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蟲神器は、なぜプレイヤーを攻撃しないほうがよいのか?



◆はじめに


 蟲神器は、あまりプレイヤーを攻撃しないほうがいいといわれます。理由自体は単純でプレイヤーへダメージを与えると縄張りを引いて、手札が増えるので相手が有利になってしまうというものです。理屈で分かっても、じゃぁ具体的にいつ攻撃したらいいのか、引かせることで、どれくらい相手が有利になるのかが初心者の内はよくわかりません。僕も攻撃しないようにしたら、次のターンに攻撃回数が足りなくなってトドメがさせなくなったり、逆に余計な攻撃をして、反撃で自分がトドメを刺されたり、色々試行錯誤が続きました。しばらくして、ハンデスデッキ(相手の手札を捨てさせるデッキ)を使ってみようと思い、ハンデスで相手の手札をコントロールするようになると、相手の手札がどういうときに増えて、どういうときに減るのか、それがどう戦略に影響するのかがおぼろげながらわかり始め、なぜプレイヤーを攻撃してはいけないかが理解できました。今回書くことは、蟲神器を長くやっている上級者の方から見れば当たり前のことかもしれませんが、自分的な備忘録と、初心者の人の参考になると思い、コラムにまとめました。


◆蟲神器は先攻は3枚、後攻は4枚しかカードを使えない。


 他の方のnote(どの記事かは失念してしまいました)に、先攻は3枚、後攻は4枚しかカードを使えないと書いてあって、その時は、あまり蟲神器をやりこんでおらず、ふーんと流し読みしてしまったのですが(失礼ですいません)、ハンデスデッキを使うようになって、このことの重要さが身に染みるようになりました。

 詳しく説明すると、先攻の手札は4枚で第一ターンはドロー無しなので、エサ場にセットすると、使えるカードは残り3枚です。2ターン目に1枚ドローして4枚になりますが、エサ場にセットすると、また3枚になってしまいます。つまり、エサ場にセットしつづける限り、手札は3枚以上に増えないのです。

 そして、虫を場に出すと、手札が3枚から2枚に減ります。エサ場にセットし続ける限り、手札は2枚から増えません。もう1枚虫をだせば、場が虫2体で手札が1枚、さらにもう1枚だせば、場に虫3体で手札は0枚、エサ場をセットし続ける限り、自分の場の虫の数と自分の手札の合計枚数は必ず3枚になります。つまり、先攻は虫を3体以上展開したかったら、エサ場に手札をセットするのをやめて手札を増やさなければなりません。

 エサをセットし続ける限り、手札と場の虫の合計枚数は先攻は3枚、後攻は4枚以上に増えないということを覚えていてください。この手札と場の虫の合計の数を蟲神器特有の概念として「カードフロー」と仮に名前を付けます。

 ここからが重要なのですが、プレイヤーを虫で直接攻撃すると相手の手札が増え、相手の虫を虫で倒しても、相手の手札が増えるのですが、虫を倒す分にはこのカードフローは増えないのです。手札が2枚で、場の虫が1体いるときに、場の虫が倒されて、縄張りを引いても、手札が3枚、場の虫が0枚になり、手札と場の虫の合計枚数であるカードフローは3枚から増えません。つまり、直接攻撃をせず、反撃で相手の虫のみを攻撃した場合は、どんなに縄張りを引かせても、相手の手札と場の虫は3枚以上にはならず、相手が毎ターンエサ場をセットする限り、直接攻撃さえしなければ、先攻の相手が場に展開出来るカードは3枚以上には増えないのです。

 これは水生デッキなどを相手にしてるとよくわかります。相手の水生デッキが先攻だとして、こちらから一切直接攻撃をせず、何もしないか、反撃で虫だけ倒すだけにとどめておくと、鬼門である6ターン目に水生デッキが到達しても、手札が3枚しかないので、最大3枚しか展開することが出来ません。
 どんなに展開力のあるデッキでも直接攻撃をせずカードフローを管理されると、先攻で3枚、後攻で4枚しか手札が溜まらず、エサを置かずに溜め込まないかぎり、カードを大量展開出来ないのです。

 蟲神器で後攻有利と言われるのは手札が単純に一枚多いというだけでなく、それがカードフローとして対戦中に増減せず維持される点です。直接攻撃されないかぎり、先攻はずっと3枚しか使えず、後攻はずっと4枚使えるという差が縮まらないのです。

