える本はありません。
中盤
棋譜並べを初めてみる頃合いです。自分の戦法にあった棋譜を並べるもよし、「将棋世界」や「将棋年鑑」を図書館から借りて並べるもよし、定跡書の後半にある棋譜を並べるもよし。「○○名局集」という人物シリーズ、戦法シリーズの名局集もあるので、それを買って並べるのも一つの手ですね。〇〇戦記と呼ばれるシリーズ書籍もございます。
何にせよ、並べてみる。それだけです。
ただし、巷には〇〇の並べ方が正しい!という並べ方に対しての派閥があり、いまだ戦争中です。あなたがどの派閥に属するのかは自由ですが、無理のないように棋譜を並べる事が肝要だと思っております。
終盤
詰将棋本の周回をしてください。「3手詰ハンドブック」がおススメです……と言いたいのですが、私のおススメは結局、実戦型詰将棋。「3・5・7手実戦型詰将棋」が続編で、おススメです。
また、粗方の実戦型詰将棋と呼ばれる物を全て解いたと喧々囂々に言えるのならば、ハンドブックの周回に手を出すべきだと思います。
また、寄せという概念は何?詰将棋を鍛えたけど、寄せを鍛える為にはどうしたらいいのだろうか?と、思い始めた事でしょうが、それにピッタリな書籍として、「ひと目の決め手」がおススメです。
必死を勉強したい場合、1手必死の本がおススメです。必死というのは、3手5手くらいの詰将棋が解けるくらいの能力があって解ける1手必死問題というイメージが私の中にあります。
有段・高段者向け
概要
そもそもとして、私がまだ有段者の立ち位置にいるので、明確にこれをおススメします。というのはできませんが、名著と呼ばれる書籍はほぼほぼ全て読める棋力にあり、読む事を勧められてきた事が多いだろう。むしろ、この書籍は名著だったから買った方が良い!という風に勧める立場にあり、この記事に対して批判の一つや二つ、もしくは全てを批判してほしいくらいだ。
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