◆水生デッキ同士で先に仕掛けると負けるパターン

 水生デッキ同士の戦いで、お互いにパスする状況から先に3体展開して総攻撃すると、反撃をくらい、こちらも反撃したあと、さらに反撃を食らって負けるという状況が自分にはよく起こりました。書き出すと以下のような流れになります。

 先攻が手札3枚を全て展開して攻撃すると、縄張りが3枚割られ、相手の手札は4枚から7枚に増えます。相手はドローしたカードをエサ場にセットしたあと手札の7枚中の4枚展開して、先攻の虫を全滅させますが、直接攻撃はせず、縄張りを3枚引かせます。先攻はこのターンにドローしたカードを合わせても4枚しかないので相手にトドメをさせません。仕方なく4枚全て展開して相手の虫を全滅させ、相手の縄張りを0枚にします。相手の手札は6枚になります。相手はドローしたカードをエサ場にセットしたあと手札の6枚中5枚を展開して、フィニッシュします。

 今は草薙の劫火が浸透してるので、不用意に3体並べることは少なくなりましたが、それが流行る前に僕が水生デッキ同士で対戦しているとこういう展開がよく起こりました。細かい状況は毎回違うのですが、先に3体で総攻撃すると負けるということがよくあったのです(今回の例は単純化してるので厳密には再現しづらい例で、実際にはゴライアスが飛び出したり、一撃で倒せない虫が出てきたりもっと複雑)。これの状況をカードフローに注目して説明します。

 まず、この戦いでは、お互いにパスをしあったので、先攻は3枚、後攻は4枚からカードフローが増えませんでした。なので先攻は後半になっても手札を3枚しか持っておらず、総攻撃するにしても3枚までしか展開できません。一方、後攻は先攻から直接攻撃を受けたので、カードフローが4枚から7枚になり、かなり余裕のあるプレイをすることが出来ます、とりあえず後攻は相手の虫3体を全滅させると縄張りの3枚と次のドローで先攻の手札が4枚になるので、トドメをさされないように手札の7枚から、虫を4枚展開し、相手の虫を全滅させたあとは、直接攻撃で縄張りは割らず、カードフローを増やさないようにして相手のターンにします。先攻のターンになりますが、虫を倒されて縄張りを引いているのでカードフローが増えません。ターンの最初のドローを含めても4枚しかないので、相手の縄張りは3枚ですが、相手の場に虫が4体いるのでトドメがさせません。しかたがないのでエサはセットせず、手札4枚全てを展開して、再び総攻撃して、相手の虫を全滅させ、残った縄張り3枚を引かせます。後攻は虫を倒されて縄張りを引くのでカードフローが増えてない、むしろ4体目は縄張りが残ってないのでカードフローは-1になりますが、もともとカードフローが7枚あったので、-1しても6枚となり余裕です。ターンの初めに引いた1枚を加えて7枚になったあと、トドメを刺すのに必要なので1枚エサ場にセットして6枚中、5枚を展開して、相手の虫4体を倒して、残り1体で直接攻撃してフィニッシュです。

 先攻の攻撃のタイミングのまずさや、後攻の相手の手札の数を考えた虫の展開と直接攻撃をしない判断も重要なのですが、ここで一番知ってもらいたいのは、カードフロー以上の虫の展開は不可能であるため、直接攻撃を受けて手札を増やすか、エサ場にセットせずに手札を増やすかをしないかぎり大量展開が出来ずに頭数が揃えられないことに注目してください。さらに、展開したあとに、反撃を食らって虫が倒されても、追加で直接攻撃されないかぎり、カードフローは増えないので、その後もカードフロー以上は再展開出来ないという点にも注目してください。

 逆に相手のカードフローを増やしてしまうと、相手はかなり展開に余裕が出来ます。特に水生デッキのような展開力のあるデッキのカードフローを増やすと、バンバン展開されてたり、選りすぐりの手札で反撃されて返り討ちを喰らってしまうことになります。

◆ハンデスデッキが水生デッキとも戦える理由


 ハンデスデッキの使い始めの内はとにかくハンデスすることばかり考えたのですが、うまく勝てませんでした。しかし一人で何度も模擬対戦して練習しているなかで、虫を攻撃して縄張りを引かせる分には相手の手札と場のカードの合計、つまりカードフローが増えないことに気づき、無理にハンデスしなくても、攻撃しないか、相手の出した虫を反撃で倒すだけで相手の手札が十分コントール出来ることを理解してからは勝率があがりました。直接攻撃でハンデスをするのは、相手が虫を一切展開しないで様子見をしている時や、余裕があって相手の場を空に出来る時だけでよく、基本は虫を反撃して倒すだけで十分なのです。水生デッキを相手にする際も、とにかく相手のカードフローを増やさない、ハンデス以外では直接攻撃せずに、虫を反撃で倒すことを徹底していれば、エサ場に置かずに手札をためない限り、多くても3~4体しか展開出来ないので十分にさばくことが出来ます。
 もう一つハンデスデッキにとって重要なのは除去術(虫を破壊する術)が実質的にハンデスのような動きをすることです。虫を倒しても縄張りを引かせることがないので、相手のカードフローは-1となり展開出来るカードが減ります。これはアグロデッキなどには効果てきめんで、どんどん使えるカードが減っていき、相手はエサ場に置かずに無理に虫を展開することになり、場が困窮していきます。水生デッキに対してもカードフローを減らし一斉攻撃の頭数を減らす効果があります。除去術は自分のカードフローも減る諸刃の剣なのですが、ハンデスは展開力が弱いため手札が余りがちなことと、アグロのような序盤から殴るデッキはこっちのカードフローを増やしてくれるので、大したデメリットなく使用できます。除去術を優先して使うことでハンデスしなくても、相手のカードフローを2~3枚、場合によっては1~2枚までコントロールすることができます。問題としては、除去を使いすぎると、相手の縄張りが減らないので、結局、終盤戦になって直接攻撃で割るはめになり、相手のカードフローを増やして反撃を許したり、割るのが間に合わなくて判定負けになったりする点には注意です。


◆カードフローの増減する状況


 カードフローは毎ターン、エサを置く限り、先攻は3枚、後攻は4枚から変わりません。基本的には直接攻撃を受けることのみで増加します。ここでは細かくどういうときに増減するか書き出してみました。

カードフローが増える

 +1:エサ場にエサを置かない
 +1:プレイヤーが直接攻撃を受け縄張りを引く

カードフローが減る

 -1:術を使う
 -1:強化カードを使う
 -1:虫を除去される
 -1:縄張りのない状況で虫を倒される
 -1:サシハリアリやコバルトブルーに虫を倒され捨てさせられる
 -1:サタンオオカブトの効果で捨てさせられる
 -2:伏魔の蟲噛みで2体倒される
 -X:草薙の劫火で複数体倒される

カードフローがプラマイ0

 ±0:エサ場にエサを置く
 ±0:虫を場に出す
 ±0:虫を倒されて縄張りを引く
 ±0:虫を手札に戻される
 ±0:サリハリアリやコバルトブルーに直接攻撃されて捨てさせられる

 他にもあると思うのですが思いつくものを書いてみました。注目点は術や強化を使ってもカードフローが減ることです。強化カードはカードアドバンテージ(手札や場のカードの枚数の損得)を失うので専用デッキを除いてあまり使われないとよく言われるのですが、カードフローの観点からいっても、枚数が減ってしまい困窮します。実は術カードも自分のカードフローを失うため、強化術カードを使うと突破力は上がるかわりに展開力は下がります。アグロは術カードを使うことで突破力を増やし、同時に自分のカードフローを減らしてしまいますが、3コスト前後でエサを置くのをやめるため、それによって増加した手札でカードフローを補い展開力を維持します。蟲の息吹やミツツボアリなども、カードフローの観点からみると手数を減らしてしまう効果があるので、展開力を重視しするデッキには入れにくいです。ランプ(エサ場を増やして大型虫を出すデッキ)は数ではなく大きい1体を出したほうがよいと思います。

 注意点としてはカードフローの増減はなくても、テンポアドバンテージ(コストを有効に使えたかの損得)やライフアドバンテージ(蟲神器の場合は割られた縄張りの枚数の損得)の増減は発生するのでトータルでみたアドバンテージの取り捨てをすることが重要です。


◆アグロやワンショトでない限り、基本的には虫に反撃して縄張りを減らすようにし、出来るだけ直接攻撃しないようにする。


 基本的に直接攻撃をせず虫に反撃することで相手のカードフローがコントロールでき、除去を使いあったり、相手に強化の術を使わせることでさらにカードフローが減り、手札をカツカツにすることが出来ます。こうすると相手は大量展開出来なくなり、リーサル(そのターンにトドメがされる状況)が取られにくくなるので有利に立ち回ることが出来ます。問題は手札をため込むデッキの場合ですが、ワンショットなどの、エサを置かずにため込む特殊なデッキは別として、水生デッキやカウンターアグロなどでも、カードフローをコントロールすれば通常で3~4枚しかたまりません。しかし、後半になるとエサに置かないで手札をため込み始めるので、その前にちょっとずつ削りあったり、大型を出して相手に圧をかけるなどして相手に虫を出させて倒したり除去するなどのやりとりが必要です。一番重要なのは繰り返しになりますが、相手にカードを展開させる前に勝つアグロや、射程圏内まで削ろうとするワンショット以外のデッキで、直接攻撃して相手のカードフローを増やすと、相手の使えるカードが増えてしまって大量展開や術を併用した突破を許すことになり不利になります。基本は直接攻撃しないで虫に反撃することを心掛けるとよいと思います。それが出来ない場合でも大型で一体ずつ攻撃して処理の負担を増やさせ、出来るだけ急激なカードフローを増やさないようにするといいと思います。複数で一気に直接攻撃するときは、そのターンでトドメがさせるリーサル状態か、相手の反撃をいなして、こちらの第二波で確実にトドメがさせるときか、次の相手のターンで相手がこちらを倒せるため、破れかぶれで攻撃するときです。

 一応殴り返しが有効でないデッキもあって、除去コンのように序盤は除去しかせずに、終盤に大型を出してくるデッキタイプには殴り返しがしにくいです。しかし、あまり流行っておらず、速攻にシフトするか、展開力の差で押し切れば勝てるので今のところは問題にならないと思います。一応、6コス入りハンデスが、除去コン的な動きをしており、さらに直接攻撃でハンデスしてくるので、こちらは率先して虫を出して直接攻撃をするパターンにならざるをえず、殴り返しできなくもないですが戦いにくいタイプだと思います。


◆まとめ


 蟲神器がプレイヤーを直接攻撃しないほうが良いというのは、相手のカードフローを増やして手数を多くしてしまうからというのが結論です。これを防ぐのには、直接攻撃せずに、相手の出した虫を反撃して倒すとカードフローを増やさずに済むというのが基本的な解決方法になります。このカードフローの概念を理解すると、手札の増減なども理解できるようになります。僕は、自分の手札1枚なのに相手は6枚もあるのはなぜだろうと悩むことがありましたが、先攻で2体だして攻撃し、相手に縄張りを2枚引かせると、それだけで、こちらの手札は1枚で相手は6枚になります。手札では5枚の差がありますが、自分の場に虫が2体あるのでカードフローの差は3対6と実は3の差で済んでいます。それまで優勢なのに最後に一気に展開されて負けたりする場合も、水生デッキ同士の対戦の流れので例に出したように、先制攻撃で3体だして攻撃すると、こちらはカードフローが3枚なのに相手はカードフロー7枚になってしまうのでかなり不利な戦いになります。カードフローは単純な枚数差だけでなく、手札の枚数が多いので、エサ場セットの自由度があがり待ちの広さが大きくなることや、手札の多さからくる戦術の広がりなど色々な面で有利になります。特筆すべき点は他のカードゲームと違いドローソースがほぼないので、先攻と後攻の差がなかなか埋まらない点です。これが蟲神器の後攻有利説の裏付けとなっていると思います。



◆最後に


 結論をさらにまとめると、「直接攻撃をせず虫に反撃して縄張りを引かすことを徹底すると相手の手数が増えない」ということなのですが、これを頭で理解するまでに二か月くらいかかりました。多分、第一弾から始めて、ワンショットを使いこなしていた先達の蟲主さんたちは、自分と相手の手札の枚数を緻密にコントロールする過程で、カードフローの概念を体で理解し、蟲神器は攻撃しないほうが強いという理論に到達していたのだと思います。僕もハンデスデッキを使うことで理解することが出来たので、なんとか体系的にまとめてコラムに出来ないか挑戦してみました。僕は大会など出ておらず、中級者にもなれたか怪しいですが、今後の研究の糧になれば幸いです。


※追記

「強化カード」→「強化術カード」に修正 9/8

「-1:(自分の場の虫が増えない)術を使う」→「-1:術を使う」
に修正 9/8

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